2009年度第一次補正予算の「ムダ」判定された項目を表組化してみる……(3)耐震・太陽光発電・子育て
2009/10/24 18:05
(2)の記事では、「ムダ使い」判定された事業のうち、「執行停止・返納見込額」が50億円以上と比較的額の大きな一覧を掲載した。続いて今記事では、一覧を眺めているうちに気になったいくつかのキーワードに該当する項目をリストアップする。今回の「ムダ使い」判定が、どのような意思の元に行われたかが、ある程度すけて見えるかもしれない。
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●耐震対策
まず最初に気になったのは、「耐震対策」の事業への「ムダ使い」判定が多い事。
ムダ使い判定された「耐震対策」事業一覧
確かに経済・保険関連と比べれば緊急性は低いかもしれない。しかし災害対策は総じて「保険」のようなもの。さらに建築業界への仕事創成の意味合いもあったのかもしれない。……まぁ、地震が起きなければ良いのだけれど。もし何か起きたら、このリストを見直すことをお勧めしておこう。
●太陽光(発電)
続いて太陽光発電関連の事業。これも「ムダ使い」判定が目に留まる。
ムダ使い判定された「太陽光発電」事業一覧
「事業」といっても設置そのものや設置支援が多く、研究開発及びその促進はさほどでもない。【麻生首相、新「三種の神器」を提唱】にもあるように、麻生前内閣では「太陽電池(太陽光発電)」「電気自動車」「省エネ家電」の普及を積極的に推し進めていた。これは将来の事業展望として有効なことだけでなく、二酸化炭素削減にもかなうものであるという理由によるもの(政府が積極的に購入を促進することで、市場を活性化する狙いもある)。さらにそれにより「二酸化炭素排出権」を、大枚をはたいて買う必要を減らす効力も期待できる。内需拡大・将来性のある産業育成・ムダな出費を間接的に省くという仕組みだったわけだ。
それらの多くが「ムダ使い」判定されたということは、現内閣は太陽光発電については後ろ向きであると判断されても仕方が無い。
●「子育て」
最後に「子育て」関連。昨今話題に登っている(【「相対的貧困率」について色々と考えてみる】でも触れた)「子供手当」にも絡んでくる、比較的重要な事業なのだが。
ムダ使い判定された「子育て」事業一覧
【各種報道】を見れば分かるが、この「ムダ使い」判定で現場には混乱が広がっているのが分かる。要は現内閣は「自分らが決めたものではないからムダだ」ということなのだろう。
本文中の端々で触れているが、今回の「ムダ使い」判定された事業について、「なぜそれがムダなのか」、その事由がはっきりしないのがあまりにも多い(というより元からその説明がなされていない)。まさに「ありがたいことにこれらの補正予算が無駄だということは、君たち現内閣が保証してくれるというわけだ。 よろしい、ならば私も問おう。君たちの正しさは一体どこの誰が保証してくれるのだね?」ということだ。よもや全権白紙委任状を手にしているという、有らぬ誤解をしているわけでもあるまいて。
さらに気になるのは、これら「ムダ使い」判定された事業が、今後「ムダ」の烙印を押されてしまう可能性があること。あるいはすでに押されているのかもしれない。今回、最初にリスト化した全一覧を見れば分かるように、中長期的な戦略事項・技術開発・内需拡大の観点で考えれば「なぜこれが」という項目が多い。これらが「ムダ」扱いされ続けるとなれば、関係者の想いはいかなるものだろうか。
そして喜劇的なのは、これらすべての「ムダ使い」判定事業の「執行停止・返納見込額」がすべて思惑どおりに行われたとして、いわゆる「節約できる」金額は約2.9兆円でしかないこと。それに対し【昨今の報道によれば】来年1月から始められであろう通常国会に提出する予定の第二次補正予算では、10兆円規模を想定しているとの閣僚の話が伝えられている。これでは何をもってして「ムダ使い」なのか、ますます分からない。一番ムダ使いをしているのは、補正予算の執行停止をすることによる、取り返しのつかない「時間」ではないのだろうか。
ある意味それは、喜劇的では無く、悲劇的なのかもしれないが。
■一連の記事:
【2009年度第一次補正予算の「ムダ」判定された項目を表組化してみる……(1)一覧】
【2009年度第一次補正予算の「ムダ」判定された項目を表組化してみる……(2)返還金額50億円超の事業】
【2009年度第一次補正予算の「ムダ」判定された項目を表組化してみる……(3)耐震・太陽光発電・子育て】
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