全体の最新データでは10.2%、でも若年層は平均16.7%!…アメリカの属性別失業率をかいま見てみる
2009/11/08 07:39
先日アメリカの失業率が2009年10月時点で10.2%に悪化し、実に26年ぶりの高水準に達したという話が各所で伝えられた。失業者の増加率は減少しているが、増加そのものに歯止めがかかったわけではない。しかしこれは軍人を除く全体の値に過ぎず、【アメリカの「単純失業率」と「広義失業率」を示した地図】や【20%超えの地域も! アメリカの失業率現況を図で見てみる】にもあるように、計算の仕方・対象属性によってその失業率は大きく異なる。先日【NewYorkTimes】では「あなたのような立場の人たちの失業率は? 不景気は皆が同じように感じているわけではない(The Jobless Rate for People Like You……Not all groups have felt the recession equally.)」と題して、さまざまな属性ごとの平均失業率を掲載していた。かなりショックを受けそうな値を見受けることができたこともあり、今回紹介しておくことにする。
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The Jobless Rate for People Like You……Not all groups have felt the recession equally.
このグラフはアメリカにおける、2007年1月から2009年9月までを対象にした、それぞれの月における該当月と過去1年間の失業率の平均を示したもの。そして全体の失業率以外に、
・性別……男女、男性、女性
・年齢……全年齢、15-24歳、25-44歳、45歳以上
・学歴……全学歴、高卒未満、高卒、大卒
と4属性についてそれぞれ区分し、その区分毎の失業率推移を確認できる。グラフによく目を通すと薄い線が無数に展開されているが、それらはすべて各パターンにおける失業率の動向。カーソルを合わせるとその線が実線化され、どんなパターンなのかが吹き出しで表示される。そしてクリックをすると上記の項目が、該当する内容のものに指し変わり、詳細が映し出されるわけだ。
あくまでも2009年9月までの、そして過去1年間の平均から算出したものなので、先日発表された10.2%と比べると全体値は低い(8.6%)。しかし実際には属性により、相当大きな差が出ていることが分かる。
詳しい動向・推移はソースのグラフで確認してもらうことにして、こちらでは最新データにおける各属性をシンプルなグラフに作り直してみることにする。なおスポットライトを当てた属性以外は、基本的に「全部」を適用している。例えば人種に関するものなら、「男女全員」「すべての年齢」「全学歴」という次第。
2009年9月における過去1年間の平均失業率(人種別)
2009年9月における過去1年間の平均失業率(性別)
2009年9月における過去1年間の平均失業率(年齢階層別)
2009年9月における過去1年間の平均失業率(学歴別)
ちなみに一番高い失業率を記録しているのは「黒人・男性・15-24歳・高卒未満」の層で、直近では48.5%に達している。
学歴別は先に【勉強は大切だということが分かる失業率と収入のグラフ】で示したように、高学歴の方が失業率が低い傾向にある。厳密には最高位の博士学位になると少々失業率は上昇するが、今件ではすべて「大卒」でまとめられているため、低い値を維持したままとなっている。また日本でも指摘されている「若年層の冷遇状態」がここでも確認できる。24歳以下の失業率は、それ以上の人たちの2倍以上。年齢階層上における産業構造のリバランスが上手く作用していないことがうかがえる。
最後に、日本でも気になる事項である「学歴」「年齢階層」の2項目について、マトリクス的に算出されているデータを立体グラフにしてみた。X・Y軸の取り方(方向)が本来あるべきものと違うのだが、グラフを立体視しやすいようにあえてこの配置にしてある。
2009年9月における過去1年間の平均失業率(学歴・年齢階層別)
「学歴」「年齢階層」の2項目だけで区分しても、失業率に大きな差異が生じているのが分かる。「学歴」はある程度自己責任の部分があり仕方ないにしても、年齢は本人の力ではどうすることもできない。若年層が心境的にくすぶっている様子は容易に想像できる。
今件はあくまでもアメリカにおける、1年間の平均データ。直近の単月データではさらに上値を見せているはず。とりわけ若年層の失業率の高さが気になるが、これは何もアメリカだけに限らない話。
日本でも若年層の失業率は高く、可処分所得・金融資産の低さなども相まって、不平不満の温床となる現実がある。時間的・体験的経験を蓄積しないと得られないものはともかく、そうでないものにおいても「なんで自分たちがここまで冷遇されねばならないのか」と鬱積の一因になっていることは否定できない。「世代間のギャップ・対立云々で問題を置き換えるのはナンセンスだ」とする意見もあるが、その意見の多数は恩恵を受けた団塊世代から発せられるもの。若年層にしてみれば説得力に欠ける、と指摘されても仕方あるまい。
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