世界各国の「脱税」に対する拒絶感(2017-2020年)(最新)
2021/01/27 05:03
公的機関の運用や治安の安定、国や自治体としての社会福祉の提供など、さまざまな社会の安寧のために使われるのが税金で、その支払いは国民の義務である。ところがこの税金を何とかしてごまかし、支払うべき額を減らしたり、あるいは支払わないように画策する違法・脱法行為が後を絶たない。これを「脱税」と呼んでいるが、その行為に対する拒否感は国によって違いがあるのだろうか。世界規模で国単位の価値観を定点観測している【World Values Survey(世界価値観調査)】の公開値を基に、その実情を確認していくことにする。
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脱税行為にはおおよそ否定的、だが…
今調査「World Values Survey(世界価値観調査)」に関する概要、調査要項などは先行記事の【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度】を参照のこと。
次に示すのは脱税行為に対し、どれほど否定感を持つかを10段階で答えてもらい、国単位で平均値を算出したもの。悪くは思わないなら10、悪いことであると思うなら1とし、10段階で回答者の心境を提示してもらっている。値が低いほど「脱税は悪である」との認識が強い。理論上、全員が中間の意図を持っていれば、回答値平均は5.5となる。
↑ 脱税はよいことか(1(悪)-10(善)の選択肢での平均値)(2017-2020年)
おおよそ回答値は「よくないこと」に傾いており、脱税に関する嫌悪感の強さが表れている。もっとも、寛容的な国も少なくない。例えばフィリピンは今回抽出した諸国の中では群を抜いて脱税には寛容で、詳しいデータを確認すると「まったく問題は無い」(回答値10)の人が8.7%もおり、平均値も高い結果が出ている。
他方、日本は今回対象とした諸国の中ではもっとも脱税行為に厳しく、他国と比べて一段明らかに下がる形の値を示している。「脱税は絶対ダメ」(回答値1)の回答率が86.5%に達していることからも、この低い値が出るのが理解できよう(8割超は日本のみ)。
収賄行為はどうだろうか
「脱税」ほどではないが、金銭関連でよくない行為と認識されているのが「収賄」。設問では「職務に際して賄賂を受け取ること」とあり、受領側は公務員に限定されていない。つまり犯罪行為ではない事例もあるが、「賄賂を受け取ることで本来なされるべき判断に手心が加えられ、あるべきではない選択が行われる」も含んだ設問と考えるのが無難だろう。たとえば信頼性や安定性の上ではA社の商品を選ぶのが当然の状態で、担当者が巨額の賄賂を受け取って、品質も信頼性も安定性も劣るB社の商品を選ぶといった状況である。
↑ 職務に際して賄賂を受け取ることはよいことか(1(悪)-10(善)の選択肢での平均値)(2017-2020年)
「脱税」同様、「収賄」でもフィリピンがもっとも寛容な結果が出てしまった。まさに群を抜く形である。またロシア、ウクライナなど、「脱税」で上位にある国が、こちらでも上位陣についている。どうやら金銭関連の違法・不法行為に対する慣習や姿勢の違いが、さまざまなケースで判断の差を導いているようだ。
日本はといえば、今回抽出した国々の中ではエジプト、フィンランド、スロベニア、ドイツ、ニュージーランド、イギリスに次いで7番目の厳格さにある。「絶対ダメ」を意味する回答値1の回答率は79.3%だが、2や3の回答率がそこそこあり(それぞれ10.0%、4.7%)、これがいくぶん高い値、つまり許容派する分として数字に反映されてしまったようだ。とはいえ、全体の中では十分低い値には違いない。
今件2項目に関して日本が高い値を記したこと、すなわち「脱税や収賄に対する強い拒否反応」は極めて正しい姿勢であり、貫き通すべきものに他ならない。税金が正しい使い道をされるよう監視するのはもちろんのこと、例えば皆が守るべき納税行為を、「自分の環境は人とは違うから」といった理由などで破るのは人として正しい行為か否か、日本人として今一度考えてみるべきだろう。
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