再び日照不足へ・日照時間(2010年10月分)

2010/11/01 12:05

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曇り春先に【やっぱり今年は晴れの日が少ない!? 日照時間】から毎月定点観測を続けている日照時間推移。今回も気象庁のデータを元に、最新の2010年10月分のデータを盛り込んだ日照時間の推移を確認する。



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データ取得元は【気象庁の気象統計情報のコーナー】。まずは「最新の気象データ」から「天候の状況」を選び、そこから「日照時間」における、「昨日までの各期日平均」と「同時期の平年値」を比較。そしてその割合を示した地図をいくつか抽出する。赤系統の色ほど日照時間が平均より多く、薄い色で大体平均。灰色から黒に近付くに連れて日照時間が少ないことを意味する。

↑ 日照時間30日間合計
↑ 日照時間30日間合計

↑ 日照時間60日間合計
↑ 日照時間60日間合計

↑ 日照時間90日間合計
↑ 日照時間90日間合計

90日データでは関東・甲信越地方-近畿・中国地方にかけて赤系統の点が確認できる。60日データでは赤点数が少なくなり、直近30日では北海道西部を除き、灰色系統一色な事が分かる。つまり10月はほぼ全国的に日照時間が平年比でマイナスだった事を意味する。春先と同じ状況に戻りつつあるということなのだろうか。

東京、そしてお米の産地・新潟と熊本で定点観測データを検証
前回の記事同様(&データの継続利用のため)に、東京、そして米どころとして新潟と熊本において「気象統計情報」から【過去の気象データ検索】を選択。1989年から2010年10月までの月次データ、さらに過去21年(1989年-2009年)の月単位の平均値を出して、各地域ごとにグラフ化したのが次の図。

↑ 東京の日照時間(月あたり、時間)
↑ 東京の日照時間(月あたり、時間)

↑ 新潟の日照時間(月あたり、時間)
↑ 新潟の日照時間(月あたり、時間)

↑ 熊本の日照時間(月あたり、時間)
↑ 熊本の日照時間(月あたり、時間)

一連の記事掲載開始時においては、三地域では東京の1月分がやや長いだけで、後は平均・昨年と比べて短めだったのが懸念材料だった。それが一連の記事の連載理由でもある。それも5月に入ると三地域とも日照時間が長めの結果が出ており、9月までは安心できる状況だった。今回の10月分データでは再び少なからぬ減退が確認でき、春先の心配が再び蘇ってきた雰囲気。昨月の予報「平年に比べて曇りや雨の日が多い見込みです」が的中した形だ。

現時点で【三か月予報】から日照時間部分を抽出した限りでは、

11月……天気は、全国的に数日の周期で変わるでしょう。北・東日本日本海側と沖縄・奄美は、平年と同様に曇りや雨の日が多い見込みです。
12月……天気は、北・東・西日本日本海側は、平年と同様に曇りや雪または雨の日が多いでしょう。北・東・西日本太平洋側は、平年と同様に晴れの日が多い見込みです。沖縄・奄美は、平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。
1月……天気は、北・東・西日本日本海側は、平年と同様に曇りや雪または雨の日が多いでしょう。北・東・西日本太平洋側は、平年と同様に晴れの日が多い見込みです。沖縄・奄美は、平年と同様に曇りや雨の日が多いでしょう。

とある。曇りや雨の日が多いとあるが、「平年通り」との前置きがあるのが救われる。

1993年の「平成の米騒動」の時と比較してみる
さて、「今冬から春先における日照時間の減退と、それに連なるであろう冷夏となれば、想像されるのが農作物の不作」……ということだったが、春先はともかく梅雨前後以降はむしろ「酷暑」と呼べるほどの猛暑となり、以前ほど日照時間の上での心配は要らなくなった。むしろ【お米の品質、猛暑で大幅に低下し1等米比率が約6割強に留まる】でお伝えしたように、猛暑が起因でお米の品質が大幅に劣化するという状況にある。

一応念のため、直近で日照不足によるお米不足が特に問題視された1993年の「平成の米騒動」(この時の米収穫量の不足も冷夏が主要因だった)のデータを抽出し、比較したのが次のグラフだが、データの上でも5-6月以降はそれまでの日照時間の短さを取り返すような、大きな数字が確認できる。ただし10月はむしろ「米騒動」の時より日照時間が少なくなっており、「締めくくりの時期」におけるこの現象がどのような影響を及ぼすのかが気になるところ。

↑ 東京の日照時間(月あたり、時間、1993年と2010年の比較)
↑ 熊本の日照時間(月あたり、時間)

↑ 新潟の日照時間(月あたり、時間、1993年と2010年の比較)
↑ 新潟の日照時間(月あたり、時間、1993年と2010年の比較)

↑ 熊本の日照時間(月あたり、時間、1993年と2010年の比較)
↑ 熊本の日照時間(月あたり、時間、1993年と2010年の比較)

1月ではどの地域も1993年よりも高い値を示しているが、2月以降はいずれも2010年の方が、1993年時よりさらに日照時間は少ないものとなっていた。しかし6月以降は東京・新潟がかなり多め、7月に入ると熊本も多めの結果となった。ところが10月は一転して再び1993年より日照時間の少なさが確認できる。農作物の出来・不出来は日照時間だけに左右されるものでは無く、気温や降水量にも大きな影響を受けるため、一概に「安全」と断言はできないが、日照時間の減退≒曇りか雨≒気温の低下を意味する場合が多いため、この動きは気になるところだ。

なお各地域の10月までの累計日照時間を1993年のそれと比較すると、東京+15.7%・新潟+16.1%・熊本+7.1%となり、観察地域3拠点すべてでプラスを見せている。ただ、単純に合計値が多い少ないだけで問題が解決するわけではないのが、頭の痛みどころ。

ちなみに【90日合計の降水量を見ると】、日照時間の短めな九州地域、そして中国四国地方で降水量も少ない傾向が確認できる。曇りの日が続いたということか。日も照らさず雨も降らずで、農作物にとってあまりよい状況とは言えない。

↑ 降水量90日間合計
↑ 降水量90日間合計

日照時間に限っていえば、年間累計値という観点のみではほぼ安心できる域にまで達している。しかし前回まで懸念したように、春先の日照時間の少なさと夏の豪暑が、秋に収穫される農作物に大きな品質上の影響を与えてしまっている。【野菜の発育不足の影響を実際に目にして】でも触れているが、野菜不足を肌身で感じている人も多いだろう。今後の気象動向にも十分注意を払った方がよさそうだ。


■関連記事:
【今年は113年に一度の高温な夏】



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