更新料、もしも取れなくなったなら「家賃を上げて補てんするしか」!?
2009/10/20 04:49
住宅・不動産情報ポータルサイトのHOME'Sは2009年10月8日、同年8月27日の大阪高等裁判所の判決(ある訴訟案件について更新料の一部期間分を消費者契約法第10条に違反するとして無効とした)に関する不動産会社のアンケート結果を発表した。それによると調査母体の不動産会社のうち現在更新料を賃貸契約に含んでいる会社においては、今後賃貸借契約において更新料を契約内容に加えられなくなった場合、「月額の賃料を上げる」と回答したところが半数近くに達していることが分かった。特に他の値上げなどで補てんはしないと回答した会社は1/4ほどでしかなく、仮に「更新料は無し」という事態になったとしても、借り手側の負担に大きな変化は無いことが予想される(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2009年9月8日から15日にかけて、HOME'S内において(インターネット経由で)同サイト会員の「不動産会社に対して」行われたもので、有効回答数は1796件。地域別・規模別区分などは非公開。
特殊な事例ともいえる条件下での大阪高裁の「更新料無効判決」の詳細は【「更新料無効」高裁判決、不動産会社は4割「妥当」・3割が「妥当でない」】で記した通り。半ばマスコミのミスリード的な報道で「更新料無効判決」の言葉のみがちまたに広まっている感があり、不動産会社業界でも動揺が広がっている。では仮に、今後賃貸借契約で「更新料」が契約内容として明記できなくなった場合、現在更新料を契約に盛り込んでいる1183社の不動産会社側はどのように対応するだろうか。調査結果によると、約半数の会社は「月額賃料で補てんする」と回答している。
今後更新料を取れなくなった場合の補填方法(複数回答)
今判決が報じられた際、少なからぬところから「更新料が無くなったらその分家賃をかさ上げされるから、結局同じだよね」という意見を耳にすることがあった。今回の調査結果を見る限りでは、その意見通りの結果になりそうではある。
また、「更新料は元々更新事務手続きの手数料のようなもの」と考えている不動産会社も多く、「更新料そのものが徴収できなくなったら、本来の事務手数料を引き上げればいいや」と合理的な考えをするところも多い。どちらにしても、借り手側の金銭的負担が軽減されるわけではない。
最後に、先に【更新料、常識かなと思ったら、実は無いのが常識だったの?】で挙げた、「更新料が東京と京都で特化的なシステムとなっている」件につき、そのヒントとなりそうな意見がリリース文末の不動産会社の声に寄せられていたので、それを引用しておく。
更新時に退去をすれば、更新料は支払わなくて済む。その分、学生などなら賃料の負担を減らせることになる。仮に「更新料はダメ」ということになれば、今回の調査結果にあるように、その分を賃料に上乗せしなければならなくなる。
今高裁判決が半ば「特殊事例」であり、普遍的な事例では無いと判断した方が妥当である件につき、メディアはもう少し誠意をもって報じるべきだろう。それと共に「更新料」のありかた自身についても、真剣に、アジテーションとならないよう、歴史的・地域的・借り手と貸し手の現状面を考慮した上で、論議されるべきではないだろうか。
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