美味しさの歓喜がそのまま伝わってきそうなハンバーガーの広告
2010/09/28 05:03
以前【文字に「魂」を吹き込む技術「キネティック タイポグラフィ」(Kinetic Typography)】でも解説したが、文字列に色々な工夫をして相手に分かりやすく表現する手法を「タイポグラフィ」と呼ぶ。例えば【擬音をそのまま形にしてみたら……】で紹介した事例のように、階段を登る時の「ギーッ(CRREEEEAK)」をそのまま階段自身のステップにしてしまうという具合だ。対象物をそこから発せられる音・擬音でそのまま構成することで、静止画にも関わらず音が発せられ、動きすら見ている人に覚えさせる(場面を脳内再生させる)効果を持つ。今回紹介するのも、その手法を用いたもの。自社商品のハンバーガーなどがいかに美味しいかを、言葉通り「見た目で」分かってもらおうとしたものだ(【I Believ in Advertising】)。
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↑ ご自慢のハンバーガー。「美味しい」「シャクシャク」などの賛美の表現や美味しさを表すような擬音で構成
これはドイツで2010年7月に展開されたバーガーキングの広告。上下のバンズは茶色、ハンガー具の部分はこげ茶、トマトは赤、ケチャップはやや濃い赤、レタスが緑、玉ねぎが白、ピクルスが黄緑色をしており、色と形から、ハンバーガーのどの部分かは容易に想像できる。そしてそれぞれの部位を、食べた時の賛美的な言葉で創り上げているのがポイント。一番上の「Lecker」は「美味しい」、一番下の「Finger abschleck」は「指で舐めちゃいたい」、中央右側の「Knackig」は「シャクシャク」、「Delikat」は「繊細な味わい」など、口にした時の感想や擬音がそのまま文字として表現され、そのまま部位を構成している。
一事が万事このような具合。他にもポテトフライとタコスのバージョンがあるが、いずれも「色と配置で商品そのもののそれらしさ」を示しつつ、擬音や美味しさを表す歓喜の表現でその商品自身を形作っている。
↑ フライドポテトとタコス。「GESCHMACKS CUP」は「美味しいモノが詰まっているカップ」か
似たような手法としては各材料をそのまま材料の名前で示す方法がある。例えばポテトフライなら「Kartoffel」という具合か。しかしそれでは少々味気ないし、食べている時の美味しさが伝わりにくい。各写真に散りばめられている「美味しい」などの味わいを伝える言葉や「もふもふ」など口にする時の擬音を見定めて、一つひとつ頭の中で読んでいくうちに、いつの間にか自分自身がハンバーガーやポテトを食べているような気分にさせられる。いつの間にか食事のシーン、しかも美味しさがダイレクトに伝わるこれらの商品を口にしている場面を黙読させられているようなものだ。
構成要素の文字列をあまりに難しいものにしたり、欲張って詰め込んでしまうと、第一印象で読むのを止めてしまうため効果が薄れてしまう。適切な大きさや文字列の配置が難しいが、うまく行った時には効果的なアピールができるに違いない。
ただし残念、というよりはこのタイプの広告共通の弱点としては、同じ言語圏でしか通用しないこと。今件はドイツ語なため、ドイツ語が分かる人以外には「ああ、そういうタイプの方法使っているのね」で留まってしまい、美味しさ・食べるシーンの脳内再生までには至らない。こればかりは残念だが宿命としか表現のしようが無い。
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