個人のブロードバンド利用率の推移
2009/12/07 07:05


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元データは上記に示した通りだが、調査方法は毎年大体同じ。例えば最新の2008年版については、2009年1月に「2008年4月1日時点で全国20歳以上の世帯構成員がいる世帯」に対して行われており、6256世帯が対象となっている(人、ではないことに注意)。郵送による調査票の送付・回収、報告者自記入によるもので、インターネットや携帯電話による調査方法ではないので、今設問のような場合における偏りは無い。回答率は72.2%、世帯主階層は20代3.1%・30代13.4%・40代23.9%・50代31.7%・60歳以上27.9%。なおブロードバンド(回線)とはCATV、FTTH(光回線)、無線LAN、xDSLなどのことを指す。
まずは「自宅での」ブロードバンド利用率。これは各該当属性全体に対し、どれだけの人がブロードバンド回線を使っているかを示す。

2008年末における自宅での個人のブロードバンド利用率(人口比)
例えば調査母体のうち6-12歳が1000人いたら、45.1%の値を示しているので、451人が「自宅からインターネットをする際にブロードバンド回線を使う」と答えていることになる。残りの549人はナローバンド回線を使っているか、あるいはインターネットそのものを使っていないかのどちらかになる。
全体では4割強、10代-40代までは6割強で推移し、以後急激に減少を見せている。これは「属性全体」に対するブロードバンド利用率だから。前提としてインターネットを利用していなければブロードバンドを利用する・しない以前の問題となるので、インターネット利用率の低い高齢層は、必然的にブロードバンド利用率も低くなる。
これをデータが残っている2002年末以降について推移グラフ化したのが次の図。

自宅での個人のブロードバンド利用率推移(人口比)
以前の記事のインターネット利用率の推移のグラフと見比べて欲しいのだが、その記事で「65歳以上の層において減少・停滞傾向が見られること」とコメントした高齢層においても、ブロードバンドの利用率は上昇している。あるいはこれらの年齢層の多くは「新たにブロードバンドのインフラを整えて、はじめてのインターネットをブロードバンドでスタートしている」のかもしれない。だとすれば、他の年齢層(つまり昔からナローバンドでイン―ネットに触れていて、いまだにブロードバンド化出来ない人が少なからずいる)と比べ、「インターネット利用者内におけるブロードバンド率」は高い可能性がある。
●「インターネットを利用する人」のうち、ブロードバンドを利用する人は?
その仮説を裏付けるのが次のグラフ。これは2008年における「”自宅のパソコンを使ってインターネットを利用する人”のうち、ブロードバンドを利用する人の割合」を示したもの。全体では86.9%と9割近くだが、65-69歳でやや凹むものの、70歳以上の層では逆に増加し90%を超している。

2008年末における自宅のパソコンを使ってインターネットを利用する人のブロードバンド利用率
逆に考えれば、全体では100%-86.9%=13.1%が、インターネット利用者全体のうちナローバンドを利用している計算になる。80歳以上の場合は、インターネット利用者のうちナローバンド利用者はわずかに1.4%に過ぎない。「新たにネットをはじめるから、せっかくだからブロードバンドでスタートしようかね」と考えている高齢者が多いのか、あるいは移転先に最初からブロードバンド環境が整備されているのか。いずれにせよ、ネットをこなしている高齢者は意外に(!?)ブロードバンドの世界に浸透していることになる。
最後にグラフ化するのは、「ネット利用者のうちブロードバンド利用者が占める割合の推移」。データそのものは2002年末から存在するが、同年は60歳以上がひとまとめにされており、データの継続性に難がある。そこで現在の年代区分別で収録されている2003年末以降のものについてグラフ化を行う。

自宅のパソコンを使ってインターネットを利用する人のブロードバンド利用率推移
80歳以上のデータ、特に2006-2007年末の変移にやや異常値が見られるが、これは元々同属性の絶対人数が少ないう上にインターネット利用率自身が低く、ぶれが生じた結果の可能性がある。もう少し年を経て、これが単なるぶれによる誤差なのか、それとも何らかの実現象によるものなのかを見極める必要がある。
それを除けば、やはり高齢層中の65-69歳層の凹み・低迷が気になる以外は、すべての年齢階層で増加が確認できる。
ナローバンドからブロードバンドにインターネットの回線が高速化し、データ送信量・スピードがけた違いに増加することで、インターネットそのものの性質はまるで別物のように変わってしまった。インターネットが普及しはじめたころは、世界中にある情報を取得できるとはいえ、単なる文字列や小さな絵を閲覧できるのが精いっぱいだった。

今後さらに回線の高性能化、各端末の処理能力の向上、技術の進歩により、今の時点で「夢」「未来の技術」扱いされているものが、誰もが自由に使えるようになるだろう。その技術は若年層はもちろん、中堅・高齢層にもさまざまなチャンスを与え、夢をかなえてくれるものでありうる。提供側は彼らのリクエストに応えるべく、「インフラ」としての立場から出来得る限りハードルとリスクを低くする努力を続けねばならない。そして需要側は積極果敢にチャレンジし、自分の「したいこと」を「できること」にしていく気概を見せるべきだろう。
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