若者層の新聞離れのトップは「お金がかかるから」、その意見に潜むものは……

2010/03/01 06:57

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情報過多イメージ電通子会社のMedia Shakersが運営する、20歳から34歳までの若年層(いわゆるM1・F1層)のマーケティング調査機関であるM1・F1総研は2010年2月25日、「若者と新聞」に関する調査報告書を公開した。それによると調査母体のうち新聞をほとんど読まない若年層の男性で、新聞を読まない理由としてもっとも多くの人が挙げたのは「料金がかかるから」だった。実に62.6%と6割以上の人が同意を示している。他にも「時間がかかる」「他のメディアの情報で事足りる」など、新聞に対する評価が低い事実を提示している。若年層はそれより上の世代と比べて情報への収集欲・好奇心が高く、効率が悪いように認識している新聞を敬遠する傾向があるようだ(発表リリースページ)。



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今調査は2009年11月にインターネット経由で関東1都3県在住の男性に対して行われたもので、有効回答数は1200人。年齢階層はM1層(20-34歳男性)1000人、M2層(35-49歳男性)200人。

若年層たるM1層で新聞を積極的に読む(週1回以上閲覧する)人は2割台と低め。逆にいえばほとんど読まない人は7割台に達している。

↑ 普段からよく新聞に接している・積極的に新聞を閲覧している(男性)
↑ 普段からよく新聞に接している・積極的に新聞を閲覧している(男性)(再録)

この「新聞をほとんど読まない7割台の人」たちに、「どうして新聞を読まないのか」について複数回答で尋ねたところ、最多意見は「料金がかかるから」というコスト意識からのものだった。次いで「時間がかかる」「他のメディアからの情報で事足りる」など、新聞の優位性を否定する、非効率的なものとする意見が理由となっている。

↑ 新聞を読む機会が週1回未満の20-34歳男性における、新聞を読まない理由(複数回答)
↑ 新聞を読む機会が週1回未満の20-34歳男性における、新聞を読まない理由(複数回答)

ただし若年層がメディアそのものを疎んじているわけではない。掲載は略するが、新旧媒体を問わず若年層もそれより上の世代層同様に普段からよく接しており、特に今世紀に入ってから浸透しているデジタル系メディアへの接触率は上の世代を遥かに凌駕している(上の世代が若年層を大きく上回っているのはラジオや新聞、チラシくらいなもの)。むしろメディアからの情報収集には、若年層の方が積極果敢に行っている。

それだけ情報の収集元が増え、好奇心・情報収集欲が旺盛だと、まるで幕の内弁当やバイキングで色々な料理を少しずつお皿に盛りつけるように、効率的な情報収集をしたくなるというもの。実際に、情報の効率的な取得を求める意識は若年層の方が強い。

↑ 効率的に情報を収集したい
↑ 効率的に情報を収集したい

そして新聞を積極的に読む若年層においては、新聞を「効率的に情報収集できる」ツールとして認識している。自分の性質にマッチしたのか、あるいは「コツ」をつかんだのか、使いこなす(割り切る)ことができれば、それ相応に役立つものとして活用できるわけだ。

↑ 新聞を読む機会が週1回以上の20-34歳男性における、新聞を読む理由(複数回答)
↑ 新聞を読む機会が週1回以上の20-34歳男性における、新聞を読む理由(複数回答)

恐らくではあるが、新聞を読まない人が若年層に多いのは、ただでさえ情報過多の時代において、新聞が未だに旧スタイルのままの情報発信を続けており、読みこなす・活用するまでのハードルが相対的に低いからなのだろう。だからそこ見出す価値も低いモノとなり、支払える対価と比べて割高な新聞には「料金がかかるから読まない(=対価そのもを見いだせない)」という認識をしてしまう。

発表資料ではこれについて「効率重視」と「情報過多」を別々の理由として挙げている。しかし実際にはその双方が互いに絡み合った結果といえる。「情報過多」であるために「効率を重視」せざるを得ないわけだ。【「ながら族」浸透!? 平日のテレビ・パソコン利用時間帯のピークは共に夜9時】【ワンセグの「ながら視聴」はパソコンやテレビが多いが最多は「しないヨ」】などでも触れているが、いわゆる「ながら族」の傾向が強まっているのもその裏付けとなる。

若年層はデジタル・アナログ
双方の情報取得に積極的

情報過多

効率的に情報を取得したい

・旧スタイルの新聞はイヤ
(効率が悪い)
・まとめサイトやライフハックを
 好む傾向に?!
これは日本に限った話では無く、【アメリカの子供達のテレビやゲームの接触時間・決まりごと】で触れた非営利団体The Kaiser Family Foundationのレポートにも10年来の継続調査の結果として、「ながら族」傾向が強まりつつあることを詳細なデータで解説している(時間と要望があれば機会を改めて紹介しよう)。

「情報過多」だから「効率重視」。それゆえに「効率重視」のハードルをクリアできない新聞は、読むに値しない。よって価値を見いだせないから「料金がかかること」は勘弁ならないと認識してしまうというわけだ。もちろん内容の面でも少なくない意見が挙げられているのは事実ではあるが。

また、このような「情報過多」時代における「効率重視」傾向が強まっているからこそ、いわゆる「まとめサイト」(当サイトも広義ではその部類に属する)や、「ライフハック」的な即効性の高いシンプルな記事が流行るのだろう。攻略本が流行る傾向もしかり、といえよう。



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