再就職するも満足感は……米不景気下で再就職を果たした人たちの心境
2010/09/06 04:50
先日【米不景気下の社会情勢】と【米不景気下で起きる「悪い事」とそうでないこと】で、調査機関PewResearchCenterの調査データを元に、アメリカにおける失業者の心境や取り巻く環境の変化について紹介した。先日同調査機関から、似たような調査結果として「リセッション(不況期)中に再就職した人たちの状況変化」に関するデータが公開された(【Most 'Re-employed' Workers Say They're Overqualified for Their New Job】)。今回はその調査結果から2つほどデータをピックアップし、紹介してみることにする。
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今調査は2010年5月11日から31日にかけてアメリカ国内に住む18歳以上の人に対し固定電話・携帯電話経由で(RDD形式にて)行われたもの。固定電話経由は1893人・携帯電話経由は1074人、計2967人。
リセッション中に失職し、運よくそのまますぐに再就職口を見つけられる人もいるが、大抵はあちこち就職口を探すことになる。中には現時点での自分の立ち位置におけるアプローチに、限界を覚える人もいるだろう。調査母体のうちリセッション中に失職し、再就職が出来た人に対し、次のようなことを実際に行ったり真剣に検討した人の割合が次のグラフ。検討したのみと実働した人の区分データがないのが残念だが、さまざまな人生の決断に迫られていたことは分かる。
↑ 再就職者のうち失職中に実際に行ったり、真剣に考えた人の割合
特に「求職の分野変更」は、考え方によっては自分自身の個性や特性を半ば否定することにもなりかねない。前職で10年単位の長きに渡って靴職人の道を歩んできたのに、それをあっさり捨てて建設作業員の職を求めたり、経理の資格や実歴を持っているにも関わらず、単なる事務職員としての求人を探すのが良い例だ。
このような妥協……というよりは「まだマシな選択肢への決断」をしている人がいるという状況が、次の結果を生み出しているのかもしれない。こちらはリセッション期間中に失職し再就職した人と、失職せずに現職を続けている人双方における、「仕事に満足しているか」「自分らしさ、生きがいを感じているか」という問いへの回答だが、いずれも再就職した人の方が回答率が低い結果が出ている。
↑ 再就職者・未失職者間の、満足感と仕事からの「自分らしさ」比較
例えば特殊な能力を認められてヘッドハンティングされ転職した場合、モチベーションは上がるし新しい職場で満足を覚える人も多いはず。しかし不景気で止むなく失職し、少なからぬ場合において妥協の結果再就職をした場合、「失職期間を重ねるよりはマシだが」という重しが常に肩に覆いかぶさる。
例えるなら、大学受験でどうしても入学したかった第一志望校に落ち、家計の事情から浪人生活ができないため、止むなく滑り止めの大学に入ることになったようなもの。大学生活を送れることには満足しなければならないが、第一志望校での生活をイメージすると、どうしても気落ちしてしまうのは仕方の無い話。
再就職は出来たものの「モチベーションが落ちた」彼ら・彼女らがそのやる気や自分らしさを取り戻すことができるのか。一朝一夕では難しいと言わざるを得ない。何しろ現在の経済状況では下手をすると、その「不満足さを覚えている職場環境」からすらも、再び解雇されてしまう可能性が低いとはいえないのだから。
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