過去70年あまりにわたる主要たばこの価格推移(最新)
2023/06/28 02:42
月日の流れとともに物価も変動し、多様な商品の価格も変化を遂げていく。その価格動向をかいまみることで、生活の移り変わりや商品の特性を推し量ることができる。今回は各種商品の価格変移の中から、タスポ導入やたばこ税引上げに伴う価格のアップ、さらには主要販売店だったコンビニにおける立ち位置の変化、消費税率改定やたばこ税改定に伴う価格改定など、さまざまな動きを見せる「たばこ」の価格推移について見ていくことにする。
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漸次値上げされるたばこ価格
日本ではたばこの販売はJT(旧専売公社)の寡占的な事業で、1985年までは専売制だった。現在でも日本国内においては唯一、たばこ製造を許可され、販売している(JT以外の企業では海外からの輸入たばこを販売している)。また地域による価格変動もない。データ取得方法などは【50年前の商品の価格を今の価格と比較してみる】同様の手法を用いており、取得元は総務省統計局における【小売物価統計調査(動向編)調査結果】。同調査では1950年以降ホープ・ピース・しんせい・ゴールデンバット、そして1960年に発売されたハイライトの計5種類について価格の追跡調査が行われていたため、計測期間における該当銘柄の価格が取得でき「ていた」。
その値を基に作成したのが次のグラフ。棒グラフでは全銘柄が揃ったのは1961年分からなので、古い値は1961年分としている。
↑ たばこ価格(円)(2009年まで)
↑ 1961年と2009年時点における監視対象銘柄の価格(円)
継続監視対象の5品目ではホープとピースが一番価格上昇率が低いが、それでも皆3倍から4倍程度に値を上げていることが分かる。また、1980年代後半から1990年代後半までの間はたばこ価格にほとんど変動がなかったこと、その時期以外はいずれの銘柄も一定期間毎に値上げを繰り返しているのが確認できる。ピースの初期をのぞき、価格が下がったことはない。
唯一長期監視対象として残った銘柄は
さて、上記グラフはいずれも2009年までのもの。記事執筆時点で2022年(年次)、あるいは2023年4月(月次)までのデータを取得できるはずであるのに、なぜわざわざ古い値を最新値としたグラフを作成したのか、首を傾げる人も多いだろう。実は小売物価統計調査では紙巻きたばこに関する監視対象銘柄を、2010年から大幅に切り替えてしまっている。喫煙者の消費性向に従った判断によるものだが、これにより継続データを取得できるのはピースだけとなってしまった。
さらに2012年分からはたばこに関して銘柄の統合が行われ、特定銘柄に関する調査はなくなり、輸入品と国産品それぞれに指定銘柄(複数、非公開)の平均値が調査・公開されることとなった(総務省に確認済み)。
他方2010年以降では【たばこ税の推移】や【たばこ販売本数販売動向】で解説している通り、2010年10月にたばこ税の引き上げ=たばこ販売価格のアップ、2014年4月からの消費税率改定を理由として一部銘柄で販売価格引き上げが実施されている。その後も漸次たばこ税の引き上げや消費税率改定、さらにはそれらの税制上の都合とは無関係に一部銘柄で販売価格引き上げが実施されている。
そこでピースについてはJTから直接価格を抽出して長期価格変動を精査、残り4銘柄も含めた「現在」監視対象の銘柄に関しては引き上げ前、そして価格変動時における実情を反映したグラフを作成する。
↑ たばこ価格(ピース、円)(2022年は直近月)
↑ 監視対象銘柄の価格(いずれかの銘柄の価格変更タイミング別、円)
60年の間にハイライトは7.5倍にまで上昇している。消費者物価指数を加味すれば倍率はかなり下がるが(消費者物価指数は1961年から2023年の間に約5.6倍に上昇している)、それでもなおたばこの価格が上昇していることに変わりはない。
なおゴールデンバットが2019年10月に大きく値上げをしているのは、同銘柄へ適用されていた特例税率が2019年10月に廃止となり、たばこ税率が引き上げとなることから、その相当額を転嫁したたため。また同銘柄は2019年10月以降は在庫分を売り切って終売となっている。
喫煙率の推移は【年齢階層別成人喫煙率】にも掲載されている通り、データが存在する1965年以降男性は一律に減少、女性は若年層に若干上昇・中年層以降は減少の傾向が見られる。銘柄の好き嫌いもあるので断定はできないものの、昔と比べて今は、女性若年層における「可処分所得中のたばこへの出費割合が増加している」のではないかとの推測もできる。
たばこの販売価格引き上げは漸次論議の対象として持ち上がっている。そう遠からずのうちに再び価格の変化が生じる可能性はある。それが現実のものとなれば、グラフに変化が見られることになるだろう。
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