アメリカにおける貧富の差で生じるデジタルデバイド
2010/12/05 12:00
アメリカの調査機関PewResearchCenterは2010年11月24日、アメリカ人のインターネットなどをはじめとするオンライン環境と年収に関する調査結果【The Better-Off Online】を発表した。高年収の世帯ほどインターネットの環境が整っていることは容易に想像できるが、それを数字の上から確認できる貴重なデータといえる。今回はその中から、主要なインターネットの環境普及率とインターネットにおける主要行動率をグラフ化してみることにする。
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今調査のうち今件該当部分は2010年8月9日から9月13日にかけてPrinceton Survey Research International社が固定電話・携帯電話を使い、英語とスペイン語でインタビュー形式にて18歳以上に対して行ったもので、有効回答数は3001人。サンプルの誤差はプラスマイナス2.5%。
まずはインターネットの環境の普及率。
↑ 年収別インターネット環境普及率(米、2010年8月-9月)
年収7.5万ドル以上の世帯(=回答者)では95%なのに対し、3万ドル未満では57%に留まっている。原グラフでは単に「インターネット利用」とあるが、解説分で「自宅でのインターネット利用云々」とあるので、これは自宅でのインターネット利用(環境整備)率と見なしてよい。一方でブロードバンド普及率は高年収世帯で87%なのに、年収の最下層ではその半分以下の40%に留まっている。
また、この両値から「ブロードバンド普及率÷インターネット利用率」を計算することにより、「インターネット利用世帯におけるブロードバンド普及率」を(小数点以下が省略されているので荒い数字ではあるが)求めることができる。この概算では年収5万ドル以上が9割超えの高い値を示しているものの、それ以下では7-8割に留まっており、ブロードバンド率でも年収の差が生じていることが確認できる。
携帯電話の所有率はさすがにインターネット利用率よりも高めだが、それでも年収差で20ポイントもの差が出ているのが確認できる。特に最下層では保有率は3/4でしかないのが目に留まる。
続いてインターネットにおける主要行動率。インターネット利用者における比率では無く、調査母体全体に占める比率であることに注意。
↑ 年収別インターネットにおける行動率(米、2010年8月-9月)
インターネットを使う環境が無ければこれらの行動は不可能。もちろん自宅以外(例えば図書館)で利用することも不可能ではないが、一般的な利用性向においては、そのような場面での利用が前面に押し出されることは考えにくい。
そもそも論として、インターネットの利用率が高い高所得層ほど高率が出ているのは当然の話。しかしそれを差し引いても、「低所得者層でのオンラインニュース購読率の低さ」「中堅層以上の商品検索率の高さ」「高所得層での地図検索率の高さ」が目立つ。それぞれ「時間的、精神的余裕がないのでニュース購読率も低い」「所得に余裕があるので商品を購入する機会が多いから、検索機会も多くなる」「多種多様にインターネットを使いこなしているので、地図の利用者も多い」と考えれば、納得もいく。
今件レポートではもう一、二回に渡り、別の視点から年収別のインターネット周りにおける利用率・普及率・保有率を見比べる予定。いずれの項目でも「デジタルデバイド」が年齢、世代間だけに起きているのでは無く、所得間でも生じているのが改めて認識できる結果となっている。
そしてこのような「所得によるデジタルデバイド」は当然日本でも生じている。機会があれば別途グラフ化して紹介しよう。
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