テレビや新聞はパソコン・携帯では代替できない? 主婦の視点で見た、デジタルで事足りるものと物足りないもの
2010/12/26 07:22
クラレは2010年12月16日、「現代家庭の情報生活」に関する調査結果を発表した。それによると調査母体の主婦本人においては、パソコンや携帯電話などのデジタル・ディスプレイ機器からの情報取得で事足りているもののトップには「時刻表」がついた。次いで「地図」「料理本」「請求書」「辞典・辞書」が続いている。一方「物足りないもの、実物の方が望ましいもの」のトップには「テレビ」が、次いで「新聞」「小説」が上位を占めていた(【発表リリース】)。
スポンサードリンク
今調査は2010年9月に首都圏・近畿圏に在住する500世帯に対し「インターネット経由で」「家族の生活・行動、家計の事情を最も把握している」主婦(=結婚済み、専業主婦63.0%・勤め人やパート33.4%・自営業その他3.6%)に行われたもので、年齢階層は20代18.0%・30代36.6%・40代27.6%・50歳以上17.8%。今件は個人に対する設問のため、主婦本人における回答と見て良い。
パソコンや携帯電話、その他インターネットと接続できる情報端末の普及により、さまざまなメディアが代替されるようになった。インターネット経由で時刻表やレシピ、色々な言葉の意味を調べたり、テレビ放送や新聞の速報を目にしたり、果ては医療情報をチェックすることも可能なのが今の時代。
それではそれらデジタルメディアで十分要件が済んでしまい、元のメディアが不必要だと思うようになったものには何があるだろうか。トップには「時刻表」。50.0%の回答率を示す形となった。つまり主婦の二人に一人は「パソコンなどで調べられるから、紙の時刻表はもう必要ない、かな?」と実感していることになる。
↑ PCや携帯、情報端末で「事足りるもの」
第二位には「地図」、第三位には「料理本」、そして「請求書」「辞典・辞書」「新聞」と続く。上位陣の顔ぶれを良く見直すと分かるのだが、「請求書」はともかく他の項目はほぼすべて、いわゆる「検索エンジン系ポータルサイト」でサービスの一環として提供されているものばかり。ポータルサイトが単に検索の窓口としてだけではなく、インターネットを使ったさまざまなライフスタイルの拠点の立ち位置を占めていることも、間接的に読みとることができる。
これを年齢別に見たのが次のグラフ。世代毎の価値観の違いが透けて見える。
↑ PCや携帯、情報端末で「事足りるもの」(年齢階層別)
「地図」など一部は高齢ほど「実物は要らない」という層が増えるが、「請求書」「新聞」など複数項目で、歳を経るほど「デジタルだけで事足りる」という意見が減る傾向が見られる。特に「新聞」は大きな減少が確認できる。若年層ほどデジタルに慣れている、ということなのだろう。
●「物足りないモノ」上位には既存メディアがごろごろと
では逆に「パソコンや携帯電話などのデジタルメディア上のサービス提供では物足りないもの」は何だろうか。極論するとほぼすべての既存メディア(紙媒体や映像媒体)はパソコン携帯電話などからも情報を提供し得るはずだが、「それでは何となくしっくりと来ない」「充実感が不足する」など、いわゆる「物足りなさを覚える」ものを挙げてもらった結果が次のグラフ。
PCや携帯、情報端末では「物足りなさを感じるもの」
トップは「テレビ」そして「新聞」。続いて「小説」「漫画」と、いわゆる4大既存メディアに内包されるものが並んでいる。「テレビ」は携帯電話上からならともかく、パソコン経由で見れば画面の大きさもほぼ同等のものにできるはずなのだが、それでもやはり「テレビ本体」を通して観ることに意味があるということか。
また「広告チラシ」が2割近くを占めており、昨今の「デジタルチラシ」ブームの中でも「本物のチラシの方がいいな」と感じる人が多いこと、4大既存メディアの中で「ラジオ」周りがないことから、デジタルメディアで十分代替されうるものとして認識されてしまっていることなど、他のさまざまなメディア周りの状況が連想される。
これを世代別に見ると、世代間のメディアに対する思い入れの違いが見えてくる。
↑ PCや携帯、情報端末では「物足りなさを感じるもの」(年齢階層別)
まず最初に目に留まるのが「新聞」。先の「事足りる」項目でも触れたが、高齢者ほど「紙の新聞」に深いこだわりを持っているのが改めて確認できる。一方で興味深いのは「テレビ」「ファッション雑誌」「DVD」などの複数項目において、若年層の方が従来メディアで無いと物足りないとの感想を抱いていること。意外に「若者は何でもデジタル一番」というわけではないようだ。
あくまでも今件は主婦を対象にしたもので、独身女性、さらには男性全般なら多少異なる結果を見せることと思われる。とはいえ全般的な傾向として見られる「ポータルサイトが提供するサービスは、デジタルで事足りてしまうものが多い」「新聞は紙媒体でないと物足りない」「若年層が何でもデジタルで事足りる、というわけではない」あたりは、普遍的な傾向と見てよい。
その視点で各種媒体の動向を見直すと、新たな面が見えてくるかもしれない。
■関連記事:
【無料でiPadからチラシをチェック・電子チラシサイト「Shufoo!」、iPad・iPhoneなど向けアプリを公開開始】
【20余年間の新聞やテレビ、雑誌やラジオなどの広告費の推移】
スポンサードリンク