「不動産会社と更新料」その関係は「昔からの商習慣だから」!?
2009/10/20 04:37
2009年10月8日、住宅・不動産情報ポータルサイトの大手HOME'Sは、同年8月27日に下された大阪高等裁判所判決(ある訴訟案件において、更新料の一部期間分を「消費者契約法第10条」に違反するとし、無効とした)に対する不動産会社へ行ったアンケート結果を発表した。その調査結果によれば、調査対象母集団を構成する不動産会社では、そのうち過半数が「更新料の徴収は昔からの商習慣だから」と考えていることが分かった。これについてリリースでは「明確な判断基準が業界内でも存在していない現状がうかがえる」と分析している(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2009年9月8日から15日に渡り、ウェブサイトのHOME'S内にて(インターネット経由で)、同サイト会員の「不動産会社」に対して行われたもので、有効回答数は1796件。地域別・規模別区分などは非公開。賃貸住宅を借りる側ではないことに注意。
特殊な事例ともいえる条件下での大阪高裁の「更新料無効判決」の詳細は【「更新料無効」高裁判決、不動産会社は4割「妥当」・3割が「妥当でない」】で記した通り。「更新料無効判決」の言葉のみがちまたに広まっている感があり、不動産会社業界でも動揺が広がっている。では賃貸借契約における「更新料」について、不動産会社側はどのような認識を持っているのだろうか。調査結果によると、過半数の会社は「昔だからの商慣習だから」と答えており、明確な判断基準・設定の裏付けが存在していないことが分かる。
更新料に対する考え方(複数回答)
オーナー(賃貸物件の持ち主)の収益のためが4割、不動産会社自身の収益のためが3割近くに達しており、それぞれ「身内の利益のため」という思惑も見えてくる。一方で更新時の事務手数料という回答も36.1%・約3社に1社の割合を占めている。この場合「更新手続き手数料は別途取らない(取ったとしたら二重取りになる)」はずではあるが、今データからはその区分は分からない。もっとも「事務手数料」と認識しているのなら、最初から「更新料」ではなく「更新時事務手続き手数料」と銘打って徴収すれば問題ないはずである。
他方、「給与が低いからボーナスで補完する慣習が出来ている」という、どこかで聞いたような慣習と似た「月額の賃料を抑えるため」によるところは13.8%と意外に少ない。月額家賃を下げて不足分を更新料で補うことにより、「見た目の家賃を下げられるため客の目を引きやすい」「契約更新時に退去する動機づけになるので回転率が高くなる」などのメリットも想定できるため、もう少し多くの会社が考えているかと思われたのだが。
「賃貸マンション更新料問題を考える会」が提示している声明文によると、更新料は40年以上の歴史があるという。逆に考えれば、少なくとも戦前にはそのような慣習は無かったことになる(【日本借地借家人連合】によれば、戦後の地価高騰や住宅難などを起因として広まったとのこと)。先の判決の妥当性や、現在支払い済みの更新料に関する問題はさておくとしても、今回の高裁判決は、賃貸住宅の更新料そのものについて考え直す時期に来ていることを教えてくれたのかもしれない。
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