「更新料無効」高裁判決、不動産会社は4割「妥当」・3割が「妥当でない」
2009/10/19 06:59
住宅・不動産情報ポータルサイトのHOME'Sは2009年10月8日、同年8月27日の大阪高等裁判所の判決(ある訴訟案件について更新料の一部期間分を消費者契約法第10条に違反するとして無効とした)に関する不動産会社のアンケート結果を発表した。それによると、今判決について、「判決は妥当である」とする業界サイドの反応が4割に達していたのに対し、「妥当ではない」とする意見も3割を超えており、意見がほぼ二分されている状況であることが分かった。また、2割近くが「どちらともいえない」と意見留保状態にあり、業界内における混乱ぶりが見て取れる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は2009年9月8日から15日にかけて、HOME'S内において(インターネット経由で)同サイト会員の「不動産会社に対して」行われたもので、有効回答数は1796件。地域別・規模別区分などは非公開。
該当の大阪高裁判決趣旨は次の通り(元リリース抜粋、一部修正・追加)
被控訴人(貸主)は、控訴人(借主)に対し、45万5000円及び利子相当分の損害金を支払う。
【事実関係】
借主は京都市の共同住宅を賃貸するにあたり、平成12年8月に月額賃料4万5000円の1年契約を締結し、平成18年11月に退去するまでの6年間に渡って計5回、都度10万円の更新料を支払っていた。また、入居時に敷金として10万円、礼金として6万円を別途支払っていた。
【高裁判断】
1.消費者契約法施行(平成13年4月1日施行)前に締結された賃貸借契約に基づいて支払われた更新料10万円は、公序良俗にも違反しないので、返還する必要はない。
2.その後の更新契約の更新料支払い約束は、消費者契約法(第10条※)に違反し、無効であるため、貸主は元賃借人に対し、その約束に基づいて支払われた更新料40万円を返還する義務がある。加えて返還されていない敷金10万円から未払い家賃4万5千円を差し引いた5万5千円の返還も認められる。
※消費者契約法第10条:
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項※※に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
※※民法第一条第二項
「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」(注:いわゆる「信義則」。現行法の規定では法の本来あるべき「正義」を実現できない場合に用いられることが多い)
やや面倒くさい解釈になるが、「消費者契約法が施行される前は問題無し」「施行後の分は、消費者契約法という法律もできたことだし、一般常識的に見て消費者側が一方的に損してるよね、だから無効」ということになる。
これについて、今調査母体の不動産会社においては、意見が真っ二つに分かれている。
大阪高裁判決に対する反応(不動産会社サイド)
条件無しで妥当・今件はイレギュラーだけど妥当をあわせた、妥当派は44.3%。一方で、妥当ではないとする反対派は33.5%。やや妥当派が多いようだが、「今件はイレギュラーに過ぎない」という判断をする割合が3割を超えていることを考えると、実質的にはほぼ均衡していると見ても良い。
上記文面をもう一度見返してみると分かるのだが、訴訟案件は「1年更新」「更新料は月額家賃の2倍以上の10万円。これを毎年」という特殊事例(一般居住物件としては更新料が高すぎるという意味で)に近いものであることがわかる。回答の中で「妥当だが(それは案件がイレギュラー的な高さだったからであり、判決は)イレギュラー」という回答が3割を超えているのも理解できよう。
今回の発表リリースの他データを見るに、業界側では「更新料は無効とする判決が出た」という話だけが一人歩きし、「どんな場合にでも無効になる」という考えが広まることを懸念しているむきがある。もしそのように(「更新料なんて全部無効だ」と裁判所が判断を下した)思っている人がいたら、判決文をよく読み返しておいて欲しい。「一般居住物件で、家賃の2倍以上の更新料を毎年請求される事例において『信義則に反する』」と判断されたまでの話でしかないのだから。
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