「建売が売れない! でも……」フジ住宅の短信補足資料から住宅市場の流れを垣間見てみる
2009/10/31 06:32
【フジ住宅(8860)】は2009年10月30日、2010年3月期第2四半期決算短信と共に補足資料を発表した。それを見ると、月次で報告している新設住宅戸数をはじめとした各種不動産市場の動向を、改めて確認できそうなデータが含まれているのが分かった。今回はその資料をグラフ化し、その「確認」をしてみることにする(該当資料:【フジ住宅2010年3月期第2四半期決算短信・補足資料(PDF)】)。
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資料では売上推移や見通しなどが語られているが、注目すべきは4ページめの「事業別売上高(前年同期比較)」。同社の事業別における売上実績の絶対額と、前年同期比が書かれているのだが、それをグラフ化すると色々なことが見えてくる。
フジ住宅における事業別売上高(2009年4-9月、前年同期比)
ぱっと見で分かるのは、「個人投資家向け一棟売賃貸マンション」と「土地有効活用事業」の成績の悪さ。後者は「あなたの持ってる土地に駐車場やアパートを建てて、収益のある不動産にしましょう」というもの。両方とも要は「投資家向け」「転売・投資向け」の事業ということ。不動産市場においてこれらの事業が斜陽状態にあることはご承知の通りで、その傾向がここにも表れている。
また、「戸建住宅」では「建売」(あらかじめ完成している住宅を販売するも)は軟調な一方、「自由設計住宅」(買い手が色々と体裁について注文をつけられる住宅)が非常に大きく伸びている。これは【「売りたい業者」と「買いたい個人・世帯」のミスマッチ現象!? アトラクターズ・ラボの意識調査結果を探る】でマンション部門でも触れたが、「(どのみち市場が低迷してお買い得なのだから)自分の住処は自分の想いを反映した家にしたいよね」という需要が根強く、回復傾向にあることを裏付けている。
「中古住宅」が伸びていることにも注目。「建売」が伸びず「中古」が伸びているということは、「カスタマイズが出来ない住宅なら、極力安く」という、安さに重点を置いた顧客が流れている事を意味する。これでは新設の建売住宅がますます売れなくなっても当然であろう。
一社だけだと「この流れはたまたま、フジ住宅だけではないのか」という意見もあるだろう。しかし同日【東急リバブル(8879)】から発表された2010年3月期第2四半期決算短信でも、業績に関するコメントの中で、
しかしながら実需市場では、在庫販売価格の調整により、主に一次取得者の購入意欲が回復し、契約件数が増加いたしました。
という表現が見られる。要は「他人に転売したり貸出をする投資的な不動産の売買は低迷継続」「自分で直接購入して住む実住向けの売買は回復に」ということで、上記のフジ住宅や新設住宅戸数の動向、そしてアトラクターズ・ラボの調査レポートにある傾向を裏付けるものとなっている。
「新設住宅戸数」だけを見ると、「不動産市場はまだまだ全然駄目だな。それどころかますますドツボにはまっているのでは」というイメージがわく。それは一面だけを見れば疑いようもない事実といえる。しかし実際には、回復している部門もあるのもまた事実なようだ。
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