【更新】会社側が払える賃金と勤めたい人が望む賃金(2010年10月更新版)

2010/10/07 07:07

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給料先に【職種別有効求人倍率(2010年10月更新版)】で有効求人倍率に関するデータを更新し、多少ながらも求人倍率の面では雇用市場は改善を見せていることを記した。それでは賃金の面ではどうだろうか、ということで2009年2月に作成した【会社側が払える賃金と勤めたい人が望む賃金】を再構築してみることにした。



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このグラフは「雇う側」と「雇われる側」それぞれが希望している賃金を職種毎に照らし合わせてみたらどうなるのか、というもの。データそのものは東京都の【ハローワーク統計データ】から取得している。ここには各職種毎に求職側は平均希望賃金、求人側は希望賃金の上限と下限が記されている。平均値や中央値は残念ながらデータが無い。

各賃金についてだが、求人側の「下限」が「上限」以上になることはありえないし、今データでは求人側の「下限」が求職側の「平均値」を上回ることも無かった(前回記事では「求人側下限」の数字は表上に明記しなかったが、今回は資料性のことも考え記述しておく)。

具体的グラフと、そこから見えてくる傾向の箇条書きは次の通り。

↑ 東京都職種別求人・求職賃金(2010年8月、一般常用)(太文字はその職種の中で「求人側上限」「求人側下限」「求職側平均」のうちで高い方の金額)
↑ 東京都職種別求人・求職賃金(2010年8月、一般常用)(太文字はその職種の中で「求人側上限」「求人側下限」「求職側平均」のうちで高い方の金額)

・全体的には「求人側賃金上限」の方が「求職側の求めている賃金平均」よりも高い。賃金面では、企業側がかなり譲歩していると考えられる。
・「事務的職業」「販売の職業」「運輸・通信の職業」「保安の職業」は、「求職側の求めている賃金平均」と「求人側の上限賃金」がほぼ一致している。
・「IT関係の職業」「専門的・技術的職業」のような特殊技術が求められている職種、「農林漁業の職業」のような従来なり手が少ない職種では、「求人側賃金上限」の方が「求職側の求めている賃金平均」よりもかなり高い値を示している。求職側のやる気と技術と条件がマッチすれば、賃金面ではハードルは容易にクリアできる雰囲気。
・「管理的職業」では「求職側の求めている賃金平均」が、「求人側賃金上限」をはるかに超えている。求職側の賃金面での妥協を許さない状況が見て取れる。
・「福祉関連の職業」は「求人側下限」と「求職側平均」がほぼ一致し、「求人側上限」がそれを大きく上回っている。「保安の職業」も状況的にはそれに近い。

それぞれの職種の賃金面からの特徴が見受けられ、非常に興味深い。特に最後の2項目は特異的。まず「管理的職業」では、部課長のような中堅管理職が何らかの形で退職し、再就職を求める際、同じような管理的職業に就こうとするものの、「手取りは出来るだけ以前の職のものに近い形で」と求めている様子が手に取るように分かる。

また「福祉関連の職業」では求職する人における希望賃金がほぼ満たされているのが分かる……が、求職者そのものが求人数と比べて少ないため、求人倍率はこの両職種ではかなり高い値になっているのは、先の記事でお伝えした通り。

↑ 東京都職種別有効求人倍率(2010年8月、一般常用)
↑ 東京都職種別有効求人倍率(2010年8月、一般常用)(再録)

もちろん各職種・職業には細分化された業態があり、さらにそれぞれの職種・業態でも具体的求人案件によって「仕事の内容」と「その仕事における対価」は多種多様。例えば「保安の職業」において「求職側の求める賃金平均」と「求人側の賃金下限」にさほど差がないからといって、この職業の大多数で求職側に賃金上の不満が無いわけではない。あくまでもこのグラフは、職業・職種別に見た傾向に過ぎないことを書き記しておく。

ずいぶんと賃金市場は下落しているようで
さて、少なくとも求職・求人間の賃金におけるせめぎ合いの状況は先の2009年2月とさほど変わりがないことは分かった。それでは肝心の「金額」そのものの絶対額はどのような変化を見せているのだろうか。月が異なるので季節属性を考慮すると、あくまでも参考値でしかないが、非常に明確な結果が出ている。

↑ 東京都職種別求人・求職賃金(一般常用)(2009年2月から2010年8月の変化額)
↑ 東京都職種別求人・求職賃金(一般常用)(2009年2月から2010年8月の変化額)

ほぼすべての項目で、前回と比べて相場が落ち込んでいるのが確認できる。要は先の記事で「求人倍率が少々改善されてる。雇用情勢は回復の兆しを見せている」としたが、雇用率ベースではその通りであるものの、賃金ベースでは悪化していることを意味する。無論、今件は2009年2月との比較・求人倍率は2010年1月との比較で、その差には1年ほどの開きがあるが、下落していることに変わりは無い。

特に「管理的職業」では求職側の大幅な額の減退があり、「妥協しないと職そのものにありつけない」とする求職側の思惑が見て取れる。また、唯一「福祉関連の職業」では求人側の額が増加している。これは圧倒的な人材不足や、各方面からの同職業における低賃金への非難を受けてのものと考えられる。

いずれにせよ、「求人倍率の値が改善したので、雇用情勢は良くなった」と単純に考えるのは早計。「職に就けない、つまり賃金ゼロと比べればマシ」という意見も合わせ、一人ひとりじっくりと考えることが求められよう。



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