主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)…(3)今や広告費の話題はスポット広告からタイム広告へ
2010/05/16 19:33


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「タイム広告」と「スポット広告」については詳しくは【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算…(1)「キー局」と「スポット広告」「タイム広告」】で解説しているので、そちらを参照してほしい。要は「タイム広告……番組提供」「スポット広告……番組と番組の間の埋め草広告」とイメージすればあながち間違いではない。テレビ番組の最初と最後に「この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りします」との説明と共に表示される企業は、すべてその番組のタイム広告を出している。
昨年前半までは各企業の広告費削減のあおりを受け、しがらみが少ない、あるいは効果がより薄いと認識された「スポット広告」がダイナミックな削減を見せていた。これがテレビ各局の減収の大きな要因だったのはこれまでに何度となく説明した通り。しかし【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算……(2)業績斜め読みと広告売上、利益率の変化】の後半部分で触れているが、2010年3月期の第1四半期からは「スポット広告よりもタイム広告の方が前年同期比における減少率が大きくなる」傾向が見え始めていた。そして中間期においては、それが明らかになり、今回の期末決算ではそれをより裏付ける結果が出ている。

主要5局の2010年3月期決算におけるタイム・スポット広告前年比

参考:主要5局の2010年3月期・中間決算におけるタイム・スポット広告前年同期比(再録)
今期では全放送局で、スポット広告以上にタイム広告の前年同期比減少率が大きくなってしまっている。昨年まではスポット広告の下げ幅が大きかったが、今年は「スポット広告費は(下げ幅こそ縮まったものの)下げ続けつつ」、タイム広告の方が下げ幅が大きい状況が確認できる。考え方としては「スポット広告はダイナミックに削る部分は済んだので、あとは少しずつ削り取り、今度は(番組提供の)タイム広告をざっくりと削って行こう」という広告出稿側の意図が想像できる。あるいはそれ以上に、「広告を出稿するに値する番組が無い」という、放送を構成する番組の質の低下によるところもゼロとは言い切れない。
また、TBSとテレビ東京は相変わらずスポット広告の減少も著しい。こちらも気になるところだ。特にTBSはタイム広告の下げ幅が5局中最高値を示している一方で、タイム広告でも最大の下げ幅を見せており、冷や汗どころの話ではない。
タイム広告の下げ幅が著しい件について、まだ「タイム広告の売上額は小さいから、割合で減っても大した影響はないだろう」といった状況ならマシなのだが、実際にはタイム広告とスポット広告の売り上げは大体半々である。例えばフジ・メディアHDの場合は、ネット・ローカルも合わせたタイム広告で放送収入(広告収入)の過半数を占めている。

フジ・メディアHDの放送収入区分(2010年3月期、億円)
要は放送局にとっては、スポット広告もタイム広告も、減少する割合が大きければ業績的なダメージはほぼ同程度と見てよいわけだ(例えば「タイム広告が10%減っても、スポット広告の5%減くらいしかダメージが無い」というわけではない)。
減少することは、テレビ放送を支える
各テレビ番組そのものの予算の
都合がつかなくなることを意味する
スポット広告を出してくれる企業が減ったとしても、いわゆる「フリースポット広告」契約の広告や公共広告機構の広告で埋めることで、体面・恰好はつく。しかし番組を支えてくれる広告主が現れなければ、基本的に予算が出ないのだから、番組そのものが成り立たなくなってしまう。テレビ局が自腹で制作していたのでは、(NHKや衛星放送のように放送料金を視聴者から徴収するので無い限り)いくらテレビ局全体の予算があっても追いつかない。
実は昨年の「スポット広告減少」騒ぎ以上に、タイム広告の減少は各テレビ局に大きな波紋を起こしているものと思われる。
(続く)
■一連の記事
【主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)…(1)業績概要】
【主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)…(2)各社業績斜め読み】
【主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)…(3)今や広告費の話題はスポット広告からタイム広告へ】
【主要テレビ局銘柄の直近決算(2010年3月期)…(4)放送事業で赤字を出したTBS社と利益が気になる日本テレビ、そしてまとめ】
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