【更新】世界の対外債務国ワースト20

2010/01/02 07:47

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お金イメージ先に【世界各国の金(きん)保有量】【世界各国の石油埋蔵量など】などで、CNBC.comで多種多様なデータを紹介する【Slideshows】から興味深いデータを抽出し、グラフとして再構成する企画記事を掲載した。その後も定期的に新しいデータが更新され、中には「これはグラフ化して概要を見渡せるようにする価値がある」ものがいくつか見受けられる。今回の記事もその類で、先日ギリシャやスペインの国債に対するニュースでも話題になった、夏までは事ある毎に「国の借金国の借金」と連呼して政府を非難する対象に挙げられていた、国債の対外債務のランキングをグラフ化してみることにする(【The World's Biggest Debtor Nations】)。



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元記事の説明にもあるように発行された国債のうち外国が購入したものは、国単位での借金となる。たとえ話で解説すると、「Aさんの家庭でお金が足りないから、隣のBさんから5万円を借り受け、その証書を発行する」ようなもの。Aさん・Bさんは別々の国(家庭・家計)なわけだ。顕著な例としては【アメリカ国債(米国債)の購入先】にもあるように最近では米国債は国内でかなりの量が買われているが、それでもなお多くは日本や中国などの諸外国が購入し、アメリカに対して借金をしている計算になる。

元資料は国によって取得年数に1、2年の違いがあるものの、経済規模の大きい75か国について基本的に最新のデータを世界銀行(the World Bank)から取得。その上で「対外(国)債務のGDP比」のワースト20をランキングしている。

↑ 対外債務GDP比率
↑ 対外債務GDP比率

先日デフォルトを起したことで記憶に新しいアイスランド……ではなく、意外にもアイルランドがずば抜けて高い比率を占めていることが分かる。家計で例えるならGDPは「大黒柱のお父さんの稼ぎ」だから、上の例で表現すれば、お父さんの年収の13倍近くの借金を周辺近所の人たちから借りている計算になる。年収500万円なら6000万円強。

アイルランド以外にもスイスやフランスなど、意外な国が上位についているのが分かる。しかしながらやはり上記の例で表現した場合、住宅ローンなどでは年収の何倍もの借入額があってもおかしくないのと同様に、その国の財政・政治体制がしっかりしていれば、貸している他国からとやかく言われることは(あまり)無い。しっかりと利子も払っていることだし。

比較対象としていくつのグラフを併記しておく。まずは国民一人当たりの対外債務額。これは対外債務全体を国民数で割ったもの。

↑ 国民一人当たり対外債務額(ドル)
↑ 国民一人当たり対外債務額(ドル)

アイルランドがずば抜けて大きい事に違いは無い。さらに上位五位は順位の変動なし。人口が多いところは多少順位が下がる傾向にあるが、大勢に変化は無い。

最後に、GDP比や人口割でない、純粋な対外債務総額。こちらは単位が兆ドルなので注意してほしい。

↑ 対外債務総額(兆ドル)
↑ 対外債務総額(兆ドル)

上二つのグラフでは下の方にいたアメリカ合衆国がずば抜けた値でトップについている。これは同国の対外債務の大きさと共に、GDPや人口もまた大きい事を意味する。上記の例ならば「アメリカ合衆国家では周辺近所に総計1000万円単位の借金をしている。でも家計の年収合計も1000万円くらいはあるし、共働き・子供も働いている」というところか。

また、いずれのグラフでも上位に登場した国の中では、特にヨーロッパ諸国、中でもイギリスとオランダの事態の深刻さが気になるところ。両国ともまだ政情が安定しているなどの理由で、諸外国から国債を買い取ってもらえているのだろうが……(デフォルトさえしなければそれなりにリスクは低く、利回りの良い金融商品であることに違いは無い。ちなみに英国債(10年)の利回りは4%前後)。

これら3つのグラフを見て、「ああ、やっぱりあの国は対外債務が辛いね」「何でこの国がこんなにも……」とさまざまな感想を持っただろう。経済ニュースをはじめ、世界各地からの報道に際し、対外債務や国債のことが語られたら、これらのグラフを思い出すことができれば、より深い理解を得られるに違いない。



さて。

日本が無い。

……と驚く人もいるだろう。今件はあくまでも「国(債)の対外債務」であり、日本はワースト20にかすりもしない。なぜなら、日本の発行する国債の大部分は国内で消費されているからだ。【日本銀行の資金循環データ】から最新のデータである[主要部門・取引項目残高表(2009年6月末、9月末速報)]を抽出し、それを元に2009年6月末時点での日本国国債の保有者別内訳(確定・合計675.8兆円)をグラフ化したのが次の図。

↑ 日本国国債保有者別内訳(2009年6月末確定・合計675.8兆円)
↑ 日本国国債保有者別内訳(2009年6月末確定・合計675.8兆円)

上記の例で表現すれば「日本家には675万円の借金(負債)があります。しかしお隣さんから借りているのは41万円だけです(675.8×6.10%)。後は同居しているおじいちゃんや、自宅から職場に通っている息子たちから借りています」ということになる。そして日本家全体の借金(負債)は、おじいちゃんや息子たちの立場から見れば、それぞれの債権(資産)なのです」ということになる。個人事業主なら、社長本人の資産を会社に貸し付けているようなもの。つまり日本政府が発行した国債のうち93.90%は、国内の民間・地方自治体などの資産でもあるわけだ(付け加えるならば、6.10%の外国人購入者の国債はすべて日本円建て)。

国債の発行額だけを比較して、「日本の財政はアルゼンチンやアイスランドのようにデフォルト直前だ」と考えるのは筋が少々異なる気がしてならないのだが、いかがだろうか。日本国国債の利回りが(政府の負債が増加しても)なぜ低いままで推移しているのか、銀行がなぜ日本国国債を買っているのか(答え:金余りで運用先が無いため)あたりと合わせて、考え直して欲しい。


■関連記事:
【日本の対外債務は? 世界の対外債務国ワースト20(追補編)】



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