目の錯覚か記憶違いを疑ってしまうお薬の雑誌広告
2011/01/31 12:00
最近は滅多に見かけなくなったが、それでも時々出版物で同じページが繰り返されたり(ミスプリント)、突然数ページが飛ばされている(落丁)ものに遭遇することがある。雑誌ならすぐに気が付くが、文庫本では違和感を覚えるものの、それになかなか気がつかない場合も少なくない。「おや? やはり変だぞ」と思い返し、自分の記憶力や判断力を疑いながらもページ数を確認し、ようやく「これはおかしい」となるわけだ。その違和感を逆手に取り、うまく利用したのが今回紹介する雑誌広告である(I Believe in Advertising)。
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↑ ごく普通の記事のように見えるが……
↑ 一枚めくるとまた同じ見開きページが。おや?
↑ さらに一枚めくるとまた同じページが……のように見えて、右下にちょっぴり新たなメッセージエリアが
これはヨーロッパ方面で使われている、特に記憶の面で頭脳を活性化させる効力があるとされる「MemoPlus」というお薬の広告。同薬品の説明によれば、服用で疲れている頭脳を活性化させて、集中力と記憶力をよみがえらせる効果があるとしている(成分的には漢方薬に近いもののようだ)。
雑誌を手にした読者はページをめくり、ごく普通の記事を目にする。そして一枚ページをめくると、また同じデザイン・イラスト・文章のページ。「記憶違い……ではないよな」「印刷ミス?」といぶかしがるも、落丁では無いのでとりあえず読み進めて、もう一枚ページをめくる。この時点で「何気なく流し読み」していた人も、つい気を向け、集中して読み進めることになる。
すると再び同じ見開きページ。「またかよ」と突っ込みを入れようとすると、右端に先ほどとは違った部分を見出すことができる。そこのエリアには「MemoPlus」の広告が掲載されている。
↑ なるほど「MemoPlus」の広告でしたか
そこで読者は、
・ほぼ同じページを3回繰り返すことで、反復して読み書きする記憶術を想像させる(薬の効用と関連性を持たせる)
・自分の記憶力のあやふやさを再認識させて、疲れた頭脳を活性化する「MemoPlus」の必要性を強烈に印象付けさせる
など、計6ページの広告の意図を理解できるわけだ。
合わせて6ページ分の広告料が必要になること(4ページでも8ページでも良いが、4ページでは効果がやや弱いし、8ページではくどいかもしれない)、流用できそうな商品やサービスを見出しにくいことから、今手法はこの「MemoPlus」限定のものともいえる。あるいは「記憶」と結びつけて、『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』をはじめとする脳トレ系のゲームなら意外にマッチする可能性はある。
いずれにせよ、普段は何気なく読み進めている雑誌において、読者の集中力を高めさせ、広告に目を向けさせるという点では、奇抜で興味深い手法といえよう。
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