実は以前から減少中の外食費、増える中食…一人暮らしをする若者の食費構成の変化(最新)

2021/08/19 03:23

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021-0808気分転換、自分での調理が面倒だから、自ら作るのが難しい・珍しい料理を食べたくて、外出先で自前の食事を用意する機会がなく、さらには他人との時間の共有をメインとする形で、人々は食生活の中に外食を組み込んでいく。家庭持ちの世帯と比べて自ら調理した料理、つまり自炊による食事が少ないとのイメージが大きい若年層の一人暮らしの実情は、どのような状況なのだろうか。今回は総務省統計局が2021年5月18日までに発表した、【2019年全国家計構造調査】の公開値から、金額面などの観点で確認をしていくことにする。

スポンサードリンク


男性は減少、女性はほぼ横ばいな一人身若年層の外食事情


今調査の調査要目は先行記事【食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)】を参照のこと。

今回精査を行うデータは、一人暮らしの勤労者世帯のうち30歳未満が対象。その世帯を対象に、一か月の食料費項目の詳細を確認したものである。「外食」、「調理済みの食料(中食)」、そして「素材となる食料」「その他(調味料やお菓子、飲料、酒類など)」をまとめて「その他(素材食料)(≒内食)」と、合わせて三つに区分し、男女別に食料費全体に占める比率の変化をグラフ化したものが次の図。

↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成(男性)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の 費目構成(男性)

↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成(女性)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の 費目構成(女性)

「食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)」でも触れているように、男性の外食比率が女性と比べて一様に高い。これは女性と比べて男性の昼食時における弁当持参比率が低いこと、仕事から帰宅した時の夕食の自炊率は男性の方が低い(【一人暮らしのお料理事情・夕食自分で作ってる? 週一以上は四人に三人】)のが大きな要因。また同じ勤労状態にあるとしても、女性より男性の方が「付き合いの飲食」=外食の回数が多くなってしまうのも原因の一つとして考えられる。

↑ 一人暮らしの夕食の料理の頻度(再録)
↑ 一人暮らしの夕食の料理の頻度(再録)

また、中食比率は男女であまり違いがなく、男性で外食が女性と比べて多い分、そのまま「その他(≒内食)」が少なくなっている動きも興味深い。

中長期的な動きとしては、男女とも中食比率が増加している。ファストフード、コンビニ、スーパーなど購入経路は多様だが、自炊ではなく、また外食でもなく、出来あいものを調達して自宅で食べる中食のスタイルが定着しつつあることがうかがえる。調達できる環境が整備されているのも大きな支えとなっているのだろう。

また男性では中食・自炊が増え外食が減る傾向が強まる方向性を示しているが、女性は中食の増加分が外食と自炊で少しずつ食われていく形となっている。若年勤労単身世帯における、食生活の変容ぶりが、男女間で異なる様相にあるのは、注目に値する。ただし女性も解釈次第では、少しずつ外食が減っているとも読める。もっとも外食比率は40%前後で安定していると読んだ方が無理はないのだが。

金額ベースでの動きを見ると


上記のグラフは「食料費」に占める外食などのシェア動向。それでは額面そのもので見た場合はどうなるのだろうか。男女、そして年ごとに食料費は異なるので、それぞれの金額を算出。そして積み上げグラフにしたのが次の図。消費者物価指数にはほとんど動きがないので、経年による物価の変移は無視して問題ない。ただし直近の2019年分は直前に消費税率引き上げが実施されているため、その分の上乗せが生じている可能性がある。

↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成(男性、1か月、円)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の 費目構成(男性、1か月、円)

↑ 若年勤労単身世帯の食料の費目構成(女性、1か月、円)
↑ 若年勤労単身世帯の食料の 費目構成(女性、1か月、円)

まず最初に気が付くのは、男女で総額が大きく異なること。そして女性の総額にはほとんど変化がないものの、男性は年と共に減少傾向にあるのが確認できる(もっとも女性も今世紀に入ると減少に転じているが)。それぞれを詳しく見ると、

・「中食」は男女とも漸増。

・「その他(素材食料など)」はぶれが多少大きいが、一定額内に収まっている。

・「外食」は女性では数千円の幅で動きを見せているものの大きな変化はなかったが、今世紀に入ると減少方向に。ただし直近年では大きな増加。男性は前世紀から漸減を継続中。もっとも男性も直近年では大きな増加を示している。

・男性は「中食」、「その他(素材食料など)」などが横ばいあるいは漸増しているが、「外食」の大規模な減少がそのまま食費全体の減少につながっている。直近年で増えたのは「外食」と「中食」の大幅な増加から。

のが分かる。

動きとしては一番目立つ、男性における外食費の減少にはいくつかの理由が考えられる。家賃負担の増加、消費支出(≒可処分所得)の減少に伴い、一番最初に削りやすい外食費を削っている。外食そのものの相場が下がっている。世間一般的に他人との付き合いが疎遠になり、会食的な外食の回数が減った。などなど、複数の理由によるもので「これが理由で他は関係がない」のような、端的唯一の理由によるものではないと見た方がよい。さらには直近年で顕著なように、中食の環境が整備され、外食からシフトしたという動きもあるに違いない。

節約の際には真っ先にターゲットとされることから、「外食費が減少している」事案がクローズアップされている。しかし少なくとも若年単身勤労者においては、外食費の減少は前々から起きている動きに他ならない。昨今の流れはそれが継続しているに過ぎない、と見てよいだろう。


■関連記事:
【貯蓄率減少は本当なの? 家計の貯蓄率(単身勤労者世帯版)(最新)】
【収入と税金の変化(家計調査報告(家計収支編))(最新)】
【増える中食・内食、理由は節約や健康志向】
【米・パン・めん別に見た「中食や外食は増えているのだろうか」(最新)】

スポンサードリンク



このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS