自動車は一切出てこないけどシートベルトの大切さが胸をつらぬくコマーシャル
2010/02/05 06:59
【シートベルトとエアバッグのデータ-「戦後の交通事故・負傷者・死亡者」後日談】や【シートベルト着用率は運転席で96.6%、後部座席ではまだ3割強】にもあるように、自動車運転手及び搭乗者のシートベルト着用は、確実に事故発生時のリスクを軽減する効用がある。にもかかわらずいまだに「面倒だから」「キツいから」などの理由で着用を嫌う人がいるのも事実。それは日本だけに限らず、世界共通の事情のようだ。そんな人たちに向けた、シートベルトの着用がいかに大切かを1分半に凝縮したのが、イギリスの政府系組織【Sussex safer roads】が提供しているテレビコマーシャル「命」を抱きしめて……常にシートベルトを着用しましょう(Embrace Life - always wear your seat belt)だ。
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↑ Embrace Life - always wear your seat belt。
「Sussex safer roads」はその名の通り、イギリスの南東部・イギリス海峡に面する地域における、自動車の交通事故対策のための政府系機関。中央政府から資金を供給されている。具体的には統計データを分析したり、さまざまな交通安全運動で啓蒙をはかるなどの活動を行っている。
今回紹介するテレビコマーシャルも、その啓蒙活動の一環。「自動車を運転する際にはシートベルトを必ずしめましょう」ということを公知するものだが、それに家族愛を絡めている。運転手の事故、さらに事故死は本人はもちろん、家族にも大きな傷となる。シートベルトは自分自身を守るだけでは無く、家族全体をも守るための、家族の手による「命を守る抱擁」に他ならないということが、1分半の動画に詰め込まれている。
この動画が巧みな点は数多い。シートベルトを家族の手で表現することで家族愛を代弁させているのはもちろんのこと、動画そのものがスローモーションで進行し自動車のスピード感を逆に表していること。そして衝突の瞬間と思われる一瞬だけ(タイムラインで50秒あたり)スローモーションの表現を止めて、観ている人の視覚スピードを現実に呼び戻し、衝突時の衝撃、惨劇を強力なインパクトのあるものとしていること。
さらに衝突したと思われる直後に、運転手の目の前にある小さなテーブルが蹴り飛ばされ、置かれていたお皿の中のお菓子がなぜか無数の色とりどりの銀紙となって飛び散り、自動車事故における衝突直後の状況を視聴者の脳裏にイメージさせる。自動車事故ではたいていフロントガラスが粉々に砕け、周囲にはその破片が飛び散ることになるからだ。
そして何よりも評価すべきなのは、これが自動車そのものを一切使っていないこと。さらに最後の英語によるメッセージ以外は一切セリフ・字幕が登場せず、それでもこの動画が何を訴えているのかが、胸をつらぬくように理解できるのも、評価を高める一因となっている。
今コマーシャルは2010年の1月20日にテレビ放送が開始され、動画の掲載は1月29日。にもかかわらずすでに再生回数は25万回近くに達し、約1400件ものコメントが寄せられている。他のコマーシャルやポスターにも言えることだが、優秀な作品は言葉が無くともメッセージを世界の人に伝えることができる好例といえよう。
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