主要テレビ局銘柄の直近中間決算…(3)今や広告費の話題はスポット広告からタイム広告へ
2009/11/29 14:16
在京主要テレビ局(キー局)で上場をしている5局の2010年3月期(2009年4月-2010年3月)・2四半期(以後「中間期」)に関する各種財務データをグラフ化して色々と考えてみる企画記事パート3。ここでは昨年から今年にかけてテレビ局の業績を語る際には必ず登場した「タイム広告」と「スポット広告」の5局それぞれについて、各局の動向を探ることにする。
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「タイム広告」と「スポット広告」については詳しくは【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算…(1)「キー局」と「スポット広告」「タイム広告」】で解説しているので、そちらを参照してほしい。要は「タイム広告……番組提供」「スポット広告……番組と番組の間の埋め草広告」とイメージすればあながち間違いではない。テレビ番組の最初と最後に「この番組は、ご覧のスポンサーの提供でお送りします」との説明と共に表示される企業は、すべてその番組のタイム広告を出しているわけだ。
昨年までは各企業の広告費削減のあおりを受け、しがらみが少ない、あるいは効果がより薄いと認識された「スポット広告」がダイナミックな削減を見せていた。これがテレビ各局の減収の大きな要因だったのはこれまでに何度となく説明した通り。しかし【2010年3月期におけるキー局銘柄の第1四半期決算……(2)業績斜め読みと広告売上、利益率の変化】の後半部分で触れているが、直前の四半期からは「スポット広告よりもタイム広告の方が前年同期比における減少率が大きくなる」傾向が見え始めていた。今中間期においては、それが明らかになった形だ。
主要5局の2010年3月期・中間決算におけるタイム・スポット広告前年同期比
参考:2010年第1四半期(前四半期)におけるタイム・スポット広告前年同期比(再録)
今期では全放送局で、スポット広告以上にタイム広告の前年同期比減少率が大きくなってしまっている。これは「前年同期比」ということから、「昨年大規模にスポット広告が減らされたので、今年はそれと比較するからやや大人しめになった。だから相対的にタイム広告が大きく減ったように見える」と見る向きもあるかもしれない。しかし参考として再掲載した前四半期のデータと比べれば、「スポット広告の減少ぶりは大して変わらず、タイム広告が大きく減っている」傾向が確認できる。
これでまだ「タイム広告の売上額は小さいから、割合で減っても大した影響はないだろう」といった状況ならマシなのだが、実際にはタイム広告とスポット広告の売り上げは大体半々である。例えばフジ・メディアHDの場合は、ネット・ローカルも合わせたタイム広告で放送収入(広告収入)の過半数を占めている。
フジ・メディアHDの放送収入区分(2010年3月期・中間決算、億円)
要は放送局にとっては、スポット広告もタイム広告も、減少する割合が大きければ業績的なダメージはほぼ同程度と見てよいわけだ。
減少することは、テレビ放送を支える
各テレビ番組そのものの予算の
都合がつかなくなることを意味する
スポット広告を出してくれる企業が減ったとしても、いわゆる「フリースポット広告」契約の広告や公共広告機構の広告で埋めることで、体面・恰好はつく。しかし番組を支えてくれる広告主が現れなければ、基本的に予算が出ないのだから、番組そのものが成り立たなくなってしまう。テレビ局が自腹で制作していたのでは、(NHKや衛星放送のように放送料金を視聴者から徴収するので無い限り)いくらテレビ局全体の予算があっても追いつかない。
実は昨年の「スポット広告減少」騒ぎ以上に、タイム広告の減少は各テレビ局に大きな波紋を起こしているものと思われる。
(続く)
■一連の記事:
【主要テレビ局銘柄の直近中間決算…(1)業績概要】
【主要テレビ局銘柄の直近中間決算…(2)各社業績斜め読み】
【主要テレビ局銘柄の直近中間決算…(3)今や広告費の話題はスポット広告からタイム広告へ】
【主要テレビ局銘柄の直近中間決算…(4)放送事業で赤字を出した2社と気になること、そしてまとめ】
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