雇用不況で共働きにも変化が? …共働き世帯の増え方(2009年分反映版)

2010/08/25 07:22

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共働き夫婦の朝食シーン先に【四分の三は3人までの世帯、進む少人数世帯化…構成人数別世帯数の推移(2009年分反映版)】などで、以前【平成20年国民生活基礎調査】の収録データを元に分析した記事を【平成21年国民生活基礎調査】のデータを反映したものに差し替えた記事を掲載した。その際、「雇用情勢は悪化する一方だけど、そういえば共働き世帯についても以前記事にしたような」ということで、【共働き世帯の増え方】を記述していた事を思い出した。モノのついでということもあり、こちらも最新のデータを反映したものを作成しておくことにする。



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このようなデータは通常総務省統計局の【家計調査】のを使うのだが、昨年分の記事にあるように、「全体比では少数ではあるものの、男性が主夫、女性が雇用者(他人に雇われ、報酬を受けて働いている者)の世帯もある」ので、そのまま利用することはできない。昨年は【平成20年版厚生労働白書】の第2章第2節から「図表2-2-12 共働き等世帯数の推移」のデータを抽出したわけだが、今年の【平成21年版厚生労働白書】には同様の記述が無く、アウト。

そこでさらに【男女共同参画白書】の最新版をチェックし、「概要版」の第16図「共働き等世帯数の推移」に該当するデータを確認。このデータに以前の記事で入力した2008年までの数字を盛り込んだものが次のグラフとなる。せっかくなので21世紀以降のもののもの新設した。

↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)
↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)

↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)
↑ 共働き等世帯数の推移(万世帯)(2001年-)

いくつか留意点を挙げておくと、

「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」……夫が非農林雇用者で、妻が非就業者(非労働力人口か完全失業者)

「雇用者の共働き世帯」……夫婦ともに非農林業雇用者の世帯

を指す。つまり今件では「単身世帯」「夫婦ともに非雇用世帯(年金生活者など)」「世帯主が事業者(経営者や個人事業、商店主など)」「農林業従事者世帯(農業で生活している人など)」などは含まれない。

今回のデータで盛り込まれている「夫が勤め人、妻が専業主婦」という世帯と「夫も妻も勤め人」という共働き世帯数の推移としては、「夫が勤め人、妻が専業主婦」世帯が1990年まで漸減、それ以降は横ばい、2000年以降は再び漸減の傾向を見せている。一方で「共働き世帯」は1990年まで漸増、それ以降は横ばい、2000年以降は再び漸増。

両者の関係を見ると、1990年-2000年の間はほぼ同数で推移しているが、2000年以降は1990年以前とは逆転現象が起きて「共働き世帯数>>夫が勤め人・妻が専業主婦世帯」という構図が維持さている。しかも両者の差は年々広がる傾向にある。これは夫の可処分所得の減少を妻がパートで補う、妻が働きやすい非正規雇用の仕組みが整備(あるいは店舗側による需要が増えた)されたことなどを起因とする。

なお最新データの2009年に限れば、この10年余りとは逆の現象、つまり「夫が勤め人、妻が専業主婦」が増加し、「共働き世帯」が減少する動きが確認できる。単なる「ぶれ」の可能性もあり、来年以降の動向を注視したいところだが、昨今の雇用情勢の悪化(派遣叩きにより派遣業の衰退など)が影響している可能性は否定できない。

視点を変えて……全世帯に占める割合を計算してみる
前回記事同様、「全世帯に占める割合」も算出し、グラフ化する。つまり上記ではグラフ生成時に該当しなかった世帯、「単身世帯」「夫婦ともに非雇用世帯(年金生活者など)」「世帯主が事業者(経営者や個人事業、商店主など)」「農林業従事者世帯(農業で生活している人など)」など全部を含んだ世帯数に対し、「共働き世帯」などがどの程度の割合を占めているのか、についてである。

世帯数推移については【e-Stat】から「平成21年国民生活基礎調査」中、2009年分の「2.世帯数-構成割合,世帯構造・年次別」を選べばすぐに抽出できる。年次で揃えて、「共働き世帯」数などと合わせて計算をした結果が次のグラフ。こちらも新規に21世紀分のグラフを新設した。

↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移
↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移

↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移(2001年-)
↑ 共働き等世帯数の全世帯数に占める割合推移(2001年-)

「勤め夫に専業主婦」の割合が年々減少している(約30年で半減近く)のはともかくとして、「全世帯数に占める共働き世帯の占める割合」は1990年以降ほぼ横ばいを維持しているのが分かる。

これは【「お年寄りがいる家」のうち1/4・414万世帯は「一人きり」】でも触れたように、日本の世帯数そのものが増加現象にあること、そして年金生活者や単身生活者が増加していることにより、(共働き世帯数そのものが増加していても)比率としては一定率が維持されたままの状態になっているのがその理由。さらに2009年単年については、昨今の状況をやや覆すような動きが確認されており、来年以降により大きな注視が必要とされる。

共働き世帯数の全世帯数比率がほぼ2割を維持」し続けている理由については、まったく説明のつけようがない。裏付けとなる社会的規範・法令も見当たらない。不思議な現象だが、社会構造学的にこのような均衡がとれるようになっているのかもしれない。逆にいえばこの比率がさらに上向くようなら、社会全体として大きな変化が生じていることのシグナルととらえるべきだろう。



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