50年にわたる学校給食費の推移(最新)
2024/10/28 02:34
運動会や文化祭、遠足のような非日常的イベントはもちろんだが、ほぼ毎日行われる学校での行事においても、子供達にとって楽しみなことは多い。その一つが「学校給食」。毎日配膳される給食はバラエティ豊かで栄養にも配慮されたもの。毎月配られる献立表を見て、その内容を想像し、胸踊る気持ちになった経験を持つ人も多いはず。一方、その学校給食を利用している子供達自身はもちろん、その保護者にも、学校給食の費用(給食費)は気になる出費の一つではある。今回はその給食費について、過去からの価格推移を見ていくことにする。
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半世紀近くで大幅な上昇を見せたが
給食費といえば上記にある通り、子供の食生活における「気にかかる負担」であるとともに、昨今では【公立学校の給食費未納状況(最新)】などで解説しているように、未払い・不払い問題が話題として持ち上がっている。その観点からも、今後何らかの形で学校給食に関して検証が必要な際、具体的な額面を認識しておいた方が理解がしやすくなる。
主要データは【50年前の商品の価格を今の価格と比較してみる】同様に、総務省統計局の【小売物価統計調査(動向編)調査結果】から取得したもの。1975年以降の値が確認できるので、それ以降、年次ベースで数字を取得できる2023年分までのもの(東京都区部小売価格)を逐次抽出していく。さらに2024年分は月次で9月分まで確認できるので、その9月分を暫定的に2024年分として取り扱う。
なお小学校の低学年に関しては2016年12月分をもって計測が終了してしまっている(総務省に確認済み)。よって今件記事では小学校低学年の値は2016年の値が最新のものとなる。
↑ 公立小中学校の給食費(東京都区部、月額、円)(2024年は直近月)
学校給食が戦後再開されたのは1946年であるとされている。しかし法律で正式に制定された(学校給食法)のは1954年。小売物価統計調査の公開値として取得できるのは、給食開始(再開)から20年あまり後をスタートとしているため、給食費の全ぼうを確認するのには、不完全な感は否めない。しかし今回取得できた範囲内で見ても、急激な変化は無く、緩やかな上昇にとどまっていたようだ。また2020年から急激な下落が生じているが、月次動向を確認すると2020年6月から額面の下落が生じているため、新型コロナウイルス流行による学校の休校などが影響していると考えられる。
さらに2023年以降では過去に類を見ないほどの下落が生じている。これはロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響で生じている世界的な物価高騰での生活苦への支援、あるいは子育て支援として、複数の区で2023年4月から給食費の無償化が実施されており、これが反映された結果。2024年4月時点で東京都23区内のすべての公立小中学校では給食費の無償化が実現しており、小売物価統計調査のデータでも月次で2024年3月における小学校1642円・中学校1446円を最後に、それ以降はゼロ円となっている。
一番古い値の1975年当時は、月額で小学校低学年では約1800円、小学校高学年で約2000円強、中学校で2300円近く。これが直近の2024年(小学校低学年は上記の通り2016年)ではそれぞれ3694円・0円・0円。2016年で更新が止まっている小学校低学年では大幅なプラスとなっているが、現状をかんがみるに、小学校高学年や中学校同様に、ゼロ円となっているとみてよいだろう。もちろん、現状における値は、消費者物価の動向以前の問題で、大健闘と解釈して問題は無い。
消費者物価指数の動向を反映させてみる
学校給食の場合、単純に額面の移り変わりだけでなく、当時の物価を考慮して考えた方がよい、とする意見もある。各家計への負担を考えると、単純な価格変動だけでは比較が難しいからだ(40年前の1000円と今の1000円とでは、家計の負担が違うのは言うまでもない)。
そこで各年の給食費に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を反映させることにした。具体的には【過去70年あまりにわたる消費者物価の推移】で取得したデータを基に、直近の2024年における消費者物価指数をベースとし、過去の各額面を修正していくことになる(いわゆるウェイトバックというもの)。
その計算の上で作成したのが次のグラフ。よい機会でもあり、最古のデータ1975年から直近の2024年に至る変化率も算出して、別途グラフにした。
↑ 公立小中学校の給食費(東京都区部、月額、2023年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2024年は直近月)
↑ 公立小中学校の給食費上昇率(東京都区部)(1975年→2024年(小学校低学年は2016年))
消費者物価指数を考慮すると給食費は1975年以降むしろ漸減、1990年前後からようやく上昇しはじめるも、その上昇幅はゆるやかであったことが分かる。さらに2023年以降における一部区での無償化政策実施の結果、むしろ1975年の水準以下となり、最終的にゼロ円となったのが実情。2016年で更新が止まった小学校低学年も、実質的に現状ではゼロ円と見てよい。
1975年からの上昇率は、小学校低学年でプラス13.4%だが、小学校高学年・中学校では−100.0%。小学校低学年も、実質的に現状では−100.0%と見てよい。給食の内容まで精査すれば、値上げの範ちゅうにすら入らない値上げ幅どころか、大幅値下げ。そして無償化による大幅下落までですら、給食費がいかに「物価の優等生」だったのか、うかがいしれよう。
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