できることからやってみよう……期限切れ間近の食品を買い、財布も心も豊かに
2009/10/17 18:31
隔週刊誌「イブニング」(講談社)で連載中の『もやしもん』(石川雅之)。「菌」が見えるという特殊能力(!?)を持つ農大生が主人公の、農業や「菌」を中心にお話が展開される漫画で、お気に入りの作品の一つ。元々この作家の絵が好みだったことに加え、個人的にも関心をそそる話が多く取り上げられるため、最近では単行本の発売が待ち切れず、連載誌まで買い求めている。最新号の10月9日売り号では前回掲載分に続き「食料自給率」について語られていたのだが、これまた興味深い話で、色々と考えさせられてしまうところがあった。今回はそれらについて触れながら、「自分なりにできること」を覚え書きしておこうと思う。
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掲載号では「そもそも『食料自給率40%は低いから上げないと駄目』ってどうして?」という謎かけにはじまり、「40%」に秘められた様々な数字のからくりや、いわゆる「豆知識」の数々が登場人物らの語りで伝えられている。例えば「卵の黄身が黄色いのは餌がトウモロコシだから」という話。本文ではそこまで解説されていないが、卵黄の色はカロチノイド色素によるものでニワトリの飼料と関係が深い。10年以上前の話になるが、京都府でアンケートをとったところ、「黄身の色で栄養成分に差がある」と思っている人は58%を占めていたという話もある(【京都府:たまごは黄身の色の濃いほうが栄養的に優れている?】、おいしい自然卵はいかが?)。
その中で、主要登場人物の一人である長谷川遥嬢が延々と語る中で、気になったセリフがこちら。
「必要なだけ食べる」「残さないで食べる」「捨てないよう食べる」
たったそれだけで、無駄が確実になくなるの。
でもこれで食料自給率が上昇する事は1%もないわ。消費の問題だから。
でもこっちの方が、より具体的で身近じゃない?
長谷川遥嬢、語る
前後の話を読まないと分かりにくい、理解しにくいかもしれないが、なるほどと思わせるところがあるのも事実(もっとも本編の内容そのものは次回掲載号の展開次第で、恐らくは樹教授の語りで、話の主旨がもう少し軌道修正させられる可能性は多分にあるが)。
●できることからやってみるか
当サイトでエコロジーや環境問題などの話を記事にする際、よく使う表現が「エコは財布にも優しい」「財布に優しいエコでないと普及しない」という話。エコロジー・地球環境保全は大切な問題だが、一人ひとりのレベルに落とすと理解しにくいのも事実。だがそこに「それをやれば自分のお金も節約できる」という要素を付加すれば、あっという間に具体的で直接的な話になる。大義名分と実の利の双方を得られるのだから、これほどすばらしいことは無い。
ファストフードの「一定期間以上経過した物の廃棄」などは、個人ベースではどうにもならない。しかし個人でも「捨てられてしまう食材」を救い、自分の腹に収めることで、無駄を省くことができる。それが「賞味期限」「消費期限」切れ間近の食材の存在。コンビニやスーパーなどで見かける、半額だの何十円引きシールが貼られた、アレだ。
某100円ショップでの風景。賞味期限間近なものには「●×円引き」のシールが貼られる。一部コンビニで、弁当は値引きできない件で色々と問題が起きていることを思い起こさせる
某スーパーでの風景。最近は値引き後の価格まで最初からラベル貼りされている場合も。
店によっては専用のコーナーにまとめられ、「賞味期限間近ですのでお早めにお食べください」との注意書きが施されている場合もある。こういった食品は「期限を過ぎると(基本的に※)廃棄処分にされてしまう」ので、そのロスを考えると、原価割れでも売り払ってしまった方が良い、という判断による値下げ。それらを「捨てられてしまう前に」買ってしまおうというのが今件の主旨。
※基本的に:賞味期限切れの場合、スーパーなどでは回収されて「食材」として調理場で再調理され、惣菜の材料に使われる場合がある。
買い手からすれば安く食材の調達ができるし、売り手も「捨てるよりは遥かにマシ」だし、何より「食品を捨ててしまう」という無駄を少しでも減らせる。お目当ての食材がない場合は、ごく普通に豊富に並べられている通常価格の食材を買い求めれば良い。
そして「期限切れ間近の食材」を買った場合、そこから何が料理できるかを考える。昔の買い物風景でよく描写される「今日はジャガイモと人参が安かったから、芋の煮付けかカレーにしましょう」というのと同じ。昔と違い、今では【クックパッド(2193)】社運営のレシピサイト【クックパッド】をはじめ数々のレシピポータルサイトがあるし、【検索サイトを使いこなすワザ五か条】でも紹介した「レシピ検索技」(食材名と「レシピ」のキーワードで検索を行う)を使っても良い。環境は遥かに恵まれている。
もちろん「必要なだけ」「残さず食べる」「捨てないよう食べる」の大原則を忘れてはならない。買ってきて冷蔵庫にぶち込んでオシマイでは意味がない。あくまでも「自分(自世帯)で消費できる分だけ買う」、そして「期限内に食べる」。これが前提。
●「消費期限」と「賞味期限」の違いに気をつける
注意すべきは「賞味期限」と「消費期限」の違い。【「消費期限」と「賞味期限」の違いとは?】や【「まだまだ食べられるのだ」バカボン一家と一緒に消費・賞味期限を学ぼう】で解説しているが、やや大雑把に説明すると「”消費”はその時間までに食べないと(消費しないと)アウト、”賞味”はその時間を過ぎると味の保証(賞味)が無くなるだけ」。
賞味期限と消費期限
いくら「お値打ちだから」といったところで消費期限を過ぎたものに手をつけることは、あまりお勧めできない。また、賞味期限についても「未開封」「指定された条件で保存」していることが前提であることに注意が必要。一度封を切って外気に触れてしまうと、期限切れの前でも品質が劣化してしまう可能性は高い。ほとんどの食品で「開封後はお早めにお召し上がり下さい」とあるのはこのため。
結果として、「必要なだけ」「残さず食べる」「捨てないよう食べる」の大原則とあわせて考えると「消費期限間近なものはその日のうちに食べる」「賞味期限間近なものはそこまで神経質になることは無いが、一度開封したら最優先で食べる」という自己ルールが作れるはずだ。
「賞味期限間近」を広義で考えると、【デパート不調のもう一つの理由・アウトレットモールの魅力を探る】で解説している「アウトレットモール」の利用に近いモノがあるかもしれない。いわばスーパーの食品だなの端にこっそりと設けられた、あるいは単品で他の食材・食品と一緒に並べられている「食材のアウトレットモール」を積極活用しよう、ということだけの話。アウトレットモールで買った衣服は腐ること・傷むことが無いが、食材は傷む・食べられなくなってしまうので、早めに料理し、口にすることが必要。この違いでしかない。
「なんとなく恥ずかしい」「貧乏くさい」という意見もあるだろう。しかし「お財布の中身に優しい」に加え「捨てられてしまうかもしれないものを自分が救っている。自分は無駄を無くしているんだ」「つまりはエコな活動なんだ」「むしろこれが常識」と考えれば、羞恥心などどこかに吹き飛んでしまう。それこそ記事タイトルにあるように「財布も心も豊かに」なれる。
繰り返しになるが「消費期限のものには注意」「買ったものは残さず食べる」を忘れずに。それさえ注意すれば、誰にでも、きっと明日からでも実践できるに違いない。
(C)石川雅之 2009
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