「長期的・安定的な収益確保」公的年金の運用方法に賛成派は7割近く、反対派の4倍以上
2010/12/17 12:00
内閣府は2010年12月13日、年金積立金の運用に関する世論調査の結果を発表した。それによると、公的年金の現行の運用方針「長期的に、安定的な収益を確保することを目指す」という考え方について、賛成派は7割近くに達していることが分かった。反対派は1割強でしかない。年齢階層別にみると中堅層で賛成派が多く、「分からない」とする回答は高齢者に多く見受けられる(【発表リリース】)。
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今調査は2010年10月14日から24日にかけて、全国20歳以上の人から層化2段無作為抽出法で選ばれた3000人を対象に、調査員による個別面接聴取法によって行われたもの。有効回答数は1981人。男女比は1464対1536。年齢階層別回答数は20代145人・30代306人・40代327人・50代365人・60代430人・70歳以上408人。
公的年金の運用は現在、「四半期や1年といった短期的な運用結果にとらわれることなく、10年や20年といった長期的に安定的な収益を確保することを目指すという考え方に基づいて」行われている。テレビ報道では良く「年金が-億円赤字になりました」と四半期毎のデータが出ると大騒ぎするが、同じ騒ぎを四半期決算で黒字が出た時についぞ聞いたことがないがため、「年金って四半期毎のような短い期間で運用して、赤字ばかり出しているのかな」と勘違いしている人が多いはず。そこでこの運用の基本原則を提示し、実態を知ってもらった上で、この考え方をどう思うのかについて聞いた結果が次のグラフ。
↑ 年金積立金の運用の考え方についての意向
年齢階層を問わず、反対派は1割強。20-40代までは7割前後を賛成派が占めており、「分からない」は約1割でしかない。興味深いのは高齢層の動きで、反対派が増えることなく「分からない」層がそのまま賛成派に浸透している動きを見せている。
これは単純に運用そのものの仕組みが分からない、長期的運用・短期的運用の長短所が分からないの他に、「長期の視点で見た、安全で安定した運用で強固な積立運用をしてほしい」「しかしすでに受け取る身の自分としては、長期の事を考えてもあまり意味がないのだし、短期的に利益を上げ得るハイリスクな短期運用でハイリターンも捨てがたい」という二つの考えが葛藤しているものと思われる(注意してほしいのは、この時点で「ハイリスク・ハイリターン」の「ハイリスク」を失念していること)。
ともあれ、今調査結果を見る限り、公的年金の運用方針について、賛成派は多数であり、賛成派と反対派の比率は4対1以上に開いている。ここ数年、上記に挙げたような報道スタイルに押されてか、年金のハイリスク運用・短期運用を声高に掲げる向きが強くなっていることは否めない。
無駄な施設の建造などは問題外だが、【運用方法4割、でも結果公表は1割ちょっと……公的年金の認知度事情】で挙げたような「国債など債券を中心に一部株式をとりいれて市場運用されている」部分については、わざわざこれ以上のリスクテイクをするべきなのか否か、年金の対象者たちがそれを望んでいるかどうか、よくある「声高に叫んでいる人たちが実は少数派で、多数意見を反映しているわけではなかった」事例なのか、精査するべきだろう。
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