【更新】「痛いの痛いの飛んでけ-」とさすると本当に痛みが飛んでいく件、神経修復の観点で実証
2010/04/01 06:59
群馬大学大学院医学系研究科・柴崎貢志講師は2010年3月31日、生理学研究所・富永真琴教授らとの共同研究として、「さする」と反応する、神経の突起を伸ばす新たな分子メカニズムを解明したと発表した。傷を負った患部を「さする」行為が、末梢神経の回復・再生を促進させる効果がある可能性を示唆しているとのこと([発表リリース])。
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↑ イメージ図
今回の研究で注目したのは、神経細胞内にある、熱を感じる分子センサー(タンパク質)として知られる「TRPV2」と呼ばれる物質。ニワトリの細胞などの実験で「TRPV2」があることによって、神経細胞中の刺激を伝える「突起」という部分がより長く伸びることが確認できた。人間の神経細胞を培養したモノでも「TRPV2センサー」を持つ細胞は無いものと比べ、「さする」などのような物理的な刺激で反応し、神経突起を進捗させることを確認している。
つまり傷ついた神経が突起を伸ばし、損傷から回復していこうとする際に、「TRPV2センサー」による反応がその回復過程を後押しする可能性を示唆している(表現が素人的だが、「TRPV2センサー」というハンドスピーカーを用いることで多くの作業員に一度に指示を与えることができ、作業の効率が良くなるようなもの)。
今回の発見は、例えば交通事故などで激しい神経損傷を負った場合に、リハビリをして患部を動かすと、なぜ運動機能の回復が促進されるのかが分子レベルで解明できるものと期待されている。また、打ち身などで傷ついた皮ふの神経の損傷部位を自然と「さすって」しまう行為は、「TRPV2センサー」を反応させて神経の突起の伸びをうながし、神経回路の再生もうながす効果があると考えることができる。
患部をさする行為は相手の愛情・想いを言葉通り「肌身をもって」受け入れることになるため、心理的な面での安定効果がある。子供が転んでケガをした際に、親が今記事題名にもあるように「痛いの痛いの飛んでけ-」とさする場面があるが、子供はその親の行為により、愛情を再確認し、けがの不安から逃れ、痛みを間接的に和らげることができる。さらに今研究結果では、神経細胞の再生促進の効用、言い換えれば物理的な治癒効果が「さする」という行為に備わっている可能性が示されたことになる。
何気ない日頃の行いも、実は科学的・医学的に意味のある行為だったということが証明されるとなると、極めて感慨深い。今後の研究成果に期待すると共に、科学技術の後押しが必要不可欠なこと、「無駄な研究開発か否か」など素人が判断できるものでは無いということを、改めて実感させてくれるというものだ。
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