【更新】グリーとディーエヌエーによるテレビCMの多さの「なぜ」を”もう少しだけ”考えてみる
2010/08/28 18:00
先に【グリーとディーエヌエーによるテレビCMの多さの「なぜ」を考えてみる】で、携帯向けソーシャルメディアを展開する2社【グリー(3632)】と【ディーエヌエー(2432)】のテレビCM出稿に関する一考察を掲載したところ、多数のご意見をいただくことができた。そこで今記事では補足データと共に、ほんのもう少しだけ当方独自の検証を加えてみることにする。
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●グラフ化して分かる両サービスの会員構成の変化
まずはグリー運営のGREEと、ディーエヌエー運営のモバゲータウンに関する、会員数や会員の年齢階層比に関するデータ。特にフォーマットが定まっているわけではなく、各社ばらばらな提供形式なので、グラフもかなりあいまいなものとなっている。具体的には
・モバゲータウン……以前は会員数が区切りのよい人数を突破する毎に、最近では四半期決算短信で時々。10代・20代・30代以上の区分
という具合。
ともあれまずはグリー運営の「GREE」について。2008年6月分のデータがあるのは、2009年6月時点で「前年同月比較」のデータがあったため。連続性に欠けるが、参考値として掲載してある。また、会員数推移のところは実在する数字を元にグラフ作成ソフトの機能を使い、概算値で折れ線グラフにした。公的データを元にしたものの、このグラフ自身が公的な位置づけを持つわけではないので注意してほしい(これは「モバゲータウン」のも同様)。
↑ GREEの会員年齢構成比
↑ GREEの年齢階層別会員数推移(概算・推定あり)
GREEのデータは比較的新しい2008年半ばぐらいからしかないので、立ち上げ当初からの「10代・20代の若年層が大半を占める」状況が確認できない。ただ、グラフの範囲内で見ると、元来GREEを支えていた10代の伸び率が大人しいものとなり、20代以降が2009年中半以降大きく伸びを見せているのが分かる。とりわけ40代以上の会員数と18歳未満の会員数が逆転した2009年後半期は、一つのターニングポイントといえる。
続いてディーエヌエー運営の「モバゲータウン」。「GREE」以上にデータの公開タイミングが不規則なため、特に会員構成比のグラフの横軸が期間的に妙な感じになってしまっている。各項目軸は時間的に等間隔では無い事にくれぐれも注意してほしい。
↑ モバゲータウンの会員年齢構成比
↑ モバゲータウンの年齢階層別会員数推移(概算・推定あり)
データの期間間隔が不ぞろいのため、そして年齢区分が大雑把なためなのかもしれないが、特に会員数推移では大きな動きが見える。すなわち、本来「モバゲー」を大きくけん引していた10代会員の伸びは2007年後半時点ですでに緩慢なものとなり、2008年以降は20代、そして2009年後半以降はそれに加えて30代が主流になっている。特に2009年後半以降の、30代以上の伸び率は著しく、10代会員数をすでに超え、20代に迫る勢いでもある。
●テレビCMの動向
色々と確認したところ、「モバゲータウン」がテレビCMを打ち出したのは2007年2月(該当プレスリリース(http://blog.dena.ne.jp/press/archives/2007/02/sns_300.html))、「GREE」は2008年5月(【該当プレスリリース】)。「GREE」ではテレビCM開始前のデータが無いので比較はできないが、「モバゲータウン」では明らかにテレビ効果のものと思われる上昇が確認できる。
そしてテレビCMの展開が年齢階層比に与えた影響だが、広報資料からの言及では直接確認することが出来なかったものの、各報道への問いに応じた広報部のコメントをまとめると、
(幅広い年齢層でユーザーが増加していることに対し、GREE、2008年5月、【C-NET】)
・「テレビCMをきっかけに、性別や年齢関係なく幅広い層の新規会員が増えた。20代と30代が主要ユーザーであることには変わりないが、07年末に9%だった40代以上の中高年会員が最新10年3月には、17%と大きく増加している」
(2010年6月、[BIGLOBEニュース])
・「元々10代のユーザーが多く、若年層メディアという捕らえ方をされていましたが、ここ数年はテレビCMの影響もあり、20代-30代のユーザーが徐々に増えてきています。2006年11月の時点で70%を占めていた10代のユーザーが現時点で45%に、20代が38%、30代以上が17%になっています。いわゆる大人のユーザーにも利用してもらうことで、メディアとしての広がりが出てきかなと感じています」
(2007年12月、【ケータイWatch】)
などが確認できる。要は、これまであまりカバーできなかった20代以上の層にも大きな告知効果を得られたというわけだ。
元々GREEもモバゲーも、10代の口コミで大きなスタートダッシュを確保したサービス。しかし口コミは概して同年齢層に広がるもので、10代の口コミ先が20代・30代となることはあまり想定できない。さらなる飛躍を求め、10代より上の年齢階層、いわゆるF1・M1層(20-34歳の女性・男性)のハートをつかむため(そして10代層にはテレビを媒介としたさらなる口コミに期待して)、テレビCMを展開したものと考えれば道理がいく。さらに昨今の両社のテレビCMに登場するタレントたちを見れば、まさに彼ら・彼女らをターゲットにしていることは容易に想像できよう(テレビCM放送回数における2010年7月の関東地区でのトップはベッキー嬢。もちろんあのグリーのCMによるところが大きい)。
●40代以上の増加はタナボタ?
興味深いのは(「モバゲータウン」は「30代以上」くくりで全部まとめてあるので不明だが)「GREE」側で40代以上の会員が目覚ましい伸びを見せていること。CMに登場するタレントたちとの相性を考えると、40代以上の層にマッチしているとは言い難い。出稿側もメインターゲットとしては考えていないように思える(40代以上をメインにするなら、もっと彼ら・彼女らになじみ深い俳優を使うはず)。
これは当方の推測でしかないのだが、40代の層の間では、何度となく繰り返し放送される「GREE」や「モバゲータウン」のCMに、あまり興味はないのだがついつい気になって試してみたら……というパターンが増えているのではないだろうか。内容的にテレビCMそのものに対する注力度は20代・30代前半と比べれば低いが、テレビ「そのものへの注力度」が高く、繰り返し見ることで、大きな効果が得られるという次第だ。
だとすれば、F2・M2層(35-49歳の女性・男性)の大幅増は、グリーやディーエヌエーの立場から見れば、半ば棚から牡丹もち的なところがあるのかもしれない。
ただしこれはあくまでも当方の推論に過ぎない。はじめから「実はF2・M2もメインターゲットにしていましたよ」という意図があるかもしれないし、「そこまで深くは考えて無かったですね」というあたりが正解かもしれない。いずれにせよ、ソーシャルメディアへの注目が集まり、競争も激化する中で、今後ますます両社のテレビCMは熱い視線が注がれるに違いない。
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