若年層で「いらいら」が増す現代社会、理由はさまざま(最新)
2022/07/06 02:48
情報技術の進歩に伴い、人の生活はより効率的で便利になっているはずだが、それは同時に各人に要求される時間的な拘束がより強まることをも意味している。当然、個人が覚えるストレス、いらいら感もより一層の高まりを見せることが容易に想像でき、実態感を覚える人も少なくないはず。今回は統計数理研究所・国民性調査委員会による定点観測的調査【日本人の国民性】の最新版として2018年調査分が2021年10月29日付で反映されたことを受け、その「いらいら感」の実情を確認していくことにする。
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調査方法などは今調査に関する先行記事【「若者は自分勝手で他人より自分のことばかり」は本当か(最新)】を参照のこと。今回焦点を当てるのは、「1か月の間にいらいらしたか」との設問に対する答え。1993年以降の調査結果が確認できるので、それを確認する。
↑ この1か月の間に「いらいら」したか
地味ではあるがほぼ確実に増加傾向にあり、いらいら感が募る状況にあるのが分かる。1993年から2018年の25年間で14%ポイントの増加。2013年以降は「いらいらした」人が「していない」人を上回る形となっている。
これを年齢階層別に見ると、全体的な「いらいら」感の底上げは、各年における若年層、特に20代から40代によるものであることが分かる。ただし今件は現時点で直近2018年分の値が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる(問い合わせ中)。
↑ ”この1か月の間に「いらいら」したか”で「はい」の回答
1993-1998年にかけてはすべての階層で増加しているが、1998年以降は「50代以降は横ばい」「40代以下は急勾配で上昇」しているのが分かる。つまりこの10年間において、「40代まではいらいら感が増す」「50代以降はこれまでと変わらない」社会的な変化が起きたと考えてもおかしくはない。また直近の2013年では上昇層に50代が加わる一方で、60代以降は逆にわずかではあるが減少する動きさえ示している。いらいら感の二分化、そしていらいら感ありの若年層の年齢的区切りが少しずつ上昇している雰囲気を覚えさせる。
その「変化」に関するヒントとなりうるのが、2008年分の調査結果において「結果のポイント」として特記解説されていた、他の項目とのクロス集計結果(クロス集計そのものは原則非公開で、普段の公開データのみでは推し量る事はできない)。
↑ 「いらいら」の回答と関係する要因の例(2008年)
経済面の不満・仕事や職業への満足感・生活全体への満足感の3項目で、不満・不安度別に「いらいら」を感じたか否かを再集計したものだが、見事に各項目で不満や不安を多く抱える人ほど、いらいらを覚える割合が高まっている。今調査の報告書では「またこのような関係は、程度の差こそあれ、どの年齢層でも認められる」とあるが、結果として「いらいら」感の推移が一つ上のグラフに出ている通りである以上、少なくとも経済・職・生活全体の面において、20-40代、直近ではそれに加えて50代の間に、不平不満が高まりを見せていると考えてよさそうだ。そしてその感情が「いらいら感」というシグナルの形で表れているのだろう。
今件はあくまでも特定母体に対する調査結果なため、世間全般に対する傾向と完全に一致すると断定することはできない。とはいえ類推するための材料としては十分以上に確証度は高い。
前世紀末期以降若年層から中年層の間に増加する「いらいら」が、何に起因するものなのか。同じ時代を生きているにもかかわらず、「いらいら」率が増えない50代以降、直近ならば60代以降との違いを探せば、そして最後のグラフに掲げた3項目について考え直せば、おのずから結論は導き出せるに違いない。
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