「寝る子は育つ」とは言い切れない? 睡眠時間と体力テストの平均点との関係
2010/10/16 12:05
文部科学省は2010年10月10日、平成21年度体力・運動能力調査の結果を発表した。それによると「日常的な運動をしている人はそうでない人に比べ、体力の減退率が低い」、言い換えれば「日常的な運動をしている人は体力の面で若さを維持しやすい」という統計データが出たことは【日常的な運動は10歳単位で体力差を生みだす…運動頻度と体力テストの平均点との関係】で示した通り。今回は発表された統計データで「概要」で解説がなされかった項目の中から、「1日の睡眠時間と体力テストの合計平均点との関係」についてグラフ化してみることにした。
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今データは「平成21年度体力・運動能力調査」のうち、具体的データを収録した総合窓口【e-Stat】から取得したデータを解析したもの。具体的には「10.1日の睡眠時間別体格測定・テストの結果」から該当年齢区分のデータにおいて、体力テストの「合計点」における平均値部分を抽出していく。なお、得点基準は男女毎、6-11歳・12-19歳・20-64歳・65-79歳によって異なるため、今回は20-64歳の男女についてグラフ化している。
日頃の1日あたりの睡眠時間について「6時間未満」「6時間-8時間未満」「8時間以上」の三区分に分類した上で、それぞれの属性における体力テストの合計平均値の推移を集計、グラフ化したのが次の図。男女間で基準が異なるから男女の数字上の比較はできないが、男女でやや異なる傾向が見られるのが確認できる。
↑ 年齢段階別、1日の睡眠時間と体力テスト合計平均点の相対的比較(男子)
↑ 年齢段階別、1日の睡眠時間と体力テスト合計平均点の相対的比較(女子)
まず男性について見てみると、35歳以降は「寝過ぎの人は体力テストの成績が悪い」ことが分かる。今件データは相関関係を示しており、因果関係までは実証できないので、「寝過ぎると体力が落ちる」というよりは、「運動すべき時間を睡眠時間に充当しており、結果的に運動不足になる傾向がある」と見た方が良い。また「6時間未満」と「6時間-8時間未満」との間には34歳までは「6時間-8時間未満」にやや優位性が見られるものの、全般的にはほとんど変わらない関係にあることが分かる。男性の場合は体力の面で若さを維持したい場合、余分に寝るよりその時間を、体力維持の他の行為(運動など)に当てた方が良さそうだ。
一方、興味深い傾向を見せているのが女性。女性の場合は35-49歳までのイレギュラーな部分を除けば、一様に「6時間未満>6時間-8時間未満>8時間以上」の傾向が確認できる。「寝る子は育つ」というわけではないようだ(繰り返しになるが、あくまでも相関関係であり、因果関係ではないので要注意)。ところが35-49歳の時点では「8時間以上」の値が急激に伸びを見せ、40-44歳の区分では他の時間区分より良い結果が出ている。40-44歳だけが突出しているのなら「ぶれた」可能性もあるが、その前後の年齢区分も増加傾向にあるため、何らかの変移がこの年齢区分で起きている可能性を示唆している。
「女性の40歳前後」と「睡眠」。この2つのキーワードで思い出すのが、以前【男女の睡眠時間の転換年代「40代」について調べてみる】で示した、男性と女性の平均睡眠時間の変移。ちょうど40代を境に、男性と女性で平均睡眠時間が逆転する現象が起きている。
性別・年齢階層別平均睡眠時間(時間)(2008年分、再録)
今回も原因は分からないままだが、40代の女性においては、睡眠周りで大きな体の変化が起きているような雰囲気は感じられる。それが結果として、長い睡眠時間を得ている女性ほど、この年齢階層に限り、体力テストの結果も良い値が出ているのだろう。
今後も何か睡眠時間に関する調査結果が出た際には、今件について考察を加えてみることにしよう。
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