「買いたい」想いは変わらない・大学生はなぜクルマ離れをしているの?

2009/12/15 05:06

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乗用車ローンイメージ先に【年齢階層別の乗用車普及率】で年齢階層別のクルマ(乗用車、自家用自動車)の普及率を調べたところ、若年層のクルマ利用率が減少傾向にあること、その一方で中古車の利用率は増加していることが分かった。「ふところ具合が寂しいのか、新車を買うほどの価値をクルマに見いだせないのでは」という推論が出たわけだが、それを裏付ける資料を色々と探していたところ、日本自動車工業会の「乗用車市場動向調査」を見つけることができた。毎年業界の動向を探るデータや調査結果が盛り込まれているのだが、最新の【2008年版(PDF)】は特に、若年層の中でも購買意欲をかきたてて欲しい(と業界が願っている)大学生を対象にした分析が参考になるものが多かった。今回はこの中から、現大学生やかつて大学生だった人たちが大学生の時に感じた「クルマへの購入意欲」について、比較した結果を見てみることにする。



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今調査は2008年11月12日から14日にかけてインターネット経由で行われたもので、現大学生は18-24歳の大学・短大生(1000人)、以前の大学生は現在20-39歳の人が300人・現在40-59歳の人が300人。男女比は現行大学生が57対43、以前の大学生はいずれも1対1。

調査母体に対し、現在(あるいは大学生当時)クルマを買いたいか否かについて尋ね、「買いたい」「まあ買いたい」を合わせた値を算出したところ、現行大学生では69.8%に達した。以前大学生だった世代もほぼ同率を示しており、「買いたい」意向はあまり変化がないことが分かる。

↑ 世代別、クルマの購入意向(「クルマの免許を保有する年齢に達しているものの、まとまった所得がまだない「大学生」対象)
↑ 世代別、クルマの購入意向(「クルマの免許を保有する年齢に達しているものの、まとまった所得がまだない「大学生」対象)

これはあくまでも「買いたい」であり、「買う」「買った」では無い事に注意。買いたくとも手が届かない場合も多分に含んでいる。とはいえ、欲しい思惑にはほとんど変化が無い。

そこで「買いたい人」に限定し、いつ頃買いたいか・買う予定かを尋ねたところ、こちらは以前の大学生と今の大学生で明らかな違いが出た。

↑ クルマの購入予定者における、購入予定時期
↑ クルマの購入予定者における、購入予定時期

時間が経過し今の大学生になるにつれて、「学生の間に」「社会人になって早期に」「結婚したら・子供ができたら」はいずれも減少し、「社会人になってある程度貯金ができたら」が大幅に増加しているのが分かる。

他の項目は資金的余力については言及が無く、場合によっては自動車ローンを組んででもを内に秘めた選択肢となっている。その一方で「社会人になってある程度貯金ができたら」は「ローンのような無理はせず、お金に余裕ができたら」という感が強い。言い換えれば「借金をしてまで(お金でキツい思いをしてまで)クルマを欲しいとは思わない」と考える人が増えていることが分かる。これらの人は、もしお金に余裕が出来なければクルマは買わない」ことになるため、その場合は「買いたいけれど買わない」という結果に行きつくことになる。

実際、同調査別項目における一般的な社会生活上の「消費意識・行動」の調査でローンに関する項目でも、昔の大学生より今の大学生の方が、ローンに対する抵抗心は強い。

↑ 買い物でローンや借金はしたくない
↑ 買い物でローンや借金はしたくない

あくまでも自分の収入にあった「分相応なものを選びたい」という慎重な考え方が、多勢を占めているようだ。

ちなみに「買いたい」「買いたくない」と「買いたい」人の購入希望時期を全部まとめると、次のようなグラフになる。

↑ 世代別、クルマの購入意向(「クルマの免許を保有する年齢に達しているものの、まとまった所得がまだない「大学生」対象)(買いたくない人・買いたい人はその時期別)
↑ 世代別、クルマの購入意向(「クルマの免許を保有する年齢に達しているものの、まとまった所得がまだない「大学生」対象)(買いたくない人・買いたい人はその時期別)

「購入希望帯」において、慎重な態度を取る人が増えているようすが改めて分かるはずだ。



少なくとも安定した収入がまだ見込めない大学生においては、クルマの購入意欲は昔も今も変わらない様子であることが確認できた。それと共に「今調査項目においては」借金・ローンを嫌う傾向の高まりから、十分な自己資金の無いうちに高価なクルマに手を出すことに対する警戒感が強まり、結果としてクルマの購入者が減少してしまうことが推測できる。

好意的に解釈すれば「お金に対して慎重な姿勢を身につけつつある」「分相応でない買い物をしなくなった」ということになるし、視点を変えれば「ローンを組んでも払えなくなるかもしれない、お金に関するリスクの高まりを自覚している」人が増えたことともいえる。一部は表裏一体で、大義的には同意となるのだろうが、いずれにしても社会全体の(特に若年層における)風潮である「無理な買い物はしない」が、クルマ離れの一因であることは間違いないだろう。


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