待つのがむしろ楽しくなる整理チケット
2010/10/31 06:55


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↑ 整理チケットには番号以外に、新書のダイジェストが
これはタイの出版社「A Book」が行った書籍販売のプロモーションの一つ。整理番号を発行するチケットに、番号以外に自社のロゴと、書籍(恐らくは新刊だろう)のダイジェスト・概要が分かる解説文を盛り込んだもの。順番待ちのために整理チケットを引いた人は、単なる無機質な番号とにらめっこするだけでなく、新しい書籍の発売を知り、概要に目を通すことになる。
そして実際に整理チケットを手にしたことがある人なら分かるはずだが、このような状況の場合、手持無沙汰になり、ちょっとしたものでも繰り返し目を通してしまうことが多い。結果として何度となく概要を読みふけることになり、自然と興味関心が高まり、紹介された書籍へ注目が集まるという次第。
この「仕組み」は、媒体こそ違えど【「トレインチャンネル」の秘密をちょっとだけのぞいてみる】で紹介した「トレインチャンネル」と似ている。他に目を向けるものがない状況下で「素材」を提供することにより、何度となく目を通し、注目してしまう。日常生活の中の「特殊環境」を見出だし、それをうまく利用する、非常に巧みな広告手法といえる。
単に「順番待ちをしているお客様を退屈させないように」との配慮だけなら、例えばショートストーリーや占い、トリビア的な雑学でも良い。それはそれで大きなニーズがあるはず。しかし今件では、「書籍の宣伝・公知のための要約紹介」というビジネスを持ち込むことで、メリットを享受できるサイドを増やしたわけだ。恐らくこの発券機は「A Book」社贈呈のもので、インターネット接続などの手段により、定期的に出力する要約文を差し替えるのだろう。発券機を置く側は無料(あるいは廉価)で有益な器材を調達できるし、「A Book」側は認知度の高いプロモーションエリアを手に入れることになる。そしてお客は当然、暇つぶしができる。みんながハッピーになれるという次第。

インターネットや携帯電話の普及で、紙媒体としての書籍や雑誌の売れ行きが落ち込んでいるのは、いくつもの記事で解説した通り。この状況は日本に限らず、インターネットや携帯電話が普及浸透しつつある多くの国で言えること。しかしすべての国が手をこまねいているわけではない。日常生活の様々な場面で、ちょっとした工夫とアイディアで、まだまだ出来ることはたくさんある。それを再確認させてくれる広告ともいえよう。
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