米リセッション2009年6月終了宣言・期間は戦後最大の長さと確認
2010/09/21 09:19
全米経済研究所(NBER、National Bureau of Economic Reasearch)は現地時間の2010年9月20日、アメリカ経済の景気サイクルを判断する材料の一つとなる「リセッション(景気後退期)」について、2009年6月に終了・脱却したとの判断を明らかした。これで【「アメリカは2007年12月からリセッション入り」専門機関が正式発表】にもあるように、2007年12月から始まったリセッションは18か月経過したことになる。この長さは第二次世界大戦後の不況の中で最大の長さをみせることになった(【発表リリース】)。
スポンサードリンク
↑ リセッション終了を報じるAP伝。
詳しくは【「リセッション」を再確認してみる】で解説しているが、「リセッション」とは非営利・半公的・中立の経済研究機関NBERが認定する(米)経済の不況期を意味するもの。NBERではリセッションについて、
2.(景気の後退が)数か月以上の持続的なものであること
3.実質GDP、鉱工業生産、雇用、実質個人所得(移転所得をのぞく)、製造業・卸売・小売の実質販売高などで明示的な下降が見られること
の3要素を考慮した上で突入を判断している。また、判断には十分に慎重な態度で臨んでおり、今回のように実際の判断期日から相当経過した上での発表となることが多い(前回のリセッション終了は2001年11月だったが、その発表は2003年7月に入ってからだった)。
過去のリセッション期の推移は次の通りで、今回一番下の期が追加されたことになる。
・1902年9月-1904年8月(23か月)
・1907年5月-1908年6月(13か月)
・1910年1月-1912年1月(24か月)
・1913年1月-1914年12月(23か月)
・1918年8月-1919年3月(7か月)
・1920年1月-1921年7月(18か月)
・1923年5月-1924年7月(14か月)
・1926年10月-1927年11月(13か月)
・1929年8月-1933年3月(43か月)
・1937年5月-1938年6月(13か月)
・1945年2月-1945年10月(8か月)
・1948年11月-1949年10月(11か月)
・1953年7月-1954年5月(10か月)
・1957年8月-1958年4月(8か月)
・1960年4月-1961年2月(10か月)
・1969年12月-1970年11月(11か月)
・1973年11月-1975年3月(16か月)
・1980年1月-1980年7月(6か月)
・1981年7月-1982年11月(16か月)
・1990年7月-1991年3月(8か月)
・2001年3月-2001月11月(8か月)
・2007年12月-2009年6月(18か月)
もっとも長いのは「世界大恐慌」時における1929年8月-1933年3月の43か月。逆にもっとも短いのは1980年1月から1980年7月における6か月。ただし後者の場合、直後の1年後に再びリセッションが起きているので、実質的にはこの2期はまとめて考えるべきかもしれない。また、冒頭でも触れたように、戦後に限ればこれまで「1973年11月-1975年3月」「1981年7月-1982年11月」の2期が16か月で最長だったが、今回のリセッションはそれを2か月上回る18か月となった。
リセッションの宣言は(脱却宣言も含め)直接的には何も影響を及ぼすものではない。日本で例えれば「梅雨入り宣言」のようなもので、宣言をしたから雨の降る量が2倍に増えたり、カビの繁殖度が加速度的に大きくなるわけではないのと同じ。
もちろん心理的影響は少なくない。突入時では「景気後退」を多くの人が認識し、消費行動はますます萎縮していく。何らかの経済判断をする際にも、個人個人の判断要素において「リセッション入りしているから」という項目が加わり、マイナス要因になる。逆に「脱却宣言」がなされたことで、これらの心理的足かせが除かれ、プラス要因となることは十分に可能性がある。
但し今回の「リセッション脱却宣言」の文中には、「2010年8月27日に発表された第2四半期の実質国内総生産(GDP)改定値を見てようやく判断した」「リセッション脱却判断は今日までの回復傾向の強さ、そして長さに基づいている」「しかしがら今回の宣言は、アメリカの景気が通常の状態に回復したことを意味しない。谷が終わり回復・拡大期の様相を見せているだけで、『経済の拡大初期においては、一般的に経済状態そのものは標準よりも下回るレベルで推移する』」など、まだしばらくはアメリカの経済が本調子に戻ることなく低空飛行状態を続けるであろう文言が確認できる。
最悪の状態は脱したものの、いまだに失業率は高いままにあり、経済状態も明確な躍進傾向にあるとは言い難い。今後も注意深くアメリカ経済の動向を見守るべきであることに違いは無い。
スポンサードリンク