漫画好き、それでも読むのは多くない。「どうしてなのか?」と尋ねられたら?

2011/01/22 07:46

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漫画アイシェアは2011年1月21日、新潮社と共に、漫画好きを対象とした漫画に関する調査結果を発表した。それによると調査母体においては、漫画を読む頻度は「読みたい作品がある時だけ」とする人が1/3強に達していることが分かった。次いで多いのが「週2-3回」で2割近くの人が同意している。「漫画好き」を対象にした調査結果にしては頻度があまり高くなく、昨今の漫画市場で読者のニーズにマッチした作品が少ないことが考えられる結果となっている(【発表リリース】)。



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今調査はアイシェアが2010年12月22日から2011年1月5日の間、無料メール転送サービスCLUB BBQの登録会員(携帯電話による個人認証を利用したもの)に対してパソコンのインターネット経由で「漫画好き」と回答した人に行われたもので、有効回答数は1205人。男女比は50.6対49.4、年齢階層比は20代25.2%・30代36.5%・40代38.3%。

【夏休みの影響も?…少年・男性向けコミック誌の部数変化(2010年7月-9月データ)】などにもあるが、出版業界全体の状況同様に、漫画業界も調子が良いとは言えない状態にある。要は漫画が売れていない。それでは漫画を買う側、読者側の心境はどのようなものか、気になる人も少なくあるまい。その一部を推し量ることができるのが、今回の調査結果項目。

「漫画好き」という振り分けをした調査母体において、漫画を読む頻度を尋ねたものだが、ボリュームゾーン(というより項目)は「週2-3回」で18.4%。次いで「週1回」が13.9%。「週1-3回」という区切りにすると、3割強という結果になる。

↑ 漫画を読む頻度は平均でどれくらいか(漫画好き限定)
↑ 漫画を読む頻度は平均でどれくらいか(漫画好き限定)

「漫画好き」にも関わらず、あまり読んでいないという感はある。そしてなによりも「読みたい作品がある時だけ」とする人が最も多く、1/3を超えている状況もまた、妙な雰囲気を覚えさせる。

男女別でみると、男性よりも女性の方がより好み……というより「好きなものしか読まない」「定期的に読んでいるわけではない」傾向が強い。

↑ 漫画を読む頻度は平均でどれくらいか(漫画好き限定)(男女別)
↑ 漫画を読む頻度は平均でどれくらいか(漫画好き限定)(男女別)

男性の方が定期的に漫画を読む傾向が強いのは、通勤・通学時に読む場面が多いからだろうか。

さらに年齢階層別に見ると、はっきりと「歳を経るに連れて読む頻度が低くなる」のが分かる。「ほぼ毎日」から「週2-3回」までは若年層ほど高く、「週1回」以降になると壮齢層ほど高い値が出ている。

↑ 漫画を読む頻度は平均でどれくらいか(漫画好き限定)(年齢階層別)
↑ 漫画を読む頻度は平均でどれくらいか(漫画好き限定)(年齢階層別)

つまり、「男性より女性、歳を経るほど(漫画好きでも)漫画を読む頻度は減少している」ということになる。

「社会文化的に男性よりも女性の方が漫画を読まないからでは」「男性向けの漫画の方が多いからでは」「歳を重ねるに連れて漫画を読むことへの恥じらいが増すからでは」「漫画を買う財力が足りないのでは」など、色々な想定が頭をよぎる。しかしそれらの多くがあくまでも類推でしか無く、事実とは異なる面が多いのも事実。一方で今調査では「これが一因かもしれない」という項目についての結果も提示されている。

↑ 最近、面白いと思った漫画はあるか(漫画好き限定)
↑ 最近、面白いと思った漫画はあるか(漫画好き限定)

「漫画好き」に向けて調査をしたにも関わらず、「面白いと思う漫画がたくさんある」と回答した、むしろ「回答できた」人は1-2割しかいない。2/3前後は「少しある」。そして2割前後は「無い」。面白くない漫画を読む責務は無いのだから、漫画好きでも読む頻度が減ったり、「面白い作品にのみ目を通す」人が多いのも至極当然。

男女別の差異は確認できないが、年齢階層別に見ると歳を経るにつれて「面白い漫画が無い」とする意見が強まっている。これが「歳上ほど漫画を読む頻度が減る」のと相関関係(そして恐らくは因果関係の一部)にあることも分かる。



「興味を引くコンテンツを提供できない」。これは需要側のニーズの多様化にも一因がある。しかしその多様化に供給側が対応できず、需要側の満足感が減少していることに違いは無い。これは漫画に限らず、出版業界全体の問題として考えることも出来よう。

情報発信元の多様化、クロス化(具体的にはインターネットや携帯端末の普及)により、供給側が一方的にムーブメントを創り、需要側を誘導する時代は終わりを告げつつある。新しい時代に対応した体制を、供給側も真剣に考える必要があるといえよう。



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