【更新】職種別有効求人倍率(2010年1月更新版)
2010/01/12 05:34
先に【ヨーロッパの失業率も10%台に・若年層はより深刻な20%超へ】でヨーロッパ諸国とアメリカ、日本の失業率をグラフ化した際、以前【職種別有効求人倍率】で東京都などの職種別の有効求人倍率をグラフ化したことを思い出した。ちょうどその時から一年経過したこともあり、それらのグラフを現行データのものに書き換え、グラフを生成しなおすことで、現状を再認識してみることにした。
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有効求人倍率そのものはご存知の通り、
で算出されるため、1倍を超えていれば「企業が大勢の求人をしている」ことになり、職にあぶれる人はいない計算になる。1倍未満なら求職者の方が多いから、他のすべての条件がすべて合致しても、職にあぶれる人が出てくる(実際にはミスマッチがあり、そのようにうまくはいかない)。また、ハローワークに登録していることが前提になるため、職を探していても登録をしていない人は、有効求人倍率の計算には含まれないことになる。
例えば100人の村に工場が1つだけあり、そこで10人の求人があったとする。そこに100人の村人全員が求職すれば、 10÷100=0.1 で、有効求人倍率は0.1となる。
そこで早速、【東京都のハローワークの統計データ】を元に、東京都の各職種の有効求人倍率を調べた結果が次のグラフ。
↑ 東京都職種別有効求人倍率(2009年11月、一般常用)
「一般常用(雇用形態)」とは日本標準産業分類によれば、「期間の定めなく、あるいは一定期間を超えて雇用されている者」を指す。特記していない限りパートやアルバイトは含まれない。正規・契約・派遣で期間の定め無し、と認識すればよいだろう。また「分類不能の職業」とは一般区分化できないもの(例えばテキヤさんなど)が挙げられる。
全体では0.44倍という値が出ているが、その一方で「保安の職業」(警察官やガードマンなど)「福祉関係の職業」(介護など)は2倍前後の値を示している。一方で「管理的職業」「生産工程・労務の職業」(各種工場での製造、修理、運転)「事務的職業」など、特定の資格や技術をあまり必要としない職種には多くの求職者が集まる一方で求人が少なく、倍率が低くなっていることが確認できる。
続いて職種を(可能なものについては)細分化し、求人倍率の高いものと低いものを抽出してみる。
↑ 細分職種別有効求人倍率(東京都、2009年11月、一般常用)
高いものだと5倍程度(求職者1人に対して5人ほどの求人がある)、低いものでは「一般事務員」の0.12倍(求職者8人くらいで求人が1人分しかない)と、かなり大きな開きが見受けられる。また、それぞれを見比べてみると
……資格や免許、高度な技術が求められるもの(医師、薬剤師等)
……「キツい仕事」というイメージが強いもの(その他の福祉、外勤事務員、保安の職業)
・求人倍率が低い(求職者に対して仕事が枯渇している)
……作業重度の低いもの(一般事務員)
……特定の資格や免許、高度な技術を必要としない(と思われている)もの
などの傾向が見られる。
さて、前回と今回のグラフを見比べて、当然今回の値の方が低い事が確認できる。それだけ求職状況は厳しくなっているということだ。そこで前回・今回の有効求人倍率を比較し、1年前と比べてどの程度の求人倍率かを算出したのが次のグラフ。
↑ 1年前と比較した、東京都職種別有効求人倍率の変移(2009年11月、一般常用)
全体では約5割の減少。漁業や運輸、福祉関連は比較的減少率が少なめ(それでも2-4割だが)な一方で、1年前は高めだった保安・IT関連が大きく下がっているのが分かる。特に1年前はIT関連は「数少ない堅調セクター」としてもてはやされていただけに、少々ショックも大きい。恐らくは「堅調」ではなく、「苦境が遅延していた」だけだったのだろう。
●地方も状況は同じ……!?
東京都だけでは傾向が片寄っている可能性もある。そこで前回同様に[愛知県]と[長野県]双方において、職種別有効求人倍率を同じくグラフ化することに。地域によってデータの取り扱われ方、公開頻度が異なるので、互いの整合性がとれているわけではないが、参考にはなるはずだ(長野県のデータはパートと一般常用別個のデータしかなかったので、こちらで合算した)。
↑ 愛知県職種別有効求人倍率(2008年11月、パートを含む一般常用)
↑ 長野県職種別有効求人倍率(2009年11月、パートを含む一般常用)
東京都のデータと順位、区分に多少の差異が見られる部分もあるが、有効求人倍率の高低が生じる職種については同じような傾向なのがはっきりと分かるだろう。また、一部の職種では東京都以上の求人倍率を誇るものもあるが、全般的には同程度、あるいは東京都より状況が厳しい様子がうかがえる。
数字の確認をした限りでは、1年前と比べて雇用情勢は明らかに悪化している様子が分かる。単純計算でも「去年の2倍前後、雇用情勢は悪化している」ことになる。これは以前の記事で指摘した労働市場における「需要と供給のミスマッチ」だけに留まらず、産業構造全体における需給の変化、そして不景気による企業の防御姿勢の強化が容易に想像できる。
にも関わらず、今年度(2009年末-2010年初頭)は昨年度(2008年末-2009年初頭)と比べ、いわゆる「(公設)派遣村」をはじめとする求人倍率・就職難に関連する報道や、それに連動した政府・自治体へのバッシングが(比較論として)ほとんど見られない。昨年度はそれこそ「親の仇」であるかのように朝から晩までテレビも雑誌もラジオ新聞も総動員で、バルカン・ファランクスのような頻度で糾弾していたのが、まさに夢まぼろしのような状況である(逆に「派遣村」に関しては悪質入居者への非難が積極的に挙がってくるほどだ)。非常に不思議なお話と言わざるを得ない。あるいは何か別の目的があった・単にその時に政府を叩く材料として利用されただけだったのだろうか。
むしろ今件のような状況であるからこそ、非難を強めると共に、前回記事でも提示したような「各地方自治体なり政府なりによる緊急職業説明会の一斉開催」を推し進めるべき気がするのだが。
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