年代別の自動車保有数とその変化
2010/08/04 07:14
総務省統計局は2010年7月30日、2009年の全国消費実態調査の結果概要を同省公式サイト上にて発表した(【発表ページ】)。この調査は世帯単位を対象となし、各家計の各種実態を5年毎に調査し、各種政策の基礎資料として用いるデータを収集するために行われている。今回はそのデータの中から、二人以上の世帯における自動車の所有数量について年齢階層別の動向を調べ、グラフを作ってみることにした。単純な保有数の違い、この5年間でどのような動きが年齢別に生じているのかが見えてくるはずだ。
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調査対象母集団の内訳や調査方法については【自動車は少なめ、そして軽や小型化へ 自動車の世帯普及率】にて記した通り。
まずは直近2009年における、二人以上の世帯での自動車普及率。自動車そのものを持っている世帯は85.5%。国産自動車では83.1%・輸入自動車は4.8%(重複世帯あり)と、8割強の世帯が自動車を有していることになる。
↑ 自動車の世帯普及率(2009年、二人以上の世帯)(再録)
これを普及率ではなく1000世帯あたりの所有数量(1世帯で複数台所有している場合もある)でみると、1414台。2004年は普及率86.2%・1000世帯当たりの所有数量1446台で、それと比較すると普及率・所有数量共に減少している。「全国消費実態調査」でも1964年の調査項目採用以来初めての減少であるとして、特筆すべき事態が生じていると認識されている。
この所有数量を、世帯主の年齢階層別で見たのが次のグラフ。世帯主が若いほど財力に余裕がないこと、逆に高齢に過ぎると運転上のリスクもあって自動車を手放す傾向もあり、50代世帯がもっとも数量が多い結果が出ている。
↑ 世帯主の年齢階級・自動車の種類別、1000世帯あたりの所有数量(二人以上の世帯)
この値はあくまでも直近2009年のもので、変移を示したものではない。そこで2004年の調査結果と比較し、どれほどの変移が生じているのかを示したのが次のグラフ。非常に興味深い結果が出ている。
↑ 世帯主の年齢階級・自動車の種類別、1000世帯あたりの所有数量変移(二人以上の世帯、2004年-2009年)
自動車全体では60-70歳代のみが増加。他はすべて減少。軽自動車は40歳代が特異値を見せているが、それ以外はすべて増加しており、軽自動車の人気ぶりを示している。しかし増加率でみると、若年層の勢いの弱さが分かる。そして小型車の減少率もひどいものだが、それ以上に大きな下げ方をしているのが普通自動車。30歳未満では実に2割超えの結果となっている。
一部報道機関ではこれらの値から「若者の自動車離れ」という陳腐な言い回しを連呼していたが、厳密には「若者の”普通”自動車離れ」と表現するのが正しい。高齢者より比率は低いが、若年層でも軽自動車の所有数量は増えているのだから。
老いも若気も現状を見据えて普通自動車よりも効率的な軽自動車を求めるようになった。普通自動車・70歳以上のプラスは、多分に「ぶれ」によるものだろう。2009年でも126台しか確認できない。そして全体的に若年層の伸び率が低い、マイナスなのは【若年層「自動車無くてもいいヤ」その理由は「責任やリスクは極力避けたい」!?】などでも説明しているように、経済的に慎重さを高めねばならなくなった若年層が、自動車そのものの買い控え・効率的な商品への志向スライド(普通自動車から軽自動車)をしているに過ぎない。
自動車全体の世帯普及率・所有数量そのものが調査以来初めて減少したことに対し、驚きの声が上がっている。しかしその減少の大きな要因となった若年層の動向を見る限り、当然至極の結果といえる。お財布の中身を削られ、今後の収入の見通しも自分達の先を行く人と比べて不安定で、もっと安上がりで楽しそうに見える娯楽は山ほど用意されている。「もっと若者は自動車を買うべきだ」と中高齢層の価値観を押しつけられても困りもの、あるいは反発を強めるだけ。世はそれを「押し売り」と呼ぶ。
また、今データは自動車総数量ではなく「1000世帯当たりの」所有数量を示している。自動車全体、軽自動車の値を見る限り、高齢者全体に占める高齢者ドライバー率がかなり増加したと見てよい。高齢者自身の増加も合わせて考えると、高齢者ドライバー「数」の増加数は相当なものとなる。今後この層に向けた交通事故対策も重要課題の一つになるに違いない。
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