携帯電話でのインターネット利用率(2010年版)
2010/07/28 06:59
総務省は2010年7月6日、平成22年(2010年)版の情報通信白書を発表した(【発表ページ】)。日本国内のインターネットや携帯電話など、情報通信関連の各種調査結果を反映した白書で、同年4月27日に発表されている【通信利用動向調査】のデータなどを盛り込んだ、同省の情報通信統計の集大成的レポートといえる。今回はその白書や通信利用動向調査に掲載されていた、「携帯電話(PHSを含む)における、インターネットの利用率」をグラフ化してみることにする。いわば【携帯電話でのインターネット利用率】のデータ更新版というわけだ。
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情報通信白書に掲載されていた今データは通信利用動向調査からのデータの引用で、大元は【こちら(PDF)】に掲載されていたもの。また、通信利用動向調査そのものは2010年1月に、層化二段抽出方式による無作為抽出で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員6256世帯に対して行われたもの。有効回答数は4547世帯・1万4549人(企業に対して行われたものは常用雇用者規模100人以上2870企業/有効回答数1834企業)。調査方法は郵送による調査票の配布および回収なので、各媒体の保有率は調査結果に影響を与えていない。
今回グラフ化したのは、「携帯電話を使った」「インターネットの利用率」。なお今件における「携帯電話」は、PHS・PDAは含むものとする。
まずは2009年末における全体・年齢階層別のグラフ。過去一年間に携帯電話(PDA、PHS含む)を経由してインターネットにアクセスしたことがある人の割合。
↑ 携帯インターネットの利用率(2009年末)(過去1年間において、PHS・PDAも含む)
携帯電話そのものの利用率・インターネット全体の普及率同様に、20-30代がピークでその後定年退職前後までは緩やかな、そしてそれ以降は急激な下り坂を描いているのが分かる。
これをさらに過去の調査データ5年分を元に、その推移を示したのが次の図。
↑ 携帯インターネットの利用率推移(PHS・PDAも含む)
各年齢層とも少しずつ利用率が増加し、「携帯電話によるインターネット利用」が普及していくようすがつかみ取れる。特に50代から60代前半の伸びが著しい(65-69歳の急激な伸びは、定年退職後における第二の人生の歩みを携帯電話に見つけたムーブメントなのか、それとも統計上のぶれなのかは現時点では判断できない。来年以降のデータを待ちたい)。しかしそれでも60歳前後を区分とした大きな「ギャップ」が生じているあたりは、インターネット全体の状況と変わらない。
せっかくなので、2009年末における「携帯電話の利用率」「インターネット普及率」「携帯インターネットの利用率」を併記してみることにした。
↑ 「携帯電話の利用率」「インターネット普及率」「携帯インターネットの利用率」(2009年末)
6-12歳と13-19歳において「インターネット普及率」が突出しているのは、学校経由におけるパソコンのネット利用が多いため。また、携帯電話の保有を保護者から止められている場合が多いのも、「携帯電話の利用率」が低い要因。それを除けばほぼすべての年齢階層において、
という式が成り立つのが分かる。これはそのまま、各メディア・サービスの利用ハードルの高低を表しているともいえよう。ただし20-50代においては事実上「携帯電話の利用率」=「インターネット普及率」となっており、この世代ではインターネットと携帯電話のインフラとしての普及率がほぼ同レベルに達していることを意味している。
気になるのは50歳以降になると、「携帯電話の利用率」「インターネット普及率」と「携帯インターネットの利用率」とのギャップが大きくなること。60歳以降になるとさらに「携帯電話の利用率」と「インターネット普及率」との差も大きくなる。これはやはり操作の複雑さ、そして必要度の違いからくるものと考えて良い。
【60代が区分線!? 年齢階層別インターネット利用率】の後半部分で触れているが、高齢層はこれまでの生活の中でインターネットや携帯電話に接した時間の割合が少ないため、必要性や信頼性の面でこれらを重要視しない傾向がある。あるいは単に、便宜性に気が付いていないだけなのかもしれない。また、覚えなければならないことが多く、利用までのハードルが高いのも普及・利用の低迷理由と考えられる(覚えるまでの時間と、覚えてから楽になる時間とどちらが長いか、寿命と兼ね合わせて考えると……という足し引きが頭の中で行われているのだろう)。
テレビや冷蔵庫、洗濯機などのように覚えることが少なくて済み、気軽に利用できるインターネット機器や携帯電話が登場すれば、あるいは高齢者にも受け入れられ、普及率・利用率も向上していく可能性はある。その観点で考えれば、昨今のタブレット型情報端末は、高齢者のインターネットを敬遠する動きに対して、何らかの突破点となるかもしれない。
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