若年層の投票意向の回復…政治に対する意識変化をさぐる(最新)

2022/07/08 02:39

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2022-0621国民を代表し、国の施策を執り行うのが政治家であり、その政治家を選出するのが選挙である以上、政治への関心はそのまま選挙への関心に直結することになる。昨今では若年層の投票率の低さがしばしば問題視されるているが、政治・選挙に対する意欲はどのような状況にあり、過去から現在において変化を示してきたのだろうか。統計数理研究所・国民性調査委員会による定点観測的調査【日本人の国民性】のデータを基に、その実情を確認する。

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調査方法などは今調査に関する先行記事【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か(最新)】を参照のこと。

まずは複数の設問から政治意向に対する項目を抽出し、賛成意見比率を集約し、一つのグラフにまとめることにした。

↑ 政治意向に関する問題(該当項目から抽出、賛成意見回答値)
↑ 政治意向に関する問題(該当項目から抽出、賛成意見回答値)

一番気になるのが「支持政党なし」、いわゆる「無支持派層」と言われる存在。公開上のデータは1998年以降の5回分しかないが、2008年当時には「結果のポイント」ページで1953年以降のデータが反映されたグラフがあり、それによると1953-1958年は20%、1973年以降30%強に上昇し、1993年には40%・1998年には上記グラフ上の57%にまで急上昇している。

↑ 政治をめぐる意識の変化(「結果のポイント」2008年当時の解説ページから取得)
↑ 政治をめぐる意識の変化(「結果のポイント」2008年当時の解説ページから取得)

この動きは政党区分での政治への無関心度の高まりを意味しているが、直近の2018年では58%と過去最高値の60%に近づく値。その動きと連動する形で漸減を続けていた「何をおいても投票する」比率だが、1988年の34%を底値に、それ以降は40%内外の横ばいへと動きを変えつつあったが、2018年では33%にまで下落。選挙への無関心派や投票への忌避感の増加は前世紀末でストップがかかっていたものの、2018年で再び増加の動きとなったようだ。

また「社会に不満がある時でも何もしない」が減るとともに、「いくらよさそうに見える政治家でも、任せきりはよくない。国民同士の論議が必要だ」「不満なら選挙で考慮する」意見が増加していた。投票行動で政治を、社会をよい方向にかじ取りしようという流れがあった。しかし直近の2018年では、「社会に不満がある時でも何もしない」の値が大きく増え、「不満なら選挙で考慮する」が減っている。投票行動から距離を置く、そして政治への無関心を表す動きが見えている。

特に気になるのは、若年層の意向変化。衆議院総選挙の時の投票意向で見ると、世間一般に言われている「若年層の投票離れ」がひと目で分かるグラフとなっている。なお今件は現時点で直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる(問い合わせ中)。

↑ 衆議院総選挙時の投票意向(「何をおいても投票する」回答値)
↑ 衆議院総選挙時の投票意向(「何をおいても投票する」回答値)

若年層と表現できる年齢階層、40代は少々厳しいが一応入れて20-40代について太い線・率の表記を行ったが、若い年齢階層ほど投票意向が低い。最も低いのは1998年-2003年で、20代は10%・30代は17-23%しか「衆議院総選挙の際には、何をおいても投票する」という回答者がいない。70代以上の6割前後、60代の5割内外と比べれば大きな違いだ。

しかしながら今世紀に入ってから、40代は減少傾向が続くものの、20代から30代には反転の流れが確認できる。30代はさすがに2008年の伸び方が急だったこともあり直近の2013年には再び減少したものの、それでも2003年と比べれば5%ポイントの増加。40代との差はわずか4%ポイントに縮まっている。さらに20代にいたっては2008年比で9%ポイント増の21%にまで増加している。意識の変化以外に単なる底打ち、との見方もできるが、ともあれ若年層における投票意欲の増加の動きが見られるのには違いなく、今後の動向に注目したいところではある。投票への忌避の動きが見られた2018年において、具体的にどの年齢階層が距離を置こうとしているのか、非常に気になるところなのだが。



全般的な傾向として、昨今では特に若年層において、社会情勢や自らが置かれた境遇を反映する形で、政治・投票行動に対する興味関心が高まりを見せている。一方で一部の「有識者」からは「若年層は自分ら有識者(が属する高齢層世代)を支える重い負担があり、人口比や財力のこともあるので、いくら喘いでも無駄、諦めるが無難」的な発言や行動がなされ、若年層の意思を打ち砕こうとする動きがある。

要は自分たちがこれまで散々ひっくり返してきた、そして今座っている座布団を再び「他人によって」ひっくり返されるのが、たまらなく嫌ということらしい。あるいは自分達の所業を忘れているのかもしれない。

他方、その言葉を受けて、あるいは周辺環境の空気を読んで大人しくしている若者を見るにつけ、「生気が無い」と非難の声を浴びせる。彼らは若者たちに何をしてほしいと望んでいるのだろうか。単に隷属する存在であることを希望している、第三者的な視点では、そのようにしか見えない。

彼らの有象無象の圧力に対し、若年層にできることは、まず投票に行くこと。そして「正しい」人に票を投じること。一人ひとりが実践すれば、その動きを明確にすれば、世の中は相当大きく動いていくに違いない。


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