子供手当、男性は「子供の教育費」「子供の将来への貯金」が3割強ずつ、女性は…?
2010/12/31 19:30
【持田ヘルスケア】は2010年12月20日、妊娠や出産、子育てに関するアンケート調査結果を発表した。それによると調査母体において、いわゆる「子供手当」の使い道としては男性が「子供の教育費・塾・習い事等」と「子供の将来の備えとして貯金」がほぼ同数でトップ、女性が「子供の将来の備えとして貯金」が半数近くの回答率を占めてトップについた。かねてから指摘されてきたことではあるが、内需活性化への期待も込めた「現在の育児・養育費のサポート」という意図通りの使われ方をする実額はかなり少なそうである。
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今調査は2010年7月23日から11月18日にかけて、インターネット経由で全国の男女5427人に対して行われたもの。男女比・年齢階層比などは非公開。
子供手当は大義名分上は「子供の成長を社会全体で支援」「子育ての経済的負担の軽減」が目的であり、この主旨に従って用いなければならない(子供手当法にもその記述がある)。それでは調査母体では実際に、どのような使い方をしているのだろうか。まずは回答者の男女別だが、男性は「子供の教育費・塾・習い事等」が36.8%、「子供の将来の備えとして貯金」が36.5%となり、ほぼ同数トップとなった。一方女性は「子供の将来の備えとして貯金」が49.8%とずば抜けた値を見せている。
↑ 子供手当はどのように使っているか(男女別)
注意してほしいのはこれが複数回答であると同時に、使った額面の割合を示すものではないこと。元々複数回答なだけに全部足すと100%を超えるので後者についてはすぐに理解できるが、前者は勘違いしやすい。例えば「教育費」と「とりあえず貯金」を半々という人もいれば、「子供の将来の備えとして貯金」をする一方で大半を「行楽」に使ってしまう場合もあるだろう。さらに加えるとすれば、これが「すでに使った内容」であり、「これからどのようにして使うか」という予想ではないこと。
男性は「子供向けの教育費など」と「子供のための貯金」がそれぞれ4割近くの回答。双方とも子供向けであるが、一方は「現在の消費」、他方は「未来の消費のための貯蓄」であり、直接的な社会に与える経済効果は後者の方が小さくなる(お金の循環が止まるため)。双方とも子供手当の意義としては間違っていないものの、あまり効果が期待できない後者がほぼ同列でトップについている。
女性の場合はさらに「現在消費されない、子供のための将来への貯金」として用いる人がほぼ半数に達している。それだけ子供の将来に関するお金周りへの不安を覚えている証ともいえる(そしてもちろん主旨には反していないものの、経済効果は小さなものとなる)。またこの「半数」という値は【子供手当、「貯蓄して子供自身に使ってもらう」が二人に一人・教育費充当は4割足らず】の結果とほぼ一致しており、数字のリアルさを裏付けてくれるものとなる。
直接的な「子供手当の意義」に適合した使い道は以上で、「生活費の補てん、日用品の購入」は子供も使うことを考えれば半々くらい、後は主旨に反しているとは言い難い使い道が続いているが、それぞれそれなりに回答者がいるのが確認できる。
続いてこれを女性に限定し、さらに就業状態別に区分して再集計したのが次のグラフ。女性全体同様に各就業状態別でも「子供の将来の備えとして貯金」がトップについていることに違いは無い。
↑ 子供手当はどのように使っているか(女性、就業状態別)
大まかな傾向に違いは無いが、細かく見ると
・「産休・育休中」「専業主婦」は貯金が多い
という特徴が確認できる。この傾向の理由として、「就業中」の主婦は働いている分だけ家計全体でのお金周りに余力ができるため、貯蓄ではなく現在の教育費に回すのではないか、と元資料では分析している。この考えはあながち間違っていないようにも見える。
しかしよく考えてみると、余裕が無いからこそ生活費をはじめとする現状の消費の補完に充て、余裕があれば貯蓄に回すのではとする考え方もできる。事実、「専業主婦」の「生活費の補てん、日用品の購入」の値がやや高めなのが良い例だ。どちらの解釈もできるため、一概にどちらの考え方が正しいとは言い切れない(【支給されても主婦はパートの時間を減らさず、企業の負担が増える可能性も……「子供手当」の功罪】あたりでも同じ分析がなされている)。
「子供手当の意義」、つまり「子供の成長を社会全体で支援」をするのなら、「負担を一部お金で援助する」のではなく、本来は「負担を減らす」のが一番効率的。例えば【出産や育児で困る・不安事、トップは「育児費用が負担に」】で挙げられているように、出産・育児などで不安視されている項目に、そのヒントが隠されている。
↑ 妊娠・出産・育児にあたって困った事・不安な事(複数回答)(上位10位)(再録)
「育児にかかる費用が負担になる」のなら、具体的な負担項目を上げて、それを無料化・割引のシステムを作ればよい。実際第八位の「妊婦健診の費用が負担」の部分は、かなりの部分が公的に補われるシステムが構築されている。「保育園に入れない・保育園が少ない」の場合は、公的な保育園を創設すれば良い。地域社会における雇用の確保にもつながる。
直接「手当」と称して予算を細かく区分してお金を配り個々の判断に任せるより、まとまった予算としてまとめて必要なところに注入した方が、はるかに効果的で効率の良い成果が期待できる。子供手当の予算として計上された数兆円があれば、どれだけ国内需要を早期に喚起でき、しかも主旨通り「子供のため」に使うことができたのか。想像するだけで口惜しさ、そして「手当」という形で配ることを選択した者たちの「有能さ」への失望感を覚える人も少なくあるまい。
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