食費の割合が減り、家賃負担が増加…一人暮らしをする若者のお金の使い道の実情(最新)
2021/08/18 03:11
総務省統計局は2021年5月18日までに【2019年全国家計構造調査】の主要調査結果を発表した。一人暮らしの日常生活をお金関連の観点から推し量ることができる、貴重な資料・データが多数盛り込まれているこのデータ群の中から、今回は「一人暮らしの若者が消費するお金の使い道の移り変わり」について、その実情を精査する。
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今調査は家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、今回は2019年10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。
今回精査するデータは、一人暮らしの勤労者世帯のうち30歳未満が対象。その世帯を対象に、一か月の消費支出(【エンゲル係数の推移(家計調査報告(家計収支編))(最新)】でも説明している通り、税金や社会保険料をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)が具体的にどのような項目に割り振られているのかを示したもの。取得可能なデータは1969年以降のものであることから、それ以降のものをすべて用いる。また個々の額が少数のため、「その他消費支出」独自の項目以外に「光熱・水道」「家具・家事用品」「保険医療」「教育」もまとめて「その他消費支出」に合算している。
↑ 若年勤労単身世帯の1か月平均消費支出の費目構成の推移(男性)
↑ 若年勤労単身世帯の1か月平均消費支出の費目構成の推移(女性)
まずは全般的な傾向について。昔から今に至るに連れて「食料」が減り「住居」が増えている。先の「エンゲル係数の推移をグラフ化してみる」の通り、いわゆる「エンゲル係数」が減少しているのが確認できる。食品価格の安定、下落、支出の多様化の他に、特に男性においては外食費の切り詰めが原因。もっとも男性に限れば、食料も2014年以降は増加に転じている。
「交通・通信」の増加は公共機関やガソリン代の値上げの他、【電話料金と家計支出に占める割合を詳しく検証】でも解説しているように携帯電話の使用によるところが少なくない。ただし男性は今世紀に入ってから比率がおおよそ漸減しており、切り詰めの対象としていることが分かる。
一方、「住居」の割合が大きく増加しているのも確認できる。一般に「家賃は収入の2割から3割が家計のバランス的に優れている」とされている。今グラフの割合は「消費支出」であり、「収入」ではない(収入は今件消費支出以外に、税金などの非消費支出や貯蓄などにも割り振られる)ことを合わせて考えると、実際の対収入比率はもう少し下がるが、負担が大きくなりつつあることに変わりはない。
また、女性に比べて男性の方が「食料」の割合が大きく、また経年による減少率も大きい(2014年以降は増加しているが)。これは上記でも触れているのとともに、詳しくは機会を改めて解説するが、単身若年男性は外食に頼る面が多く、同時に切り詰めの対象として筆頭に挙げられているからに他ならない。
元々女性は【「家賃高い!」男性半数 女性7割】や【家賃の面から大学生の収入と生活の厳しさをグラフ化してみる】などでも解説の通り、セキュリティなどに気を使う必要があるため、どうしても家賃そのものが高い傾向となる。そして男性よりも実収入は低いため、結果として消費支出における住居費の割合が高いものになってしまう。そのような実情の中で、女性の住居費比率が減り、男性とさほど変わらない状況となりつつあるのは、憂慮すべき動きといえる(直近2019年では男女でさほど変わらない割合となった)。
なお直近の2019年では男女とも、消費支出の1/4以上が住居費で占められる結果に。家賃などは半ば固定費でもあり、節約することは難しく、他の消費項目と比べても家計に対するプレッシャーは大きい。税金や保険と同じようなものとの認識もあながち間違っていない。お財布事情の厳しさは察するに余りあるといえよう。
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【貯蓄率減少は本当なの? 家計の貯蓄率(単身勤労者世帯版)(最新)】
【収入と税金の変化(家計調査報告(家計収支編))(最新)】
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