中卒は過半数・高卒は3割近くが1年内外で離職…学歴別に卒業後1年間と今現在の働き方の相違
2010/10/28 07:03
厚生労働省が2010年9月2日に発表した【「平成21年若年者雇用実態調査結果の概況」】は、2009年時点における若年層(15-34歳)の雇用実態を調査した結果によるもので、各企業における若年層の雇用状況などを把握し、各種若年者雇用対策の資料として用いるために作成されている。今回はそのデータの中から、先に【「正社員で入社・今も正社員」は6割近く…卒業後1年間と今現在の働き方の相違】でも解説した「卒業してから1年間」「今現在」それぞれの就労状況について、個人個人がどのような変化を見せたか・維持したかに関するデータのうち、「学歴区分によるもの」を抽出してグラフ化してみることにした。
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今調査は2009年10月1日から15日(個人調査は11月30日まで)の間に調査票配布・郵送返信方式にて行われたもので、有効回答数は事務所調査が9457、個人調査が15124人。なお各種用語においては次のように定義されている。
「常用労働者」…期間を定めずに雇われている、1か月を超える期間を定めて雇われている、日々・一か月以内の期間を定めかつ2009年8月-9月の双方で18日以上雇われているのいずれかに該当
「正社員」…直接雇用関係のある労働者のうち、正社員・正職員など
「非正社員(元資料では正社員以外の労働者)」…直接雇用関係のある労働者のうち、正社員・正職員などとされている”以外”の者(例 パート・アルバイト、契約社員等)
「フリーター」…家業(自営・農業など)、通学または家事のいずれも行っていない15-34歳の者で、かつ、当該事業所への応募前の1年間に、就職はしていたが、勤め先の呼称がアルバイトまたはパートである者
さて、以前の記事で説明したように、調査母体全体としては正社員で入社が出来た人は71.2%。そして「今現在も」正社員を継続できている人は57.9%という結果が出ている。逆算すると「正社員で入社した人の2割近くは、現在正社員以外の立場にある」ということになる。
↑ 最終学校卒業から1年間の状況、現在の就業形態別若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(再録)
これを個々の最終学歴別に区分したものが次のグラフ。黒い枠で囲った部分は卒業から1年間は正社員だった人を意味する。全体では57.9+13.3で71.2%が卒業後1年間は正社員だったということで、計算が一致する。
↑ 最終学校卒業から1年間の状況、現在の就業形態別若年労働者割合(調査時点で在学していない者のみ)(最終卒業学校別)
全般的に高学歴の方が正社員雇用率が高い数字が出ていることは、すでに【大卒正社員率は82.7%…学歴や年齢別の若者労働者の正社員・非正社員割合】で明らかにした通りだが、今回のグラフを見るとその内情がさらに大きな差の開きであることが確認できる。記事題名でも触れたように中学校卒業の人は過半数が「卒業してから1年の時点では正社員だったものの、その後離職し、現在では非正社員」となっている。離職後、現在無職の人はこのグラフには反映されていないので(今調査母体は「若年労働者」である)、やや甘めの概算になるが、中卒の若年層正社員の半数以上は就労期間1年以降に離職してしまっていることになる。
「正社員だったが離職して非正社員になった」人の割合は学歴と共に減少する傾向を見せる。大学以上では1割を切り、正社員として雇用される率だけでなく定着率も高いことが分かる。
やや救われるのは、黒い枠の無い青系統の区分、すなわち「卒業後1年間は正社員ではなかったものの、今は正社員」な人の割合。中学校卒業の人は合わせて21.0%にも達している。雇用流動性が高いとも表現できるが、ともあれ無職や非正社員から労使関係の上では安定度の高い正社員になれた人が多いこと自体は喜ぶべき話といえる。
学歴が高いほど正社員としての雇い入れ率が高いだけでなく、定着率が高いのは、中長期的な期待度が高い事を意味する。さまざまな経験を積ませて学ばせ、会社を支える人材としての価値を期待されているからこそ、引き留めようとしているわけだ。
一方、学歴が低い区分で「正社員としての新入社員の雇用率が低い」「正社員として入社した人の定着率が低め」「非正社員・無職だった人で現在正社員の人の割合が(大卒者などと比べて)高め」なのは、本文からの繰り返しになるが良く言えば「労働力の流動性の高さ」、悪く言えば「中長期的な期待をかける対象が少ない・あまり考えていない」ことを意味する。
雇用側からの視点で考えれば仕方ない話ではあるし、【日本の学歴・年代別失業率(2009年版)】などのデータも合わせて現実を反映したものと表現するしかない。だが「学歴」のみで個々の人材を評価することのないよう、各企業にも求めたいものだ。学歴のみでふるい分けはあくまでも確率論的な有効性までしか期待できず、場合によっては「人材」どころか「人財」を見過ごしてしまうかもしれないのだから。
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