意外なモノで「働き過ぎかな」と我に帰らせる転職会社のダイレクトメール
2010/09/29 07:21
郵便ポストを山盛りにさせるダイレクトメールは、ハガキや封筒詰めのものがほとんど。送付先次第では一読する場合もあるが、大抵は封も切らずにシュレッダー行きとなる。しかし中には新商品のサンプルや気の効いたアピールアイテムが収められていることもあり、「おや?」と気を引きつけられることもないわけではない。今回紹介する広告手法は、チラシやガイドブックの類は一切同封せず、ビジネスマンなら良く使うアイテムにちょっと工夫をしたものを送り、受け手に考えさせる時間と決断の選択肢を与える、センスにあふれたダイレクトメールである(【I Beleive in Advertising】)。
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↑ 段ボールで固定された、名札ホルダー。名前は「お客様(VISITOR)」。ぱっと見では意味が分からないが、よく目を凝らしてみると……
これはイギリスの転職支援会社【PerfectMarketingPeople】が2009年秋に展開したダイレクトメール。この会社では中間管理職から経営幹部を対象とした人材の仲介を行っている。そして今件のメールもまたそのような立場にある人に向けて発送された。
中身はごく普通の名札ホルダー。セキュリティ用に会社の内外を行き来する際に持ちられるもので、首からぶら下げたり胸ポケットに挟んで使うアレだ。その名札には「お客様(VISITOR)」と書かれている。外来客などが社内に入る時、侵入者と間違われないように受付・窓口でもらい、取り付けるタイプ。これだけなら「何でこのようなものが?」と不思議に思うだけで終わってしまう。
しかしふと目をその上にやると、ホルダーの利用者名には「あなた自身」、来訪先には「妻と子供」、そして来訪時間は「午後11時」とある。ここで多くの人はこの名札ホルダーが何を意味しているのかが理解できる。つまりこのホルダーには「お仕事がお忙しいのは良いのですが、今のあなたは妻や子供達にとって、家庭を支える父親では無く”深夜に来訪するお客様”に過ぎなくなっていますよ。この名札ホルダーが必要でしょうね」という、PerfectMarketingPeople社からのメッセージが刻まれている。もちろん具体的には一言も書かれていないけれども。
そして下にはさり気なく「もしくはPerfectMarketingPeople社のサイトにアクセスするか、あるいは電話を下さい」とある。もしこの名札ホルダーを利用するような状況に嫌気がさしているのなら、我々に相談下さいということだ。
このダイレクトメールは主に野心的・行動的な気概を持ち、最近オーバーワーク気味と感じている、あるいは仕事の割には手取りが少ないと不満を持ち、転職機会をうかがっている人をターゲットにしている。「そんなに働いて、割もあまり合わず、家族からはお客様扱いされて、そのままでいいの?」という名札ホルダーに秘められた無言のメッセージに心を動かされた人は多く、このダイレクトメールの展開で、従来と比べて320%もの問い合わせが寄せられたそうだ。
まずは名札フォルダーそのもので関心を引き付け、そしてそれに深いメッセージを込め、受け取った本人に解読させる。意図を理解し「なるほど」と共感を覚えた時には、もう送り手側の手のひらの中にあるわけだ。どんな事例でも使える方法では無いが、非常に優れたセンスで創られたダイレクトメールといえよう。
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