新卒採用企業、やや増加だが多数は「未定」・正社員はまだ過剰
2010/08/25 19:30
厚生労働省は2010年6月4日、同年5月における労働経済動向調査の概要を発表した。それによると同年5月1日の時点で、平成23年新規学卒者の採用予定数が平成22年を「上回る」と回答した企業は、高卒対象企業で13%・大卒で13-14%であることが分かった。「下回る」と回答した企業9%を多少ながらも上回る結果となっている。ただし3-4割の企業が「未定」、3割前後が「回答できず」としており、5月の時点では新卒採用予定の状況はまだつかみ切れていない企業が多いことが分かる。また各企業の労働者数の過不足判断DI値では、前回の発表【新卒採用企業、全学歴で前年比マイナスへ(2010年3月)】から続き、「正社員:過剰」「パート:不足」状態が続いている(【発表リリース】)。
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今調査は2010年5月1日から14日にかけて同年5月1日の状況について、調査票郵送報告方式・インターネット利用のオンライン報告方式の併用で実施されたもので、対象は事業所規模30人以上の全国の民営事業所5835か所。回答事務所数は3107か所。
それによると2011年の新規学卒者(2011年3月卒業予定)の採用内定について、2010年3月卒業者と比べた増減としては、高卒が13%・大卒が14%など、学歴によって多少差異はあるが、いずれも「増加」企業数の割合が「減少」を上回る結果となった。ただし、「ほぼ同じ」が「増加」と「減少」を足したくらいの大きな値を占めており、すでに新卒採用方針を決定した企業では大勢として「前回よりちょっと多い、くらい?」な状況でしかない。前回が非常に厳しい雇用情勢だったことを考慮すると、手放しには喜べない。
↑ 平成23年新規学卒者採用予定者の22年との増減
さらに冒頭でも触れたが、5月の時点では「まだ未定」とする企業が2割後半-4割強、「本社等でしか回答できない」とする企業が2-3割に達しており、早期に方針を決定できるほど、雇用情勢が改善・悪化はしていないことが分かる。
労働力の過不足についても前回同様、全体的には過剰気味の傾向があり、それと同時に需給のミスマッチが起きているのが分かる。次のグラフはそれぞれの業種における「正社員」「パート」それぞれの労働力が過剰(余り気味)・不足(足りなさげ)な事務所の割合を算出した上で、「不足事務所」から「過剰事務所」を引いた値。この値がプラスな業種ほど、該当労働力が不足しており、マイナスが大きくなるほど労働力が余り気味であることを示す。
↑ 労働者過不足判断DI(2010年5月)(不足事務所割合-過剰事務所割合)
↑ 労働者過不足判断DI(2010年2月)(不足事務所割合-過剰事務所割合)(再録)
せっかくなので前回記事の2010年2月時点のグラフも併記するが、「医療・福祉」「運輸業・郵便業」「生活関連サービス業、娯楽業」などの人員不足、「サービス業」「卸売業・小売業」「宿泊業、飲食サービス業」のパートタイム労働者に限った不足、その他は全般的に「労働力は余り気味」な状況はほとんど変わらない。また、「医療、福祉」の不足度がますます深刻化していること、他事業の過不足がやや大人しめに移行しているのに対し、「建設業」の正社員余剰度合いが深刻度を増しているのが確認できる。
全体的な「過不足判断DI」の経年推移を見てみると、いわゆる2007年夏の「サブプライムローンショック」で「パートタイム労働者」への雇用調整が始まったこと、「リーマンショック」で大きな打撃が起きたことが把握できる。また、「パートタイム労働者」が2009年初頭のプラスマイナスゼロあたりで底打ちしたのに対し、「正社員」はさらにキツいカーブを描いて下落、2009年夏あたりでようやく復調の兆しが見えてきたことなども分かる。
↑ 労働者過不足判断DI推移(過剰事務所割合-不足事務所割合)
この状況は前回とは基本的に変わらない。ただし「正社員など」はいまだにマイナス値を見せており、これは6期連続もの。パートタイム労働者の横ばいの時期とほぼ重なり、その後もほぼ並行した動きを見せているため、パートタイムが雇用の調整を果たしているとも考えられる。しかしながら、企業の「労働力の過剰感」はまだ強く、新卒には厳しい時代が継続しそうではある。
なお今記事はデータの発表そのものは6月と古めだが、先日、前回発表分データの記事に多くの閲覧者があったことが確認されたため、あえて現時点で最新のデータである6月発表分を元にしたものを提供する意味で作成した。【発表予定一覧】によれば、8月分の調査結果が9月上旬には発表されるとのことなので、来月にでもあらためて最新のデータを元にグラフ作成と分析を行うことにしよう。
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