スーパーやコンビニが増え、一般小売店が減る…単身世帯の買い物生活、過去25年間の移り変わり(最新)

2021/11/16 10:13

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2021-0812総務省統計局では2021年5月18日までに【2019年全国家計構造調査】の主要調査結果を発表した。今件調査は5年おきに実施されており、現状では直近分も含め6回分の値を取得することができる。そこで今回は【「高齢単身者のコンビニ離れ」…一人暮らしでの買物先の実情(最新)】で精査した「単身世帯の買物先」の変化を、今回発表分も含めて都合6回分、過去25年間にさかのぼり、その推移を確認していく。

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今調査の調査要目は先行記事【食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)】を参照のこと。

次以降に示すのは単身世帯における消費支出(税金や社会保険料をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)のうち、消費先が調査票上で明記されている金額のルート別金額比率。「その他」は具体的な事例として挙げられている店舗以外の店、例えば美容院、クリーニング店、問屋、市場、露店、行商およびリサイクルショップ、飲食店(レストラン、ファーストフード、居酒屋など)や自動販売機も含まれる。だが2014年分以降の調査では「その他」の値が不自然に高く、それ以前の調査結果とは異なる様相を示しているため、経年変化の確認が難しくなっている。そこで今回は全調査分において「その他」を除外して再算出をした上での結果で検証する。

また年齢階層別の区分だが、本来は30歳未満・30-59歳・60歳以上の3区分で検証するべきなのだが、2019年分について30-59歳の区分が非公開となっているため、経年推移の検証が可能な30歳未満と60歳以上のみに絞って検証する。

まずは30歳未満。

↑ 費目別支出金額の購入先別割合(単身世帯、30歳未満、「その他」をのぞいて再計算)
↑ 費目別支出金額の購入先別割合推移(単身世帯、30歳未満)

まず目にとまるのが「一般小売店や百貨店の減少と、スーパーの増加」。大型スーパーやコンビニ、昨今ではディスカウントストアや100円ショップの進出と、消費性向の減少で、普通の小売店がビジネス的に立ち行かなくなり、近所の店がシャッターを閉じる場面が増えてきたのが一因。そしてそれらの店と比べて大型店などの方が安く、短い移動距離でまとめて買物が行えるので手間もかからない。メリットが多く、そちらに足を運ぶようになったのも大きな要因。

一方で同じまとめ買いが可能であるにもかかわらず百貨店の割合が減っているのは、価格的な問題が大きいと思われる。また百貨店そのものの絶対数が減っている、容易に足を運べるような近場に無いのも原因。

気になるのはコンビニに関する動き。世間一般には「若者はコンビニを積極活用している」とのイメージがある。かつての「深夜帯のコンビニ営業への反対・自粛運動」では、反対派は「若者は深夜帯まで店舗あるいはその周辺を徘徊し、たまり場とするようになった。健全ではない状況を助長している」ことを反対理由に挙げていた。しかし今グラフを見る限り、利用金額の割合の面では、昔も今もさほど変わらないことが確認できる。

またネット通販の利用が大きく拡大し、代わりに量販店が減っている。購入時の利便性や品揃えの豊富さなど、ネット通販のメリットはいくらでも見出すことができる。もっともネット通販がシェアを奪った対象は商品構成から考察するに、ディスカウントストアだけでなく、百貨店なども含まれているのだろう。

続いて社会問題的およびマーケティング的には一番気になる60歳以上の単身世帯。多くは定年退職前後に配偶者と離別・死別した一人暮らしの人が該当する。勤労者世帯か否か、無職か否か(勤労者はあくまでも被雇用者を意味し、会社役員や自営業者などは勤労者に該当しない)までは問われておらず、それらの属性がすべて混じっている。

↑ 費目別支出金額の購入先別割合(単身世帯、60歳以上、「その他」をのぞいて再計算)
↑ 費目別支出金額の購入先別割合(単身世帯、60歳以上、「その他」をのぞいて再計算)

「一般小売店の減少とスーパーの伸長」の点では30歳未満と変わりはないが、この2系統だけで2/3近い支出を占めているのが特徴的。これは【6年連続経常利益をはじき出す「ダイシン百貨店」のレポートから、デパート不況打開の糸口を考えてみる】などで説明している通り、高齢者は移動の難儀さなどから多店舗での買物を苦手とし、可能ならば少数か所・自宅から短い距離にある場所で生活必需品を調達したいと考えているため。一般小売店は近所の商店街(=短い距離で済む)を意味するが、商品の値引きがされにくいことに加え、閉店が相次ぎ通えない店が増えてきたことを考えれば納得がいく。個々の用品を販売する店が集まった商店街の利便性が低下し、何でもそろうスーパーが近場に登場すれば、そちらを日常生活品の調達先のメインとして選ぶようになるのは、道理ではある。

「長距離の移動が苦手なら、ネット通販を利用すればよいのでは」との考えもある。しかし高齢者は一般的に他世代と比べると、インターネットを用いたサービスの利用が苦手なのは他の多数の調査結果から明らかになっている通り。今件でも計測項目がはじめて用意された2004年・2009年ともに0.4%でしかなく、直近の2019年でも4.9%にとどまっている。

他方、コンビニの利用がほんのわずかずつではあるが増加している点にも注目したい。価格がスーパーなどよりは高く、商品ラインアップもデパートやスーパーほどではないものの、日用生活品の取り扱い範囲も増えており、何より店舗数の拡大で「身近」さは増している。深夜営業などのメリットを享受する部分は無いが(高齢者は得てして早寝早起き)、単身高齢者の間にも、コンビニは少しずつその存在意義を高めつつある。



概要を世代別にまとめると、単身世帯の消費生活上の買物先としては次の通りとなる。

●30歳未満
・一般小売店とスーパーで約半分。スーパーの利用は増加中。
・量販店の利用も増加だったが、2014年以降は減少に。
・コンビニ利用率は大きな変化なし。
・ネット通販は確実に増加し、百貨店を超えている。

●60歳以上
・一般小売店とスーパーで2/3近く。スーパーの利用は大きな割合で増加中。
・百貨店は漸減。
・コンビニは少しずつ、確実に増加。
・ネット通販はわずかなものでしかない。

ショッピングカート繰り返しになるが、若年層のコンビニ利用額比率に増加の傾向が見られないのは興味深い。この点に関して食料の観点で見ると、その動きが顕著に表れており、厳密には食費の上でコンビニ経由の調達をひかえつつあるのが分かる。

若年層の生活が、とりわけ食生活の上で厳しさを増しているのは【食費の割合が減り、家賃負担が増加……一人暮らしをする若者のお金の使い道の変化をグラフ化してみる】をはじめ、これまで多数の記事でお伝えしている通り。定価販売のコンビニの利用をためらうようになるほど、一人暮らしの若年層の生活が次第に厳しさを増していることがうかがいしれよう。


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