【更新】「高齢者万引き数増加」の話
2011/01/28 12:00


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万引き(窃盗の一種。営業時間中の商店・小売店などにおいて、販売を目的として展示・陳列してある商品・見本および展示・陳列のための備品などを、店側の目を盗んで窃取する行為)の動向については2年前の2009年8月に、かなり詳しいデータ【万引きに関する調査研究報告書(PDF)】が警視庁から提示されている。また警察庁でも半年おきに詳細を記した「犯罪情勢」レポートが作成・公開されているが、現時点で最新のものは【平成22年上半期の犯罪情勢(PDF)】で、こちらでは2001年以降のデータが記載されている(2010年の総括版は3月頃提示されるだろう)。さらに報道の数字に間違いはないことを警察庁に確認。
ここで一つ問題が発生する。警視庁の「万引きに関する調査研究報告書」と警察庁の「犯罪情勢」において、(全国の値の部分で)高齢者(65歳以上)の検挙・補導人員数はぴったり一致するのだが、総計と未成年者(少年、20歳未満)の検挙補導人員数に違いが確認されてしまった。この点について警察庁に問い合わせたが「どちらが正しいがは何とも言えない」とのこと。恐らくは微妙な判断基準の違いによるものだと思われるが(高齢者部分は一致するので基準が同じと考えられる)、今回のグラフ生成においては2009年・2010年部分は少年の項目は空欄に留めることにした。
まずは人数そのものをグラフ化する。これは検挙・補導人員数と未成年者は警視庁発表のもの、高齢者人数は警視庁=警察庁発表のものである。

↑ 全国の万引き検挙・補導数推移(人)
報道にあるように、高齢者の万引き検挙・補導人員数は20年連続で増加している。一方、少年のそれは1998年をピークに何度か上下を繰り返しながら、全体的には減少傾向が確認できる。絶対数としては確かに「少年は減少、高齢者は増加」で間違いない。
なお少年部分の欠けているところが非常に気になる形になってしまったが、警察庁の2010年上半期までのデータを参照すると、2010年上半期の時点で「未成年者と高齢者の万引きによる検挙・補導人員数の逆転現象」が確認できる。
続いて各年における該当年齢階層の人口を調べる。これは総務省統計局の【人口推計】から。統計表の一覧から2009年までは「年次」「長期時系列データ」(各年10月1日時点)、2010年についてはまだ確定報がないので、月次での速報値から2010年10月時点のものを取得。5歳階級のデータから、19歳未満全員(本来なら0-4歳などは除外すべきだが、警視庁の定義で「少年は20歳未満」とある以上、それに従った)と65歳以上の人数を再算出した。

↑ 全国の人口推移(千人、各年10月1日時点、2010年は暫定)
2003年から2004年にかけて逆転現象が起きているのが分かる。
さて、各年齢階層の人口が分かったので、あとは万引きによる検挙・補導人員と付き合わせて「人口比」を求めることができる。当初%表記によるグラフを創ったのだが「0.082%」などと極めて小さな値となり、今一つつかみどころがないので、人口1万人あたりの人数推移のグラフとして生成した。

↑ 全国の万引き検挙・補導人員数の該当年齢階層人口に占める比率(一万人に対する人数)
少年による検挙・補導率は1998年をピークに漸減する方向にある。これは絶対数と同じ傾向。高齢者においては、2006年までは確かに増加傾向にあり、データがもっとも古い1989年の2.79人、計測期間内での最小値を示している1990年の2.46人と比べると約3.5倍にも増加している。ところが2006年あたりから比率は横ばいを見せ、直近3年ではむしろわずかながらも減少の動きさえ見せている。

ただしいくら「比率」が横ばい・減少していたとしても、絶対数が増加していることに違いは無い。そして被害を受ける小売店、そして不幸な状況に追いやられる当事者やその周囲の人々の数が増えている事実は変わらない。「比率が減っている」だけでは無く「絶対数が減る」ことも同時に求めねばならない。
蛇足ながら、少年における絶対数・「該当年齢階層人口に占める比率」が共に減少している傾向は注目に値すべき動きといえる(それでも高齢者などと比べればまだ高いが)。高齢者もまた同様の傾向を歩んでほしいものだが、対応策が大きく異なることから、むしろこれから注力すべきといえよう。無論未成年者における対応を怠ること無く継続すべきなのは言うまでも無い。
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