若年層で変化を見せる「上司との関係」への考え方(最新)

2022/07/07 02:42

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2022-0621よほどの少人数による構成組織や身内だけの事業体でない限り、就業すると多数の上司との間の付き合い、人間関係が発生することになる。たとえ自由業・自営業でもよほどの職種でなければ、仕事の上で上の立場にある人、頭を下げねばならない相手は存在する。そのような「上司との関係」において、人々の考えはどのような変化を見せているだろうか。今回は付き合い方や上司の面倒見の是非に焦点を絞り、統計数理研究所・国民性調査委員会による定点観測的調査【日本人の国民性】の結果から、その実情を探ることにする。

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調査方法などは今調査に関する先行記事【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か(最新)】を参照のこと。

今回焦点を当てるのは、上司(上役)と回答者自身の関係に関する項目。まずは「上役との付き合い」について。

上役との関係は仕事でのみか、それとも仕事以外(例えばプライベート)でもあるべきか、という点について。1973年時点では圧倒的多数が「仕事以外もあり」とする意見で占められていた。しかし1998年になると「仕事以外は無くてもよい」とする意見が2倍近くに増加する。

ところがそれ以降、再びその意見は漸減し、「上司とは仕事以外も付き合いがあった方がよい」とする意見が増えているのが確認できる。しかし直近の2018年では再び「仕事以外は無くてもよい」が大きく増える動きを示した。

↑ 会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか
↑ 会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか

1998年以降の流れでは調査回ごとに「無くてもよい」が1%ポイントずつ減っていたが、2013年では一気に7%ポイントも減り、その分「あった方がよい」が増え、勢いが加速した感はあった。しかし直近の2018年においては「無くてもよい」とする意見は36%となり、前回調査結果から6%ポイントも増えてしまっている。

これを年齢階層別に見たのが次のグラフ。ただし今件は現時点で直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる(問い合わせ中)。20-30代で2003年から2008年にかけて大きな上昇が確認できる。今世紀に入り、若年層の間で職場における上役への期待・価値観の変化が見受けられる。

↑ 「会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いはあった方がよいか、無くてもよいか」で「あった方がよい」とする回答
↑ 「会社働きの場合、上役と仕事以外の付き合いは あった方がよいか、無くてもよいか」で 「あった方がよい」とする回答

2013年ではその勢いは減じたものの、上昇基調が続いていることに変わりはなく、20代の「あった方がよい」派は70代以上の値に近づき、30代もそれに続く。また下落基調にあった40代が2013年では大きく上昇を示したのも興味深いところ。2018年の値が気になるところだが。

一方で望まれる上司像に関して、若年層の間の価値観の変化も注目に値する動きを示している。上役の行動傾向として「規則を曲げてまで無理に仕事はさせないが、仕事以外では人の面倒を見ない課長(ドライ上役)」「時には規則を曲げて無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外のことでも人の面倒をよく見る課長(熱血モーレツ上役)」の2パターンを提示し、どちらを好むかについて尋ね、ドライ上役を望む人の割合を示したのが次のグラフ。今件も現時点で直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる(問い合わせ中)。

↑ 「規則を曲げてまで無理に仕事はさせないが、仕事以外では人の面倒を見ない課長」「時には規則を曲げて無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外のことでも人の面倒をよく見る課長」のうち、前者を好む人の割合
↑ 「規則を曲げてまで無理に仕事はさせないが、仕事以外では 人の面倒を見ない課長」「時には規則を曲げて無理な仕事をさせることもあるが、仕事以外のことでも人の面倒をよく見る課長」のうち、前者を好む人の割合

1970年代後半から20-30代の若年層間でこのタイプを好む人が増加する傾向にあったが、1998年をピークに、横ばい、そして2008年までは減少する動きを見せていた。仕事は仕事と割り切って上下関係が構築できれば良しとする若年層が減少、言い換えれば、仕事では多少無理をさせることがあっても、色々な面で面倒見のよい上司を好む若年層が増えていたことが分かる。

ところが直近の2013年では再びこの値が大きく上昇し、20代・30代ともに今項目の調査以降最大の値を示す形となった。上役との間におけるそこそこの付き合いは望みたいが、過度な面倒は御免こうむりたい、さらには仕事上での無理は避けたいとする、平穏無事・安定志向が表れているのかもしれない。実際仕事に関する他の項目でも、チャレンジ精神に係わる項目が若年層で減少し、確実性を求める動きが高まっているのも、それの裏付けとなろう。



中年層以降、特に団塊世代は昨今の若年層を指して「(上司との)付き合いが悪い」「自分勝手」と決めつける場面が多い。しかし今回の結果を見る限り、一概にそうとは言い切れない状況なのが分かる。若年層は若年層なりに自分が置かれた現状・環境を見極め、最適な選択肢を求め、他人との接触方法を模索している。

シニア層における自らの偏見だけで若年層にレッテルを貼り、無用なプレッシャーを与えているとしたら。自分の思い違い・部下との付き合いの仕方の間違いに気が付かず、むしろ正しいと意固地になり、若年層を意気消沈させ、さらに自らの発想を世間全般の風潮であり正しい所業であると吹聴していたとしたら。これほど愚かで悲しい話はない。


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