ネットと現実が融合した面白プロモーション
2010/08/10 04:54
インターネットで色々なサービスを駆使していると、ふと現実の行動が恋しくなることがある(例えばネット通販ばかり利用していると、普通の店舗で買物したくなる)。また熱心になるあまり、「ネットばかりしていると浮世離れしちゃうよ」とたしなめられたりもする。でもインターネットと現実とは、世間一般に言われるほど、断絶しているものなのだろうか。そんな疑問に答えてくれそうな、そしてシンプルだがインパクトがあり、多くの人の注目を集めたのが、ハンガリーの携帯事業会社「T-mobile」が先日まで行っていたプロモーション「Analog Facebook」だ(【The ADS of the World】)。
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↑ 設置された「Analog Facebook」に逐次コメントが「掲載」されていく。
↑ 「Analog Facebook」設営の様子。
T-moblieでは、ソーシャルメディアの雄・Facebookへのアクセスに、同社の携帯電話通信サービス「Domino Net Package」の利用を推進していた。「私たちのサービスならFacebookへも容易にアクセスできますよ」というメッセージを、Facebookユーザーにどうやってアピールできるだろうか……そのようなニーズに対する答えとして考え出されたのが、「Facebookをリアルで、道端で展開してしまえばいいではないか」というもの。
まずは屋外のイベントスペースに、Facebookの通常画面が描かれた高さ4メートルもの大きな看板「Facebook on the Streets」を設置。これだけでもFacebookを知っている人なら目を留める。そして同時にFacebookで取得した本物のアカウント上に専用ページをオープン(現在は閉鎖されています)。
↑ Facebook上の専用ページ。
この看板、デジタル系のイベントなら液晶パネルあたりで作るのが常だが、これは本当に手書きの「リアル」なもの。そしてFacebookのページ上からコメントを書くと、「Facebook on the Streets」では常駐しているスタッフが「手書きによる直筆」で自分のアイコン付きのコメントをプレート上に書き、さらにそれを看板の上に挿入していく。つまりインターネット上の「Facebook」の宣伝専用ページと、現実の看板「Facebook on the Streets」を手動で連動させたわけだ。そしてその様子は逐次リアルタイムで、宣伝宣伝ページにあるライブストリーミングで中継されていく。
↑ 逐次更新される「Analog Facebook」。
↑ そして「Analog Facebook」の様子自身も、ネット上のFacebookの専用ページで中継される。
看板「Facebook on the Streets」には、逐次書き変わるメッセージに周囲の注目が集まる。そしてあちこちに配されているT-mobileのロゴを目に留めることになる。一方、インターネット上からFacebookにアクセスしている人たちには、自分達の書き込みに「リアルで」コメントする情景を見て、ネットと現実のつながり、そしてそれをサポートするT-moblieの姿が深く印象に残るというわけだ。
この「ネット上の反応をリアルと結び付ける」という手法、以前紹介した漫画『ふおんコネクト!』で2010年3月号に掲載された作品でも展開されていた。もっともこちらは「宣伝のため」ではなく、いたずら描きをした犯人をたしなめるためのもの。具体的には「いたずら描きの内容をネット上に公開」「その内容に関するコメントを世界中から募る」「そのコメントを逐次いたずら描きをした場所に”リアルに”貼り出していく」というプロセスを取る。いたずら描きをする人物は多分に自己主張・自己顕示欲と共に自分に対する過度の高評価を自負しているから、「描き捨て」したはずの自分の「作品」にワールドワイドからツッコミが入れば、あるいは満足するし、あるいは自分の力量を知って反省するだろうという思惑。果たしてどのような反応・効果があったかについては……9月27日発売予定の『単行本第四巻』で確認してほしい。
「ふおん-」の場合は「Analog Facebook」とは少々目的などが異なるが、ネット上のアクションと現実世界のアクションを連動させ、それを互いにリアルタイムで描くという手法は、手間暇こそかかるが技術的には比較的シンプルに他ならない。そしてイベントの方向性をうまく見出せば、大きな注目を集め、成果を生み出すことができる。
AR(拡張現実)技術を用いたイベントもそこそこ登場するようになった。今後インターネットと現実を結びつけた多種多様な手法が生み出され、そしてそれを使った楽しい、心弾ませるようなプロモーションが続々登場し、展開されていくことだろう。
(C)芳文社/(C)Zara
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