「本物そっくりな色」をシンプルに表した広告
2010/08/30 07:16
ペンキなどをはじめとした「色」を商材とする事業にとって、重要な要素は「どれだけ本物らしい色を再現できるか」にある。顧客から「壁にうちの自慢のリンゴジャムの絵を描きたいので、このジャムと同じような色のペンキが欲しい」と頼まれ、微妙にくすんだ色を調合して商品イメージを台無しにしてしまっては、今後のビジネスに期待はできない。「うちのペンキなら本物と間違えるくらいにリアルな描写が出来ますよ」と自信たっぷりに、しかも極めてチープにアピールし、見た人も「なるほど!」と納得できるのが、今回紹介する【Dulux社】の広告だ(【Creative Criminals】)。
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↑ 「ここまでウリ二つに表現できるのか!?」「えーと……」
色とりどりの果物が並べられた果物屋さんの店先。そこに会社のロゴマークやカラー指定などが入った紙の枠を持参し、果物たちの上に覆いかぶせて撮影するだけ。カラー指定部分には実際の果物たちの色のカラー番号が描かれていて、ぱっと見では「本物そっくりの色で描かれた絵を、描写元の果物の上にかぶせてある」ように見える。「なんてリアルな色使いなんだ」と驚くかもしれないが、それもそのはず。目の前にあるのは本物の果物たちなのだから、リアルで当然。赤い果実は枠から少々はみ出ているので気が付きやすいが、オレンジっぽい方はボンヤリとしているとしばらく気がつかないことだろう。
実物を見せることで「本物と瓜二つに見えるくらいの色を再現できますよ」と間接的に表現するのと共に、「ペンキの広告なのだから、どれだけ色が本物そっくりかをアピールするに違いない。だから目の前にある枠の中の果物たちはペンキで描かれた絵なのだろう」という思い付きを逆手にとって錯覚させる、そしてその錯覚を広告に直結させる、シンプルかつ安価で済む広告といえる。この広告、美術学校の学生によるアイディアとのことだが、メッセージ性もしっかりしているし、良く出来た作品と断じることができる。
やや余談ではあるが。Dulux社は当然ながら「色」には並々ならぬこだわりを持ち、さまざまなプロモーションを展開している。次に紹介する動画もその一つで、フランス、ブラジル、イギリス、インドの各地で、薄暗い街並みを明るく塗りあげていき、世界を変えていこうというメッセージを添えている。
↑ Dulux Walls Ad - Director's Cut。
この動画に登場しているのはすべて現地の人たちで、役者の人たちでは無い。自分達の家などを「色で変えよう」という人たちによるもの。心ときめくようなBGMと早送りで彩られていく街並みに、言葉では表現できない感情の高まりと、「色」の底知れぬパワーを感じさせるのは当方だけではあるまい。
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