アクセルを踏むたびにハッとさせられる広告
2010/09/09 07:03
以前【並べられた肖像画を見てハッとさせられる交通安全のチラシ】などで、間接的な比喩(ひゆ)表現を巧みに使い、「スピードの出し過ぎ」や「シートベルトの締め忘れ」に対する警告を行う交通安全ポスターを紹介した。直接の事故現場の写真と違い、この類のチラシ・ポスターは、その意図するところに気がついた瞬間「はっ」となり、改めてメッセージが胸に刻まれるのが分かる。今回紹介するのもその類の一つで、ルーマニアの警察が自動車雑誌と共同して制作した、雑誌用の広告。一見、何の変哲もない自動車の「ある部分」の写真のように見えるのだが……(【Creative Criminals】)。
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↑ ぱっと見は自動車のブレーキやアクセルペダルのようだけど……
ぱっと見はごく普通の自動車のペダル。ドライバーたちは常にお世話になるものの、凝視することはめったにない。しかし良く見直してみると、右端のアクセルペダルの形が「西洋風のカンオケ」になっている(『ドラゴンクエスト』やドラキュラが出てくる映画で、この形をよく見たことがあるハズ)。そして左上に目をやると、そこには「スピードを上げれば上げるほど、”そこ”へ早くたどり着けますよ」と書いてある。
そのメッセージを読み、はじめて「アクセルを無茶に踏み込んでスピードを出し過ぎると、カンオケ行きになる、ということか……」と、そしてアクセルペダルの形の意味に気がつくわけだ。オマケに左下には「死に急ぐな(「生」を選ぼう)」とあり、スピードの出し過ぎに注意することに対して、さらに念を押している。このポスターを見たドライバーは、アクセルペダルを踏むたびに、足元のペダルがカンオケ型(=あの世への直行便)でなくて良かったと安堵し、同時に調子に乗って思いっきりアクセルを踏み込んでスピードを出し過ぎることを躊躇(ちゅうちょ)するに違いない。
今広告は西洋のカンオケが独特の六角形をしているからこそできたもので、日本では直方体がほとんどのため、同じコンセプトのものを創るのは難しい。あるいはもう少しカンオケの形に似せた長方形のペダルを創り、やや上の部分に「窓」を設けて色を塗ると分かるだろうか。ともあれ、シンプルなデザインの中で巧みに、そして強烈なメッセージを添えることに成功した、素晴らしい作品といえよう。
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