消費者金融の動向
2009/12/24 07:29
先に【今年倒産した上場企業(2009年6月30日版)】などでも触れたが、今年2月のSFCG破たんが代表しているように、サラ金(消費者金融)業界の動向は非常に厳しい状態にある。理由としては【専業主婦(夫)の消費者金融からの借金、38.0%は「相手にナイショ」】でも解説している通り、改正貸金業法の施行によるもの。また、俗に言う「過払金返還請求」の負担もきわめて大きい。先日帝国データバンクから【消費者金融・事業者金融 主要90社の経営実態調査(PDF)】が公開されたが、その内容は同業界の厳しさを改めて認識させるものだった。今回はこの資料と金融庁のデータを元に2つほど、サラ金(消費者金融)業界の実情が分かるグラフを作成することにした。
スポンサードリンク
消費者金融業界の現状についてだが、改正貸金業法の施行第4条完全施行(2010年6月までの予定)後は、貸金業者からの借り入れにおいては原則的に「貸付金額50万円以上か、他の業者からの既存借入金額と合わせて100万円を超える場合、返済能力があることを証明する書類が必要」「総量規制により、専業主婦・主夫の借り入れは配偶者と合わせた収入の1/3まで。配偶者の同意、夫婦関係証明書類、配偶者の収入証明書の提出が必要」などの決まりが適用される。ますます借り入れ・貸し出しする条件が厳しくなり、顧客数の減少が予想される。また、一時期の勢いは無くなったものの「過払金返還請求」に対する負担も小さくない。
帝国データバンクの資料では、消費者金融・事業者金融の2008年度における営業収益の上位20社とその前年度比が掲載されているが、そのうち上位10社のものをグラフ化したのが次の図。
↑ 消費者金融・事業者金融の2008年度における営業収益上位10社と前年度比(億円・前年度比%)
一度ならずとも耳にしたことがあるような企業がずらりと並んでいるが、そのすべてが減益。しかも数%レベルでは無く、10%・20%は当たり前の世界。いかに2008年度が厳しかったかが分かる。
元資料では「過払金返還が重荷、今期も厳しい業績見通し目立つ」とし、さらに業績が悪化すると予想している。大雑把に見ると、「過払金返還」「規制強化による顧客減少」の2つの圧力が重しになっているとのこと。
元々貸金業者数は1985年以降減少傾向にあった。しかしグレーゾーン問題、そして改正貸金業法の話が具体化する2003-2004年以降、減り方は加速度的になり、最新データの2009年10月時点では1984年3月末の1/4程度でしかない。
↑ 貸金業者数の長期的な推移
上記グラフの補足をしておくと、データ取得元は【貸金業関係統計資料集の更新について(金融庁)】。最新の2009年10月以外は3月末のデータ。そして「都道府県登録」「財務局登録」の違いは、前者が「単独都道府県に営業所がある金融業者」・後者が「複数都道府県に営業所がある金融業者」となる。また、1984年から85年にかけて大きく数を増やしたのは、1984年11月に貸金業二法(貸金業の規制等に関する法律と出資法の一部改正)によるもの。ともあれ、昨今の減り方がいかに急なのか、改めて分かるグラフとなっている。
特にこの数年の減少ぶり(帝国データバンクの資料では「倒産動向 ― 件数、負債ともに過去5年で最悪」などの言葉も踊る)を見る限り、今後もこの業界の縮小傾向は避けられそうにない。ただしその減少と共に、利用者層における資金需要が同レベルで減少するかはまた別の問題。
減少がゆるやか、あるいは逆に増加するのなら(そして景気状況を見る限り、むしろ後者の可能性が高い)、行き場を失った小口の資金需要がどこに向かうのか。あまり想像したくない話ではある。
■関連記事:
【融資の総量規制で60万人が自己破産の可能性も】
スポンサードリンク